FPによる知って得する!くらしとお金の話

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第2回 おひとりさま・子がいない夫婦が今後のためにしておきたい準備・対策

「おひとりさま」といっても、頼れる親族がいない人もいれば、親族はいるけれど事情があって頼れない人などさまざまです。中には、子がいないがために孫や甥・姪に頼るという人もいます。

自分が支援してもらう立場の人も、孫や甥・姪などとして支援をしていく立場の人も、今からどのような準備をしておけばよいのか、してもらうとよいのかについて、今後のために知っておくと困らずに済みます。

1.おひとりさまが今後困るかもしれないこと

頼れる親族がいない「おひとりさま」や「子がいない夫婦」は、将来身体が不自由になってしまったり判断能力が低下してしまったりしたときに困らないように、また、亡くなったときに行ってもらう葬儀や納骨、遺品整理、相続手続きや役所の手続きなど自分では行えないことについて、どうするのか考えておく必要があります。

おひとりさまが困る例としては、次のようなことがあります。

  • 預貯金の引出しや支払いなどが自分で出来なくなったとき、誰に財産管理をしてもらうのか
  • 病気・ケガ、認知症・介護状態になってしまったとき入院・入所手続きなどを誰に行ってもらうのか
  • 亡くなった時の葬儀や納骨を誰にしてもらうのか
  • 遺品の整理、賃貸住宅の場合は家主への明け渡しなど、誰に行ってもらうのか
  • 死後の手続き(役所、銀行、各種支払いなど)を誰に行ってもらうのか(支払の立て替えをした人はその費用をもらえるのか)
  • 遺産を最終的に誰に渡したいのか、誰に渡してもらうのか

2.おひとりさまが準備しておきたいこと

今は個人情報保護などの関係で、相続人ではない親族や第三者では行えないことが多くあります。だからこそ頼れる親族がいない場合は、本人の「もしも対策」を早めに行っておかなければなりません。判断力が低下してしまうと対策ができないからです。

そこで、あらかじめ頼れる人を探し、自分が依頼したい内容の契約(下表)をその人と結んでおく必要があります。

契約の依頼相手は、子や孫、甥・姪、友人の子、専門家など誰でもなれます。しかし、負担が伴うため、最後まで行ってくれる人を選ばなければなりません。また、ある程度の年齢差もあったほうが安心です。

一般的には、弁護士、司法書士、行政書士などで相続業務を行っている専門家に依頼するケースがほとんどです。

準備しておきたい契約

  委任契約など 目   的
@ 見守り契約 定期的な連絡や面談による見守りにより、健康状態や生活状況、判断力の低下などの確認をしてもらう。
A 任意代理契約
(財産管理等委任契約)
判断力はあるが、身体が不自由になってしまったときなどの財産管理や見守りを行ってもらう。
B 任意後見契約 判断力が低下したときの財産管理や身上監護(生活・医療・介護などに関する契約や手続き)を行ってもらう。
C 死後事務委任契約 死後の手続き(葬儀、納骨、遺品整理、他の諸手続きなど)を行ってもらう。
D 公正証書遺言 遺産をどうするのかの指定をし、依頼した遺言執行者に遺言どおり手続きをしてもらう。
E 尊厳死宣言公正証書など 延命治療に関する要望として、公証役場で尊厳死宣言公正証書を作成するか、公益財団法人日本尊厳死協会や病院の配布書類などで作成しておく。

上表の委任契約の中から本人が必要とする契約を専門家と結んでおけば、実際に困った時に支援してもらえます。しかし、@見守り契約とA任意代理契約を結ぶ場合は、B任意後見契約も併せての契約になります。認知症になる可能性があるからです。

3.契約の流れと契約のスタート

(1)契約の流れ

例えばCさんが、@〜Eを専門家のA氏に依頼するとします。A氏へ依頼する内容を決め、それをA氏が書面にし、公証役場で公正証書にしてもらいます。そして、CさんとA氏が一緒に公証役場に行き契約を結びます。

B任意後見契約以外は公正証書でなくてもよいのですが、依頼された内容を実行できるよう、実務では公正証書にしています。

(2)かかる費用

例えば下図のように、@〜Dを公証役場で作成したとします。このときにかかる費用は、A氏への@〜Dの書類作成費用と公証役場の手数料です。

契約をしたからといって、その月から実行援助の報酬がかかるわけではありません。実行援助を依頼したときから月々の報酬が必要になります。

なお、実行支援した場合のA氏への報酬額は事前に決め、契約書に記載されます。

(3)契約のスタート

契約の発効は、「CさんがA氏に契約発効(スタート)の意思表示をしたとき」などと契約書で決めておくケースがほとんどです。そのため、@見守り契約とA任意代理契約はCさんの意思表示次第です。しかし、Cさんが認知症などになってしまったときには、B任意後見契約をA氏が発効させます。

つまり、Cさんが実行援助の依頼をせず、認知症などにならなかった場合には、@〜Bの契約を利用することなく終了するということです。必要なときに実行されるため、事前に契約をしておけば、いざというときに安心です。

なお、C死後事務委任契約とD公正証書遺言は、Cさんが亡くなった時に発効します。

4.委任契約利用の注意点

(1)任意後見契約発効時は2人分の報酬が必要

B任意後見契約は、契約が発効すると2人分の報酬が必要になります。Cさんの判断力が低下して後見人が必要になった場合には、A氏はCさんの任意後見人になるため、家庭裁判所へ申立てをします。すると、家庭裁判所はA氏を監督する「任意後見監督人」を選びます。A氏に監督人がつくことでA氏が任意後見人になれる制度だからです。

A氏へは契約書で取り決めた金額を、任意後見監督人には家庭裁判所が決めた額を支払わなければなりません。しかも、Cさんが亡くなるまで報酬は必要です。

(2)親族の理解が必要な場合もある

頼れる親族がいるにもかかわらず、「親族に頼りたくない」と専門家に依頼する人がいます。しかし、親族に了承を得ておかなかったことによって、専門家の職務を親族が妨害するケースもあるのです。親族の意向確認や理解を得ておかなければ、せっかくの契約内容が実行されなくなってしまいます。親族は、専門家に騙されたのではないかと不安・不信感を抱くからです。

また、入院や手術のときの同意や保証人などは、専門家は行いません。そのため、遠い親族にサインをもらうなど、連絡をしたり関わってもらったりしなければならないこともあります。

「親族」という存在は大きいため、親族がいるか否かは、かなり重要な要素です。「頼りたくない」だけでは済まず、親族に頼らざるをえない可能性があることは理解しておかなければなりません。

(3)法律行為以外の関与について

依頼する契約は、法律行為を行ってもらうものです。それ以外の行為は契約外となるため、専門家が行う必要はありません。

しかし、契約内容のみでは日常生活が快適に運ぶとは限りません。多少は日常の些細な配慮をしてもらいたいと思うのではないでしょうか。

ですが、契約外の行為を受け入れるか否かは専門家次第です。どこまで関与してくれるのか確認したり、関与してくれる人を事前に選んだりする必要があります。

なお、意思表示がうまくできない状態になったとしても、快適に過ごせる環境を整えたいのなら、自分の趣味嗜好などについて専門家へ伝えておく必要があります。必ず希望が叶うわけではありませんが、専門家が施設などの職員に、伝えてくれるかもしれません。エンディングノートなどを活用すれば、専門家も把握しやすくなります。

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明石 久美氏による知って得する!くらしとお金の話 連載

第1回
遺言者も家族も知っておきたい「自筆証書遺言の保管」に関する概要と注意点
2020年8月
第2回
おひとりさま・子がいない夫婦が今後のためにしておきたい準備・対策
2020年10月

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