FPによる知って得する!くらしとお金の話

第2回

知っておきたい「軽減税率」のこと

コープ共済について

2019年10月

夏がすぎた後の次のお楽しみは秋の行楽シーズンです。山に川に、遊園地、果物狩り、ハイキングと楽しみなことがたくさんありますよね。味覚の秋でもありますから、○○狩りのような食のレジャーを楽しむ人も多いことでしょう。

さて、この秋10月から消費税が上がりました。8%から10%へ、2%あがることになり、支出が増えることが心配される一方で、「軽減税率」という消費税率が据え置かれる制度も実施され、実際に家計における影響がどの程度あるのかがわかりにくくなっているようです。

この軽減税率は、家計への影響をできるだけ少なくするための生活防衛策として取り入れられているのですが、なかなかわかりにくいという声が上がっています。

対象になるものは、飲食料品と定期購読の新聞のみ。ただ、これらに該当するものであっても全てが対象というわけではありません。対象になるかならないか、見分け方を知っておきましょう。

まず、新聞ですが、週2回以上発行されている新聞で定期購読の契約があることが必要です。ですから、コンビニなどで購入するものは、対象外です。電子新聞も対象外です。ここは比較的わかりやすい部分だと思います。

わかりにくいのは飲食料品です。飲食料品は、「酒類・外食等を除く飲食料品」が軽減税率制度の対象とされています。

酒類は「酒類」に分類されているかどうかで見分けられます。酒税法では調理に使う「みりん」も酒類に含んでいますので、純粋なみりんは対象外。ただし、「みりん風味調味料」は酒類に含まれないので、軽減税率制度の対象となります。

外食もわかりにくいものです。お店で食べる純粋な外食のほか、ケータリング、出前(デリバリー)、テイクアウト、イートインなど、外食に近い形で食事ができるサービスがあります。これらが外食に分類されるのか、されないのかが、見分けにくいのです。

どちらに分類されるかは、「役務の提供」を受けるものか「単なる譲渡」となるものかにより判断できます。つまり、食事をするためのテーブル、椅子、カウンターなどを利用するものは役務が提供されていることとなり、10%となります。軽減税率の対象になるのは「単なる譲渡」の場合。お店で食べず、テイクアウトをする、出前(デリバリー)を注文してお店の味を楽しむことは、単なる譲渡とされるのです。

さあ、ここまで聞くと疑問になるのは、遊園地や公園などの売店で購入したものの税率はどうなるのだろう、ということです。この売店が準備するテーブルや椅子等を利用して食事をするなら10%。テイクアウトして売店とは関係のないベンチで食べるのであれば8%となります。食べ歩きをする場合も8%です。

移動販売車での食品の販売もよく見受けます。その場合、飲食設備を準備していないことがほとんどですから、軽減税率の対象となり8%となります。ベンチがそばにあっても、誰でも座れる状況であれば、飲食設備と判断されません。

では、○○狩りに行った場合はどうでしょうか。例えば果物狩りで収穫した果物を食べる時の入園料は、食事提供サービスが含まれているという解釈をされ軽減税率の対象ではありません。果物狩りに来て、果樹園内で果物を食べることを前提にしているからです。ですが、別料金で果物を購入して持ち帰る場合は、8%のままです。これは、潮干狩りや釣り堀などでも同じ考え方で税率が分けられます。

行楽の場面だけではなく、軽減税率が適応されるかどうかの判断に迷いやすいのは、医薬品、医薬部外品と健康食品にも起こりやすいでしょう。医薬部外品のドリンク剤は10%ですが効果がありそうなエナジードリンクは飲食料品の扱いなので8%です。似たように感じるものでも、何に分類されているか、どのような表示になっているかで税率が異なるので、これからは商品の表示を確認することが増えそうです。

1円でも大切にしたいので、軽減税率が適応されているものかどうか、気になるところではありますが、今回の消費増税の家計への影響、そんなに深刻なものでしょうか。

私たちの家計の支出の中には、消費税が課税されないものがいくつかあります。家賃や学費、生命保険料など、これらを合わせると、1か月の支出の中の約1/3ほどは消費税のかからない支出です。残りの約2/3に消費税がかかるのです。

具体的にどのくらい負担が増えるのかというと、一か月の生活費が30万円の人の場合、2/3の20万円に対し消費税が2%増えることになります。金額にして4000円です。しかも、軽減税率で8%に据え置かれる支出もありますし、今回は触れていませんがキャッシュレス決済によるポイント還元も期間限定で行われます。実際増える負担は3000円程度か、それ以下になるかもしれません。

その金額であれば、軽減税率を気にするよりも、支出の見直しでカバーできる範囲だと思えます。お金を大切にする、税率を気にすることも大切ですが、気にしすぎて疲れてしまってはいけません。基本は知っておくべきですが、ある程度は仕方がないと受け止めることも必要です。

軽減税率制度に関するQ&A(パターンごとの解釈がわかります)[PDF:1.3MB]

〈出典:令和元年6月 国税庁
横山光昭
家計再生コンサルタント、株式会社マイエフピー代表。お金の使い方そのものを改善する独自の家計再生プログラムで、家計の確実な再生をめざし、個別の相談・指導に高い評価を受けている。これまでの相談件数は23,000件を突破。書籍・雑誌への執筆、講演も多数。著書は60万部を超える『はじめての人のための3000円投資生活』や『年収200万円からの貯金生活宣言』を代表作とし、著作は累計330万部となる。講演先として、コープ共済連(くらしの見直し講演会)がある。

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