知っておきたい!健康と医療 今月のテーマ『帯状疱疹』

帯状疱疹という病気をご存知ですか。帯状疱疹は、水ぼうそうに罹ったことのある人の10人に1~2人程度の割合で見られる皮膚の病気です。この様に一般的な病気である帯状疱疹ですが、適切な治療を怠ると帯状疱疹後神経痛に移行してしまうことがあります。今回はそんな帯状疱疹についてお話したいと思います。

原因

帯状疱疹は水痘帯状疱疹ウイルスによる感染症です。水痘帯状疱疹ウイルスに初めて感染した時は、水ぼうそうを発症します。水ぼうそうに一度罹ると抗体が作られ再発を防いでくれます。しかし、その原因となった水痘帯状疱疹ウイルスは死滅することなく、一部は身体の中の神経節に潜んでいます。この状態では特に症状はありませんが、年月経過による抗体の減少、加齢、病気、怪我、ストレス、疲労などにより身体の抵抗力が弱まると、水痘帯状疱疹ウイルスは再び活動を開始します。活動を開始した水痘帯状疱疹ウイルスは、皮膚に激しい痛みを伴う水疱を帯状に作ります。

症状と経過

1.痛みの出現
ピリピリチクチクとした痛みから始まり、多くは左右どちらかの胸から背中、腹部に多く見られます。頭や首、顔、手足に現れることもあります。
2.発疹と水疱の出現
痛みの出現とほぼ同時か数日経過した後、痛みを感じた場所に赤い発疹や水疱が出現します。衣服が触れる等のわずかな刺激でも激しい痛みを伴うこともあります。
3.膿疱と潰瘍へ移行
発疹出現から9日程度で膿を持った黒っぽい膿疱となり、さらに潰瘍を生じます。
4.かさぶたの形成から治癒
発疹出現から2週間程度で潰瘍がかさぶたとなり、皮膚症状が治癒します。皮膚症状の治癒とともに痛みも消失します。
5.再発の可能性
一度帯状疱疹に罹っても、年月の経過による抗体の減少や抵抗力の低下などから複数回発症することもあります。

帯状疱疹後神経痛

皮膚症状が治癒しても痛みだけが残り、いつまでも続く場合があります。これを帯状疱疹後神経痛と言います。帯状疱疹後神経痛は、水痘帯状疱疹ウイルスにより神経の炎症が続くことで神経組織が破壊されることが原因と考えられています。初期症状の強い人や高齢の人に多く見られますが、症状の長期化でも発症の危険性を高めます。後遺症を残さないためには早期発見と早期治療が有効となります。

診断

診療科は皮膚科になります。問診と視診で診断されることが多く、発疹が出現する前であれば、身体の片側だけに現れる帯状の痛みが手がかりになります。帯状疱疹特有の皮膚症状が認められれば診断されます。

治療

1.ウイルスの増殖を抑える治療
抗ウイルス薬にてウイルスの増殖を抑え、症状の悪化を防ぎます。抗ウイルス薬は早期に使用を開始することで効果を発揮するため、皮膚症状の出現から遅くとも3日以内には治療を開始するとよいでしょう。一般的には内服薬が用いられることが多く、皮膚症状には外用薬を併用します。症状の程度によっては内服薬ではなく点滴が使用される場合もあります。
2.痛みを抑える治療
鎮痛剤にて痛み刺激から神経を保護し帯状疱疹後神経痛を予防します。内服薬では効果がない場合、麻酔科やペインクリニックで神経ブロック注射を行うこともあります。痛みは我慢せず鎮痛治療を積極的に受けるようにしましょう。
3.皮膚の炎症を抑える治療
抗炎症外用薬・抗菌外用薬にて皮膚症状の悪化を防ぎ、瘢痕を予防します。

治療

感染予防
帯状疱疹が他人にうつることはありませんが、水ぼうそうに罹ったことのない人には水ぼうそうを発症させる危険性があります。かさぶたができるまでは免疫のない赤ちゃんや子供、妊婦への接触は避けたほうがよいでしょう。
食事
食事制限は特にありません。バランスのよい食事から十分な栄養を補給しましょう。アルコールの摂取は痛みを増強させるため控えたほうがよいでしょう。
入浴
水疱が潰れて傷ができてしまっている時はシャワー浴程度にとどめた方がよいでしょう。傷がなければ入浴も可能で患部を温めると鎮痛効果が期待できます。
休養
可能な限り安静にし、十分休養をとることをお勧めします。症状が軽ければ、主治医の指示に従って無理のない程度に日常生活を送りましょう。

おわりに

帯状疱疹を予防するためには、水痘ワクチンを接種することも予防方法の一つですが、日頃から栄養と睡眠を十分にとり、適度な運動を心がけ、心身の健康に気を配ることで体力を低下させないことが最も大切です。

参考文献
標準皮膚科学 第7版(医学書院)
今日の皮膚疾患治療指針 第3版(医学書院)
監修
T-PEC相談医 小児科医 田村 剛

●情報提供:T-PEC保健医療情報センター

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