知っておきたい!健康と医療 今月のテーマ『花粉症情報を活用してセルフケアを』

2010年の夏は、これまでの記録が次々と塗り替えられるほどの猛暑が続きました。スギやヒノキの花粉の飛散量は、前年の7~8月の気温と日照時間に大きく左右され、気温が高いほど、そして日照時間が長いほど、翌年の花粉の飛散量は増えます。2010年の7~8月の気象条件はまさにこの条件にあてはまっています。
さらに、これまでの観測結果から、花粉の飛散量の少なかった年の翌年は気象条件が悪くても花粉の飛散量が多くなる傾向にあるといわれています。2010年は花粉の飛散量がとても少ない年だったことから、2011年の花粉の飛散量はかなり多くなると見込まれています。
すでに毎年花粉症で悩んでいる方も、まだ花粉症にかかっていない方も、花粉症情報を最大限活用して、これから訪れる花粉症の季節を乗り切りましょう。

ポイントは、花粉をできるだけ体内に取り込まないこと

鼻や目の粘膜から花粉が体内に取り込まれると、体はそれに反応して花粉に対する抗体をつくります。花粉が何度も繰り返し大量に体内に取り込まれることによって、体は花粉に対して過剰に反応しやすくなり、花粉症を発症するリスクが高くなります。
すでに花粉症にかかっている人やかかっていてもごく軽症の人は、花粉をできるだけ体内に取り込まないことが、現在の症状をそれ以上悪化させないために最も重要です。また、まだ症状が出ていない人が今後も発症しないためには、花粉症の人と同様に、花粉をできるだけ体内に取り込まないことが大切です。
ふだんの生活の中で花粉を避けるセルフケアを心がけることが、症状を和らげたり、花粉症にかかりにくくしたりなどの、快適な生活を送るための重要なポイントとなります。

花粉を体内に取り込まないためのセルフケア

花粉症の改善には、医療機関にかかり適切な治療を受けることが最も有効ですが、それと同時に、ふだんの生活の中でできるセルフケアをしっかり実行することで、症状を軽減し、仕事や日常生活への支障を減らすことができます。
また、まだ花粉症を発症していない人も、花粉を取り込む量をできるだけ少なくすることが、今後も花粉症を発症させないためには重要です。

外出時は、マスク、メガネ、帽子を着用

マスク
マスクは、体内に取り込む花粉の量を減らすのに効果的です。通常のマスクは取り込む量を約1/3、花粉症用のマスクは約1/6に減らせるといわれています。ただし、あごや鼻の両脇などに間があると、息を吸ったときにそこから花粉が入り込んでしまい、マスク着用の効果がなくなってしまいます。すき間ができないように着用しましょう。
また、マスクの織りは細かすぎると通気性が悪く、すき間から流れ込む空気量のほうがマスクを通す空気量よりも多くなり、かえって大量に花粉を取り込んでしまうことになります。花粉の粒は比較的大きいため、マスクを通るときの空気の流れが屈折していれば、途中で繊維にひっかかりますから、必ずしも細かいほうが効果があるというわけではありません。織りの細かさではなく、息のしやすさで選ぶようにしましょう。
メガネ
メガネもまた、体内に取り込む花粉の量を減らすのに効果的です。通常のメガネでも約1/3に減少させるといわれています。外出するときは、ふだんメガネの必要のない人も度の入っていないメガネをかけるといいでしょう。さらに、サイドカバーが付いたものやゴーグルなどは顔とのすき間が小さくなるためより効果的です。
コンタクトレンズを使用している人は、花粉の飛散する期間は眼に炎症などを引き起こすことがあるので、メガネに替えたほうが安心です。
帽子
髪の毛に花粉が付いていると、帰宅したときにそのまま家の中に持ち込んでしまいます。外出の際は、帽子などをかぶり、髪の毛に花粉が付くのを避けましょう。

外出時は、花粉の付きにくい素材の服装で

生地の種類によって花粉の付きやすさは大きく違います。ウールなどの毛織物は花粉が付きやすく、家の中に大量に持ち込む可能性があるためできるだけ避け、綿、ポリエステルなどの化学繊維など、表面がすべすべしている花粉の付きにくい素材で、そでやすそに折り返しのない服を選ぶとよいでしょう。

帰宅時は、家の中に花粉を持ち込まない

玄関前で衣服や髪についた花粉を払い落とし、家の中に花粉を持ち込まないように注意しましょう。帰宅したら、すぐに、うがい、鼻をかむ、手洗い、洗顔で、のど、鼻、手、顔についた花粉を落としましょう。

窓の開閉に注意し、室内はこまめに掃除

換気をするときは、窓は小さく開け、できるだけ短時間で済ませましょう。レースのカーテンをすれば、侵入する花粉の量を約1/4に減らせます。換気をしたあとは、花粉が室内に入り込んでいるため、必ず濡れ雑巾などで掃除をしましょう。特に、窓際は念入りに行うとよいでしょう。

洗濯物や布団はできるだけ室内に干す

花粉が飛散している時期は、洗濯物は室内に干したほうがいいでしょう。布団も、できれば布団乾燥機などを使用して、屋外に出さないようにしましょう。もし、やむを得ず屋外に干した場合は、布団の表面に掃除機をかけるなどして、花粉を取り除く工夫をしましょう。

花粉症の症状軽減のためのセルフケア

花粉症の症状を軽減させる、または悪化させないためには、「免疫機能を正常に保つ」、「鼻の粘膜を正常に保つ」という2つのことが、日常生活を送るうえで最も基本的でかつ重要なポイントです。

1.免疫機能を正常に保つ

  • 睡眠を十分にとる
  • 規則正しい生活習慣と、バランスのよい食生活を心がける
  • ストレスをためない

2.鼻や口などの粘膜を正常に保つ

  • かぜをひかない
  • お酒を飲みすぎない
  • タバコを控える

ホームページなどで花粉情報をチェック

花粉症の予防や治療、そして花粉をできるだけ体内に取り込むことを防ぐために、インターネットなどの花粉飛散開始予測日や花粉飛散情報などを参考にするとよいでしょう。飛散量が多くなりそうなときは外出を控えたりなどのセルフケアを心がけましょう。

上記のほかに、各自治体ホームページなどでも各地域の花粉情報を提供しています。ぜひご利用ください。

日本国内ではスギやヒノキの花粉症の患者数が最も多いのですが、ほかにも、カモガヤなどのイネ科やブタクサ、ヨモギなどのキク科など約60種類もの花粉症が報告されています。2~5月のスギ、ヒノキの花粉の時期以外に花粉症の症状が出た場合は、スギ、ヒノキ以外の花粉症の可能性が考えられます。
また、くしゃみ、鼻水、目のかゆみなどの症状を自分の判断で花粉症だと決め付けてしまわないようにしましょう。別の病気が潜んでいたり、花粉ではなくダニやハウスダストなどの別の物質が原因でアレルギー症状が出ている場合があります。
まずは、医療機関を受診して、花粉症かどうかを検査してもらうことをお勧めします。
参考資料
『花粉症環境保険マニュアル―2009年2月改訂版―』(環境省)
『平成22年版花粉症一口メモ』(東京都福祉保健局)
『平成21年花粉症対策』(厚生労働省)
『花粉症 的確な花粉症の治療のために』(厚生労働省)
文責
社会保険研究所©

●ティーペック株式会社 発行

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