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今月のテーマ『咳喘息』

皆さんは咳喘息という病気をご存知でしょうか。咳喘息は、ゼーゼー・ヒューヒューという喘鳴や呼吸困難がなく、慢性的に咳だけが続く病気です。風邪をひいた後、咳だけが一向に治まらず、むしろ日増しに咳がひどくなるという状態が3週間以上続く場合は、咳喘息の可能性があります。咳喘息は気管支喘息になることもありますので、風邪と片づけずに、早めの治療を受けることが大切です。今回は、この咳喘息についてお話しましょう。

咳とは

気道に異物が入ったり刺激が加わったりすると、その異物や分泌物を体外に排出しようとして咳が出ます。異物による刺激には、たばこなどの化学的な性質によるものや、分泌物などの機械的なもの、気道粘膜の充血など炎症が起きたことによるものなどがあります。誤って食事中に食べたものが気道に入った時、冷たい空気を吸い込んだ時など、それが刺激になって咳が出ることがあります。風邪の時に気道に炎症が起きると分泌物が増え、それを出そうとしても咳が出ます。

咳には

咳には、湿性の咳と乾性の咳(空咳)があります。湿性の咳は過剰に生じた痰を出すための咳で、気道の炎症が原因であり、副鼻腔気管支症候群(※1)などに特徴的です。一方、乾性の咳(空咳)は咳だけが出るもので、咳喘息やアトピー咳嗽(※2)などにおこります。

また、2005年に日本呼吸器学会より発表された「咳嗽に関するガイドライン」では、咳の持続期間により、3週間以内の「急性咳嗽」、3〜8週間の「遷延性咳嗽」、8週以上の「慢性咳嗽」に分類・定義しています。急性咳嗽は、上気道のウイルス感染などの風邪によるものが最も多く、たいていは特に治療しなくても自然に治ります。遷延性・慢性咳嗽は3週間以上続く咳が唯一の症状であり、胸部レントゲンや身体所見などでは原因を特定できないもので、咳喘息やアトピー咳嗽、副鼻腔気管支症候群などがあります。

咳喘息とその症状

咳喘息とは、気管支喘息(※3)に見られるようなゼーゼー・ヒューヒューという喘鳴がなく、呼吸困難も伴わない乾性の咳(空咳)が長く続く病気です。春や秋などの季節の変わり目に出ることが多く、就寝時や深夜または明け方に激しい咳が出たりします。日中は冷気・運動・喫煙・精神的な緊張などがきっかけとなり、咳が連続して出ます。一度咳が出だすと止まらず、ひどい寝不足になったり、仕事に支障が出たりする場合もあります。また、咳喘息は感染症ではありませんので、人にはうつりません。

治療

この咳喘息には、一般的なかぜ薬・咳止め・抗生物質などは効果が少なく、気管支喘息と同様に気管支拡張薬が有効です。気管支拡張薬によってある程度咳が治まり、咳喘息と診断が確定すれば、吸入ステロイドでの治療を開始します。咳喘息は気管支喘息へ移行する可能性があるため、診断早期から積極的な治療を行う必要があります。吸入ステロイド薬は、血液にほとんど吸収されず、気道などの局所に使用するため、副作用は少ないと言われています。

日常生活の注意点

  1. 咳を誘発するダニ・ハウスダスト・ペットの毛などを極力減らすようにしましょう。
    布団に掃除機をかけたり、ほこりがたったりしないようなお掃除の工夫も大切です。
  2. 風邪やインフルエンザにかかると、気道の粘膜が過敏になります。
    日ごろから過労や寝不足を避け、外出時のマスクや帰宅時のうがい、手洗いを励行し、風邪を予防しましょう。
  3. 空気が乾燥していると気道の粘膜が刺激され、咳がひどくなります。
    加湿器などを使ってお部屋の湿度にも気をつけましょう。
  4. 急に冷たい風が入ってきたり、急激な気温の変化が起きたりしても咳が誘発されることがあります。
    外出時の服装や、室内外の温度差が大きくなりすぎないように気をつけましょう。
  5. たばこの煙は気道に強い刺激を与えます。
    ご本人の禁煙はもちろん、周囲の人が吸うたばこの煙にも気をつけましょう。
  6. 咳がひどい時は体力を消耗しますので、良質なたんぱく質や消化のよい食品を取りましょう。
    ただし、食事の取りすぎは、胃を充満させ横隔膜を刺激し咳が誘発されるため、腹八分目にしましょう。
  7. 過労やストレスによっても咳が誘発されます。
    日ごろから過労を避け睡眠や休養を十分に取るようにしましょう。

終わりに

長く続く咳は、咳喘息だけでなく肺結核・肺がん・間質性肺炎(※4)など、見過ごしてはいけない病気があります。また、高血圧の薬(ACE阻害薬)の副作用による咳や、心因性による咳などもあります。咳が長く続くなど、気になる症状がある時は、軽視せずに専門医にご相談されることをお勧めします。

(※1)副鼻腔気管支症候群
副鼻腔炎があると鼻汁がのどへ流れて気管に入って気管支炎が起こり、咳が出ることがあります。
(※2)アトピー喘息
咳を唯一の症状とする病気で、咳喘息との区別が困難ですが、気管支拡張薬が無効なことから区別できます。アトピー咳嗽の場合は、花粉症などのアレルギー治療に使う抗ヒスタミン薬や吸入ステロイドが有効です。また、気管支喘息への移行はまれです。
(※3)気管支喘息
気管支に炎症が生じて気道が狭くなり、呼吸が苦しくなる病気です。呼吸に伴ってゼーゼー・ヒューヒューという喘鳴があり、発作がひどくなると命にかかわることもあります。発作が起きていない時でも常に慢性的な炎症が起きていて、気管支が狭くなっており、わずかな刺激が加わっただけでも発作が起きます。治療には気管支拡張薬やステロイド薬、抗アレルギー薬などが有効です。
(※4)間質性肺炎
肺は肺胞というたくさんの小さな袋からなっています。肺胞は薄い膜でできていますが、何らかの原因でこの膜に炎症が起こり、膜が厚くなる病気です。病気が進行すると息切れがひどくなり生活に支障を生じるようになります。
監修 救急救命東京研修所教授名倉節
参考文献 標準呼吸器学医学書院
今日の治療指針2008年 医学書院
新臨床内科学医学書院
症状が起こるメカニズムとケアPART1 照林社

●情報提供:T−PEC保健医療情報センター

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