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第3回 本当に必要な保障はこれだ!(ヒトのリスク)

死亡、入院、要介護―。こうした不測の事態への備えに「保険・共済」を連想する人は多いでしょう。「お守り」「安心料」と言われ、不安な心の拠り所とも捉えられがちな商品です。
日本では9割方の世帯が生命保険や医療保険に加入しており、多くの方は「保険・共済は入っておくべきもの」と思っています。
しかし保険・共済とは、家計が危機的状況に陥るのを回避する手段のひとつであり、加入すれば保険料や掛け金という「コスト」も発生します。保険・共済を用いることが不測の事態への備えとして、常に理にかなう手段であるとも限らず、過剰に加入すれば、むしろ家計を痛めてしまう可能性すらあります。保険・共済は「入るべきもの」ではなく、リスクの特性、そして家計の状況を踏まえ「必要性を個別に検討すべきもの」なのです。
必要性を検討するには、まずはリスクを分類することから始めます。

保険・共済で解決できる事態は限られている

私たちは、ライフプランに影響を及ぼし得るさまざまなネガティブな事態を憂慮していますが(下図)、これらのなかには、事前に対応すべき事態と対応が難しいいわば“心配事”が混在しています。さらに事前に対応すべき事態であっても、お金で解決できる事態とできない事態があり、かつお金で解決できる事態であっても、保険・共済で解決できる事態とできない事態があります。

©2020 Kaori Shimizu

つまりネガティブな事態は種々あるものの、保険・共済で対応できる事態は限られており、憂慮する事態に保険・共済が真に有効な備えとして足り得るのか、検討が必要ということです。
保険・共済で対応可能なリスクについては、大きく「モノ・賠償(上図=青)」、「ヒト(上図=赤)」に区分して考えます。この2つは異なる性質を持っており、私たちが備えを考える上で分ける必要があるからです。

「モノ・賠償」のリスクに備えは必須

住宅や家財といったモノ(財産)を失う、あるいは他人に損害を与え損害賠償請求されるリスクは、家計に破たんレベルのダメージを与えかねないリスクです。

住まいが損害を受けると、それまでの暮らしが失われるだけでなく、数千万円レベルの財産を喪失することにもなりかねません。しかし生活基盤であると同時に個人財産でもある住宅は、自ら守ることが基本とされ、たとえ自然災害で被害を受けたとしても公的支援は限定的です。
また他人に損害を与えたら、法律上の損害賠償責任が発生します。どんなに気を付けても日常生活上で他人に損害を与える可能性をゼロにはできず、損害規模を予測することも不可能です。

©2020 Kaori Shimizu

このように、「モノ・賠償」のリスクはライフプランが破たんするレベルのダメージを及ぼす可能性がありながら、対応できる公的制度は最低限のものだけです。貯蓄での対応が難しいことから、保険・共済等に加入するほかに、有効な準備手段が見当たらないのが現実です。

「ヒト」のリスクには社会保障がある

一方「ヒト」のリスクとは、生計維持者の死亡、病気やケガでの入通院、要介護状態に陥るといったケースです。これらには、それぞれの事態に応じベースとなる社会保障給付を受けられ、保険・共済等はその補完策と位置付けられます。

たとえば、妻と2人の子どもを遺し夫が死亡した場合、月10万円ほどの遺族基礎年金が支給されます。夫が会社員だった場合、これに加えて遺族年金が、さらに勤務先によっては死亡退職金等が給付されることもあります。よって死亡保障を検討する場合は、既にあるこれらの給付を踏まえ、必要期間と不足額を補うのが基本になります。通常、子どもの成長とともに死亡保障の必要性は低下していくため、それに合わせて保障額を見直せば適切な保障額を保つことができ、保険料や掛け金のムダも減らせます。
また、健康保険証を用いて診療を受ける限り、医療費の自己負担には上限が設けられます。「高額療養費制度」を踏まえれば、ひと月にかかる医療費自己負担は9万円足らず(年収370〜770万円の場合)ですから、手元のお金でも対応可能なケースも多いでしょう。70歳になると原則として医療費負担はさらに軽減され、自己負担額は月あたり5万7600円が上限です(所得区分「一般」の場合)。手元のお金で対応可能なら、保険・共済にこだわる必要はありません。

何らかの公的給付を受けられるヒトのリスクは、公的給付の内容を具体的に知ったうえで、より合理的な補完策を検討するのが基本ということ。こうした点がモノ・賠償のリスクとは異なるのです。

©2020 Kaori Shimizu

「ソントク」ではなく「必要か」を軸に見直しを

しかし、こうしたスタンスで保障設計をしている人は少数派です。全労済協会の調査では、公的給付を意識せず保険や共済などに加入した人は「6割超」(「共済・保険に関する意識調査結果報告書<2017年度版>」)。そして1世帯が負担する生命保険料の平均額は年間38万円、保障の必要性が薄れる70代でもその負担は33万円にのぼります(生命保険協会「生命保険に関する全国実態調査」2018年)。公的給付を踏まえず保障額が過大になれば、保険料や掛け金負担も重くなります。しかし、いざというときの備えが足元の家計を圧迫しては本末転倒ではないでしょうか。

そもそも、保険・共済で対応できる不測の事態は限られているのですから、どのような事態にも対応し得る貯蓄を確保するのが備えの基本です。そしてそのためには、いつまでも保険・共済に頼るのではなく、貯蓄が積みあがるまでの「間つなぎ」として一時的に利用、積みあがったらやめるとのスタンスで保険・共済を用いることです。間つなぎとして用いるのは、より割安でシンプル、かつ期間の短いものを。支払うコストが少なければ、その分を必要資金の積み上がりがスピードアップします。割安でシンプル、かつ期間の短い共済商品は、その候補のひとつになり得ます。共済を家計に上手に取り入れると、コスト減と貯蓄が両立でき、家計の健全性を高めることに繋がるのです。

©2020 Kaori Shimizu

とかく「ソン・トク」で捉えられがちですが、保険・共済は本来、経済的な危機からライフプランを守るためにあるのです。そのために「必要か」を軸に今一度、わが家の生命保険を見直してみてはいかがでしょうか。

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清水 香氏による知って得する!くらしとお金の話 連載

第1回
災害時 知っておきたいお金の知識
2019年9月
第2回
台風で被災。火災保険でどのように補償されるか
2019年12月
第3回
本当に必要な保障はこれだ!(ヒトのリスク)
2020年3月

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