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今月のテーマ『認知症の方への接し方』

はじめに

認知症とは脳や身体の疾患を原因として、記憶力・判断力などの障害が起こり、普通の社会生活が送れなくなった状態と定義されています。認知症の原因は基本的には脳の病気であり、そのうち日本で最も多いのは脳が萎縮するアルツハイマー病です。次に多いのが脳梗塞や脳出血などの脳血管障害です。そのほか様々な脳の病気によって認知症が引き起こされます。現在わが国ではアルツハイマー病に罹患している方は約120万人、認知症全体では約250万人の患者さんがいると推定されています。さらに、認知症の予備群とも言える軽度認知障害を有する方はその数倍存在すると考えられています。

認知症の方と接する時、どうしたらよいのか戸惑いを感じられる方が多いと思います。これから認知症の方との接し方について、具体的なエピソードを含めながらお伝えします。

認知症かなと思ったら

初期あるいは軽度の認知症の診断は容易ではありませんが、本人や家族が判定できる簡単なチェックリストが開発されています。次にご案内するチェックリストで該当する項目が2つ以上認められた場合は認知症が疑われますので、早期に受診されることをお勧めします。
 (あくまでも疑いであって、これだけで認知症と判定するものではありません。)

チェックリスト(アメリカ・ワシントン大学アルツハイマー病研究センター/2005年)

  • 判断が難しくなる
  • 趣味や活動に興味を失う
  • 同じことを繰り返す
  • 電化製品、道具、小物などの使い方を覚えにくくなる
  • 日常生活に必要なことを考えたり覚えたりすることができにくくなる
  • 家計など金銭面で複雑なことができにくくなる
  • 約束したことを思い出しにくくなる
  • 現在の年月日を覚えられない

認知症は具体的にはどのようなことが起き、どのように対応したらよいでしょうか

1. 記憶力の低下

記憶力の低下とは、新しいことが覚えにくく、すぐに忘れてしまうという認知症の方の基本的な症状です。認知症のない高齢者の場合でも新しいことは覚えにくいものですが、大切なことは新たに覚えることができます。また忘れやすいという自覚がある場合は、メモを取るなどをして自分の物忘れを補うことができます。例えば、通常は夕食の後に何を食べたか食事の内容を思い出せなかったとしても、食べたこと自体を忘れてしまうことはありません。しかし、認知症の方は夕食を食べたこと自体、すっかり忘れてしまうのです。数分前のできごとを忘れてしまっているので、同じ言動・質問を何度も繰り返します。はじめはよくても同じ質問を5回、6回とされたら、家族の方は「さっき言ったでしょう」「何度も同じことを聞かないで」と言ってしまうこともあるでしょう。しかし、認知症の方は困惑するだけなのです。その時はうまく話題を変えてみる、他の家族に対応を変わってもらう、認知症の方から少し離れて気持ちを落ち着かせる、という方法を取ることも大切です。

2. 判断力の低下

記憶力の低下と共に判断力も低下します。例えば『朝7時に朝食、10時にお茶の時間、12時に昼食、15時に散歩、19時に夕食』という予定があったとします。認知症の方は「この時間だから何をしなければいけない」という判断が困難になってきます。症状が比較的軽度であれば、時計の横に一日の予定表を貼るなどの方法で予定通りに行動することも可能でしょう。しかし、症状が進むと朝・昼・夜といった時間経過の判断が難しくなるため、約束や予定が守れなくなってきてしまいます。そのような時には「15時なので散歩に行きましょう」と声をかけることもよいでしょう。また、時間・場所・方法・など、総合的に判断をして行動することが難しくなります。例えば、尿意を感じた時トイレはどこにあるのか、あとどのくらい我慢できるかなどの判断ができず失禁してしまうことがあります。そのため、普段からの行動パターンや生活習慣などを知り、トイレの場所が分かるように表示する、場合によっては決まった時間に声をかけてトイレへ誘導することが必要になってきます。もし汚してしまった時には、叱責するようなことは避け、「少し濡れてしまったようなので交換しましょうか」、「新しいほうが気持ちよいですよ」と言って平静に対応しましょう。

3. 過去の記憶・人物誤認

認知症の方は新しいことは覚えられなくても、症状が重度でなければ昔のことはよく覚えています。特にアルツハイマー病の方は発病後の記憶を保持することが難しく、また病気の進行により発病前の記憶自体も曖昧になってしまいます。例えば、家族の顔です。ある70歳代の認知症の女性は夕方になると決まって「小学生の息子が、お腹を空かせて学校から帰ってくる。夕飯の支度をしないと」と落ち着かなくなり、あちこち行き来します。しかし、実際には息子は成人し、所帯を持ち別の所に住んでいるのです。そのような時には、夕飯の支度を一緒に行いながら気を紛らわすこともよいと思われます。また、帰宅してきた夫に対して「あなたはどちら様ですか。主人が帰って来ますのでお引取りください」という反応を示すこともあります。この女性は過去の記憶で判断しているので、彼女から見ると夫は年老いた知らない男性なのです。その時は強く否定せず「はじめまして」と別人になりきってしまうことも一つの方法です。納得させようとして言い争いをすると余計に混乱を招くため、無理に現実に戻そうとはしないことが大切です。過去の記憶の中にいるならば、それを受け入れて柔軟に対応し、穏やかに訂正されるとよいでしょう。

4. 感情

認知症は上記のような認知機能の低下は起こりますが、それ以外の『こころ』の活動である「感情」「思い」「期待」「プライド」「性格」などは残っていることが多くあります。好きな食べ物は忘れても、食べている時の満足感はあります。例えば、以前教師をしていた方は、教えていた内容は忘れてしまっても「先生」と呼ばれ、プライドを持って教えていたことは忘れていないものです。そのためこういった感情が残っている認知症の方には、話の内容よりも認知症の方への話の仕方や言葉遣いがとても大切になってきます。また、性格については本来の性格がより強調される場合や全く別人のように変化することがあります。これは感情をコントロールする力の低下や、様々な思いを上手に表現できにくいもどかしさの現われのようです。変化した人柄を元に戻すことは難しいので、変化したことで生じる問題が少なくなるように対応しましょう。

認知症の方への基本的介護のポイント

ここまで認知症の方との接し方を中心にエピソードも含めながらお伝えしました。

認知症の方の『こころ』の特徴から基本的な介護のポイントがいくつかあります。

  1. 認知症という病気だけでなく、その方自身の人生の歴史、生活習慣・性格を含めて知ることが大切です。
  2. 症状が進行すると今までできていたことができなくなってしまうことがあります。しかし、「できなくなってしまった」ではなく、「できることは何か」を考えましょう。残存機能に注目し、少しでもできることを家族とともに行うことで、自尊心を高め精神的安定につながります。
  3. 過去の記憶の中で生活していることを受け入れることが大切です。
  4. 細かな身体の変化に注意しましょう。認知症の方は自分自身の身体的な変化について正確に理解し、伝えることが難しくなります。普段からその方の健康状態を知ることが大切です。それにより、脱水症状、肺炎、持病の悪化などを早期に発見する手がかりとなるでしょう。
  5. 認知症の方の身の安全を守りましょう。加齢と共に運動機能・感覚機能・生理機能などの低下により自分自身で身の安全を守ることができなくなってきます。例えば階段を踏み外してしまうことでの転倒・転落、皮膚の温度感覚が低下することでの火傷など挙げられます。そのため、周囲の方が注意深く見守ることや、履物、衣服の長さなどの調整や、環境も含めた安全の配慮が大切です。

おわりに

認知症の方を長期間介護することはとても大変なことです。そのため、介護をされるご家族自身の休息も必要です。例えば、介護保険サービスを利用して休息時間を作る、家族会の参加などで気持ちを分かち合う、電話での悩み相談で専門家にアドバイスを受けるなどで介護者自身の心身のケアを行うことが大切です。

また、身近に介護をされている方がいらっしゃる場合、その方は介護の辛さを誰にも理解されず、孤独を感じていることもあるでしょう。その時は温かい言葉やお気持ちをお聞きになるなどの、できる範囲での協力が何よりも大切です。

監修 救急救命東京研修所 教授  名倉 節
参考文献 認知症の方への対応がよくわかるQ&Aブック認知症なんでも相談室 日本医療企画
バリデーション認知症の方との超コミュニケーション法 筒井書房
標準脳神経外科学 第11版 医学書院

●T−PEC保健医療情報センター 発行

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