FPによる知って得する!くらしとお金の話

第3回

共働き夫婦がマイホーム購入時に気を付けたい3つのポイント

コープ共済について

2020年8月

共働き夫婦のマネープランの3回目は、「マイホーム購入時に気を付けたいポイント」についてお話します。

住宅ローンは、「人生最大の借金」となります。安心して返済を続けていけるようにするには、大きく3つの注意点があります。順番に見ていきましょう。

①購入時期に注意する~結婚と同時や直後に買ってはいけない

10年くらい前までは、「全額ローン」を組むことは難しく、多くの銀行では購入時にマイホーム価格の1割程度の頭金が必要でした。ですから、結婚したら少しずつお金を貯め、子どもの小学校入学をきっかけに念願のマイホーム購入に踏み切る人が多数でした。

ところが、今はほとんどの銀行で、「頭金ゼロ」でも住宅ローンを貸してくれるようになりました。つまり貯蓄がなくても「全額ローン」を組めば、買うことが可能です。これにより、結婚と同時、もしくは結婚直後にマンションを買うカップルが増えています。

結婚直後にマイホーム購入に踏み切るのは危険です。頭金ゼロだと住宅ローンの借入額が多くなり、返済期間も長くなります。さらに、結婚して「2人でお金を貯めた経験」がないまま大きな借金を背負うのはとてもよくないこと。

結婚直後の共働き夫婦の合計収入は高いのですが、妻が妊娠すると出産前後は妻の収入は激減します。育休後に職場復帰しても妊娠前のようにフルに働けないため、数年間収入は減ったまま。妊娠前に「このくらいなら返せる」と思ったローン返済額が負担になり、まったく貯蓄ができなくなるカップルをたくさん見てきました。

マイホーム購入の「買い時」は、2人でお金を貯めて、子どもが産まれて、家計が安定したときと覚えておきましょう。

②共働きだからこそ、「借り過ぎ」に注意!~2人で働いて、ローンは1.5人分まで

家を買おうと思った時、若いカップルは「家賃と同じくらいか、少し多めのローン返済額なら返していけそう」と考えがちですが、私はいつも「家賃並みに返済額を設定すると貧乏になります」とアドバイスしています。

持ち家になると固定資産税もかかりますし、マンションならローン返済額以外に管理費・修繕積立金が月々発生します。こうした「ローン返済以外の住居費」は、一戸建てで年15万円程度、マンションなら年40万円以上見積もっておく必要があります。仮に現在の家賃が月10万円で、ローンの返済額を同じ額に設定すると、「ローン返済以外の住居費」の分だけ、支出がアップするということです。

住宅ローンを返せるかどうかを判断するには、毎月の返済額だけで判断してはいけません。老後に負担を残さないためには「いくら借りるか」の視点も持ちましょう。

判断するには、固定金利で返済期間を65歳までとして毎月の返済額を試算してみてください。返済期間を65歳までとすると、60歳時点での残高は、おおむね500万~600万円となります。これなら、老後資金を圧迫せずに完済できるでしょう。65歳までの返済期間では、毎月の返済額が多くなるようであれば、それは「借り過ぎ」のシグナルです。物件価格の再考が必要です。

共働きだからといって「2人分のローンが組める」と考えると、借り過ぎになります。妻は出産後に収入がダウンして、もとの年収に戻るのに何年もかかりますし、子どもの成長とともに出費も増えていきます。「2人で働いて、ローンは1.5人分が限界」と覚えておいてください。

③変動金利はNG!~「10年以上の固定金利」で安心を取る

変動金利は0.5%前後の金利である一方、固定金利は1.2~1.6%以上という状況では、変動金利を選びたくなる気持ちはよくわかります。しかし、変動金利は景気が良くなると上がります。知っておきたいのは、金利が上がるときには固定金利から先に上がるという経済の約束事。変動金利は「本当に景気が良くなったら上がる」のですが、固定金利は「景気が良くなりそう」という状況だけで上がります。ですから、変動金利が上がった頃にはすでに固定金利は上がっていますので「変動金利でギリギリまでトクをする」のは非現実的なプランだということを知っておきましょう。

変動金利ローンはいつでも固定金利に変更することができますが、金利の低い変動金利で借りた返済額が家計に対して目一杯の金額なら、固定金利に切り替えると返済額が高くなります。最初に多額のお金を変動で借りてしまうと「固定に替えたくても替えられない」状況になるのです。2000万円以上借りるなら、全額変動金利で借りるのはNGです。

子育てしながら安心して住宅ローンを返済していくためには、全期間の固定金利(2020年8月の水準で1.2~1.6%)、もしくは10年固定金利(同月の水準で0.8~1%)を選ぶのが得策です。

「理想のローンの組み方」を知ると、自分の住宅ローンのリスクがわかる

マイホームは、多くの人にとって人生最大の買い物です。住宅ローンの金額も数千万円と高額になるので、リスクを排除して、長期にわたって返済が可能な資金計画を立てなくてはいけません。

私が提唱する「理想のローン」とは、「頭金は2割以上用意して、金利は10年以上の固定金利、60歳までに返し終えるのを目標に当初の返済期間は長くても65歳までにするプラン」です。

相談にいらしたカップルでもリスクゼロのローンを組めるケースは少ないのですが、「理想のローン」を知っておくと、条件を満たさない部分が「わが家のリスク」と認識でき、対処法を考えることができます。

たとえば、『頭金は1割しか用意できないていない、だったら物件価格の予算を下げてローン金額を減らそう』といったようにリスクに見合った具体策を考えるといいのです。ただし、対策を立てるならダメ要素が満載でもいいんだと考えてはいけません。一番のリスクは「借り過ぎ」で、ローン金額が多くなるほど、将来、返済が難しくなる可能性があります。

図の「将来リスクが発生しそうなローンの要素」が多いと、リスクがリスクを招く悪循環となります。原因は毎月返済額だけで「買えそう」と判断してしまうから。いくつかのポイントを押さえれば、安心でおトクなローンを組むことは可能です。一緒に見ていきましょう。

◎将来リスクが発生しそうなローンの要素とは 頭金ゼロまたは1割以下、ローンの金額は4000万円以上、多額のローンを借りると、毎月返済額を少なくするには変動金利を選ぶことになる、返済期間は35年で、完済は70歳を越える ◎理想のローンの要素とは 頭金は2割以上用意する、ローンの金額は、共働き夫婦であっても3000万~3500万円が目安、金利は10年以上の固定金利、当初の返済期間は長くても65歳まで
深田 晶恵
(株)生活設計塾クルー取締役。ファイナンシャル・プランナー(CFP)
1967年、北海道生まれ。8年間勤めた外資系電機メーカーを退職後、1996年にFPに転身。その後、特定の金融商品、保険商品の販売を行わない独立系FP会社、生活設計塾クルーを立ち上げ、個人向けのコンサルティングを行うほか、新聞・雑誌などマスメディアや講演等でマネー情報を発信する。すぐに実行できるアドバイスをするのがモットー。
ダイヤモンドオンラインでマネーコラムを連載中。
おもな著書に『日本一わかりやすいお金の教科書』、『共働き夫婦のためのお金の教科書』(講談社)、『住宅ローンはこうして借りなさい・改訂7版』(ダイヤモンド社)、『30代でそろそろお金を貯めようと思ったら読む本』(PHP文庫)などがある。

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