知っておきたい!健康と医療 今月のテーマ『妊娠中の食事ポイント』

妊娠をきっかけに、自分の食生活を見直す方は多いもの。自分が食べたものが胎盤を通して赤ちゃんに栄養として届けられるのですから、栄養バランスに気を配りたいものですね。喫煙は低体重時の出生につながったり、多量飲酒による胎児性アルコール症を招いたり、それぞれの影響が懸念されていることはみなさんよくご存知のこと。正確な情報を手に入れて、快適なマタニティーライフを過ごしましょう。
今回は妊娠中の食事ポイントについてご紹介いたします。

妊娠中の食事量

妊娠前と比較し、妊婦のエネルギー付加量を加えて食事量を増やすことが必要です。妊娠初期は、胎児の体重増加は少ないため、その分のエネルギー付加量は少ないですが、妊娠後期ともなると胎児の体重増加のためごはん2杯分程度の増加分が必要です。出産後、母乳育児の場合はその分を付加する必要がありますが、ミルク育児の場合はその付加量は必要がありません。

身体活動レベル 低い(kcal) 普通(kcal) 高い(kcal)
18~29(歳) 1700 1950 2250
30~49(歳) 1750 2000 2300
妊婦(付加量)初期 +50 +50 +50
妊婦(付加量)中期 +250 +250 +250
妊婦(付加量)末期 +450 +450 +450
授乳婦(付加量) +350 +350 +350

妊娠中だからといって、自分の好きなものを食べることでエネルギー量を多くするのではなく、胎児の成長に必要なビタミンミネラルが含まれる食品を十分に摂るように心がけましょう。

妊娠中気をつける食品や栄養素

妊娠中は、胎児の成長に必要な栄養を摂る必要があります。注意すべきポイントを、栄養素別にご紹介いたします。

<葉酸>

厚生労働省は、経管閉鎖障害の発症リスクの提言のため、葉酸摂取量を増加させるべきであると勧告しています。期間は、妊娠の1ヶ月前から妊娠後3ヶ月ごろの摂取が望ましいとされています。食事から補えない場合、健康補助食品から目安として1日0.4mg摂取を勧めています。食品では、緑黄色野菜や果物、大豆製品に多く含まれています。水溶性ビタミンのため、体内にためておくことができません。毎食摂るように心がけましょう。

<ビタミンA>

妊娠初期の多量摂取(妊娠前3ヶ月から妊娠初期3ヶ月までにビタミンAを継続的に10,000IU/日以上)は催奇形性の可能性があるため控えます。摂取基準は0.60mg (2,000IU) (許容上限摂取量:1.5mg 5,000IU)ですので通常の食事でしたら摂りすぎの心配はありません。ビタミンAが多く含まれる食品は、うなぎ、あんこうのきも、きんだら、ほたるいかなどです。
また、緑黄色野菜に含まれるベータカロテンは、体内に少ないときにビタミンAに変換されるので、特別控える必要はありません。

<鉄>

妊娠時、体内では鉄の需要が高まります。

年齢 鉄推奨量(mg)
18~29(歳) 10.5
30~49(歳) 11.0
妊婦(付加量)初期 +2.5
妊婦(付加量)中期 +15.0
妊婦(付加量)末期 +15.0
授乳婦 +2.5

鉄分を補給することが大切ですが、日本人女性が不足しがちな鉄を普段の倍以上摂取しなければならないのは至難の技です。
2012年5月のテーマである「貧血の食事」を参考に、鉄分の多い食品をフル活用して貧血を予防しましょう。牛肉やかつお、貝類、大豆製品、ひじき、切干大根、小松菜、ほうれん草に多く鉄が含まれています。

<カルシウム>

妊娠中は、胎児の骨格を作るため、特に妊娠末期にカルシウムの需要が高まります。妊娠中と授乳中は、食事からカルシウム吸収率がアップするため、カルシウムの付加量は考えなくてもよいといわれています。ただし、日本人は摂取量が少ないというデータがあるため、650mgを目安に意識して摂りましょう。カルシウムは、ごま、豆腐、あさり、干しエビ、牛乳、チーズ、ひじき、小松菜などに多く含まれます。

<塩分>

塩分の摂りすぎは、むくみや高血圧の原因に。食欲が増して食事量が多くなると、必然的に塩分摂取が多くなります。意識して控えましょう。野菜や果物に多い水溶性のビタミンであるカリウムは、塩分を体の外に排出してくれます。食事の中で組み合わせて摂りましょう。

つわりがあるときの食事

つわりの症状は人それぞれ。食べないと気分が悪くなる場合や、ある特定の食品しか受けつけなくなる場合など、あらゆる症状が現れます。その症状の期間は、妊娠初期に限定する場合や、妊娠後期にまでわたって悩まされることもあります。食事の摂り方としては、酸味のあるものや冷たいもの、クラッカーなどの軽いものなど、そのときに食べられるものをこまめにとりエネルギーを確保することが大切です。食事が摂れない場合、特に水分を受けつけない場合は速やかに、かかりつけの産婦人科に相談することをお勧めいたします。

今回は、妊娠中の食事についてご紹介いたしました。
ママの食べたごはんが、赤ちゃんの体の基礎を作ります。出産後は母乳を介し、栄養となるのです。妊娠出産を機に、食事を見直すことは、家族の健康管理につながります。体重増加しやすい時期ですが、食事管理によって健康を維持しましょう。

●東京海上日動メディカルサービス 発行

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