知っておきたい!健康と医療 今月のテーマ『睡眠時無呼吸症候群』

大きないびきとともに、睡眠時に呼吸が何度も止まる睡眠時無呼吸症候群は、放置しておくと熟睡できずに疲れがたまり、運転中や会議中に居眠りをしたり、高血圧や虚血性心疾患などの合併症を引き起こしたりする恐い病気です。日本では約300万人いるとも言われていますが、いびきで病院に行くのは恥ずかしいなどの理由から治療を受けている人はほんの一部のようです。適切な治療を受けることで日中の仕事の効率が上がり、合併症のリスクを減らすことができます。

睡眠時無呼吸症候群とは

一晩(7時間)の間に10秒以上の無呼吸が30回以上起こる、または睡眠1時間あたりに5回以上の無呼吸が起こる場合に「睡眠時無呼吸症候群」と診断されます。家庭で睡眠時無呼吸症候群の疑いがあるかどうかは、

  1. 1大きないびきをかいていないか
  2. 2いびきをかいていたと思うと、呼吸が急に止まっていることはないか
  3. 3昼間に異常な眠気を感じることはないか
  4. 4睡眠中に頻繁に体を動かし、寝苦しそうにしていることはないか

この4点をチェックし、思い当たる場合は耳鼻科か呼吸器科を受診しましょう。睡眠時無呼吸症候群を専門に診ている医療機関もあります。

なりやすい人

太っている人 呼吸の時に空気が通る上気道が塞がれるために起こりやすくなります。
首が太い人
顎が小さい人
舌や軟口蓋が肥大している人
更年期以降の女性 女性ホルモンには脳の呼吸中枢を刺激する作用があり、更年期以降は女性ホルモンの分泌が減るために起こりやすくなります。

放置しておくと

  • 無呼吸の繰り返しによる酸素不足により心臓や血管に負担がかかり、高血圧、不整脈、狭心症、心筋梗塞、脳卒中などの合併症を起こすリスクが高くなります。
  • 昼間の眠気により交通事故や危険な作業での事故を引き起こし、自分だけはなく周囲の人の命に関わる危険性も出てきます。
  • 眠気、体のだるさから仕事や勉強の意欲、効率が低下します。

検査

問診
いびきや無呼吸の有無と程度、肥満の状態、昼間の眠気などをチェックします。
簡易検査
自宅でできる検査で、小型の装置をつけ、血中酸素濃度や無呼吸の発生状況を調べます。
睡眠ポリグラフ検査
一般的には一晩入院し、検査用の端子をつけて寝てもらい、就寝中の脳波や心電図、筋電図、眼球運動、動脈血中の酸素濃度を測定します。

治療

睡眠中1時間あたりの無呼吸と低呼吸の回数で表す「無呼吸低呼吸指数」(AHI)でチェックされます。

  • 軽度AHI:5~15回/時間、中等度AHI:15~30回/時間、重度AHI:30回以上/時間

重症度の判定

まず生活習慣を改善しましょう。
  • 太っている方は減量に努めましょう。
  • 寝る前のアルコールは筋肉を緩める働きがあるため、少なくとも睡眠4時間前には飲酒をしないようにしましょう。睡眠剤や安定剤も同様ですので、主治医に相談しましょう。
  • 喫煙は気道粘膜に刺激を与え、粘膜が腫れていびきが出やすく、無呼吸を悪化させることがあります。禁煙に努めましょう。
  • 横向きに寝るようにしましょう(気道が広がり、症状がやわらぎます)。
マウスピース
マウスピースを睡眠時にはめ、下顎が後ろにさがらないようにして気道を確保する方法です。1時間に無呼吸か低呼吸の状態が5回以上あり、医師が必要と診断した場合は健康保険が適応されます。費用は自己負担1万~2万円程度です。
CPAP療法(経鼻的持続陽圧呼吸療法)
就寝中に鼻マスクをつけて一定の圧力をかけた空気を送り込んで気道を広げ、無呼吸を防ぎます。有効性と安全性から睡眠時無呼吸症候群ではよく使われる治療方法です。自覚症状があり、AHI:20以上の人は健康保険が適応されます。CPAP治療開始後は、毎月1回以上の外来受診が必要になり、費用は月1回の通院治療及びCPAPのレンタル料を含めて3割負担の方で約5000円程度です。健康保険での適応基準以下でCPAP療法を希望される場合は、自費でCPAPの機械を購入することになりますが、機械自体が30万円以上とかなり高額になります。
耳鼻咽喉科的手術
扁桃や口蓋垂が大きいことが原因の場合には外科的に切除したり、レーザー手術を行うことで改善されることがあります。
子供のいびき
睡眠時無呼吸症候群は子供にも起こります。口蓋扁桃が肥大したりアデノイドが増殖すると、上気道を塞いで大きないびきをかきます。睡眠を開始して早い時間帯に成長ホルモンが分泌されますが、睡眠が浅くなると成長ホルモンの分泌が減り、発育が阻害されます。また、昼間に眠くなり勉強がおろそかになったり、イライラしたりするなど心にも影響が出ます。子供の場合も、いびきや無呼吸がある時は早めに受診しましょう。

終わりに

いびきや寝不足位でと軽く考え、受診をしない人が多いようですが、睡眠時無呼吸症候群は放置すると恐い病気です。治療をすることで集中力が回復し合併症の予防ができるので、もしやと心当たりのある方は早めに受診をしましょう。

参考文献
2006年今日の治療指針(医学書院)
標準呼吸器病学(医学書院)
監修
東京医科歯科大学 内科 林 栄治

●情報提供:T-PEC保健医療情報センター

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