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第1回 誰がトクした? ふるさと納税制度

おトクな「ふるさと納税」が地域を救う!?

この制度、いつまで続くのでしょうか。総務省が管轄する「ふるさと納税」のことです。2008年度の導入以来、すでに10年余。全国の自治体(都道府県・市区町村)が参加し、多くの人が利用していて、国の制度としてすっかり定着した観がありますが、筆者は、速やかに抜本的な見直しをしたほうがいいと考えています。

この制度については、総務省の特設サイトで「ふるさと納税で『地方創生』」というタイトルのもと、次のような三つの意義(理念)が語られています。

  • 納税者が寄附先を選択する制度であり、選択するからこそ、その使われ方を考えるきっかけになる制度。税に対する意識が高まり、納税の大切さを自分のこととしてとらえる貴重な機会になる
  • 生まれ故郷はもちろん、お世話になった地域やこれから応援したい地域にも力になれる制度。人を育て、自然を守り、地方の環境を育む支援になる
  • 自治体が国民にアピールすることでふるさと納税を呼びかけ、自治体間の競争が進む。選んでもらうに相応しい地域のあり方を考えるきっかけにつながる

一見、非の打ちどころのない理念に思えますが、現実のあり様は、そうはいかないようです。

まず、最新の状況から見ていくことにしましょう。導入当初は年間5万件ほどだったふるさと納税(寄附金)の受入件数は2019年度には400倍を超える2,333万件にまで増え、納税(寄附)総額も当初の81.4億円から4,875億円にまで膨らみました。(利用者数、金額は総務省・ふるさと納税のサイトから。以下同じ)これを表面的に見る限りにおいては、ずいぶん大きく成長した、大成功だったと言えるでしょう。

もっとも、利用数や納税(寄附)金額が目に見えて増えてきたのは数年前からです。2014年度の191万件・389 億円が、翌2015年度には726万件・1,653億円にジャンプアップ。関心のある方はご記憶でしょうが、その前後から寄附額を増やすための競争が派手に繰り広げられるようになりました。自治体から寄附者への「返礼」が多様化・高額化し、これをTVなどマスコミが大々的に取り上げるようになって、この制度を専門的に取り扱う民間サイトまで登場しました。

また、納税(寄附)金額の2,000円を超える部分が、納税(寄附)者の所得・住民税から税額控除される=実質2,000円の負担で高額・多様な返礼品を受け取れる、という仕組みが一般にも浸透し、利用者が急激に増えました。今でも忘れられませんが、2017年の秋、テレビのバラエティ番組に、実業家という触れ込みのK氏なる中年の男性が登場し、2016年だけで3,000万円以上の納税(寄附)をして、「その返礼品で年間の食費をほぼ賄い、温泉行きなどのレジャーをただ同然で楽しんでいる」と、この制度の「おトク」度を語っていました。

やや大げさに言えば、上記のような「おトク」に対する国民性が、大きく変わって来ているのかもしれません。かつては、何かを買った時などに、ちょっと価格を負けてくれるとか、「おまけ」を付けてくれるといった受動的な「おトク」を喜び、満足するのが主流だったような気がします。しかし今は、「おトク」を、他をいち早く出し抜き押しのけ、時には裏技を編み出したりして取りに行くといった、能動的なものに変化しているように見えてなりません。

ところで、返礼品の多様化・高額化と言いましたが、この時期には、税のことを考えようだのふるさと応援だのといった理念の話は吹き飛び、「返礼」の名の下に、その自治体の産品であろうがなかろうが無関係に、寄附額と同等以上の金券・商品券・旅行券・食料品・電化製品などを寄附者に提供することが一部の自治体で定着し、そのエスカレートぶりにボツボツと批判も出始めていました。

税が流出(減少)する自治体も出てくる

さて、この辺りから、見直したほうがいい“理由”が登場します。まずこの制度は、直接的には住民税を納めている人だけのものです。住民税非課税の人は無関係です。ただ、この無関係という言葉の前に、「返礼には」との前置きが付きます。というのは、住民税非課税の方々も、この制度により、あまりありがたくない影響を被る可能性があるからです。

この制度では、ある自治体から別の自治体に税金が移転します。つまり、予定していた住民税(歳入)が流出(減少)する自治体が出てくるということです。多くの自治体では、流出した住民税は地方交付税によって補填されますが、東京23区や川崎市など(2019年度は約100団体)は、その地方交付税を受けていません。そして、住民税が流出(減少)すれば、当然その自治体の運営に影響を及ぼします。これによって、住民サービスのレベルが低下したりすれば、間接的にですが、その自治体の住民税非課税の人を含む住民全体に悪影響が及ぶことになります。

さらにもう一つ、K氏のエピソードでお分かりのように、より多くの税を払う(寄附をする)人が、より多くの「返礼」を受け取ります。つまり、より収入が多く、したがって税額の多い人ほど、より多くの返礼品を手に入れられるわけで、富裕層への「富の吹き寄せ効果」が起こり、格差拡大に一役買うことになります。

税金がずるずる消えていく

加えてこの制度は近年、税金(住民税)が日本全体で年間2,000億円以上も雲散霧消し続ける制度になっています。この制度で寄附金を得ようとすると、まず、返礼品の準備が必要です。返礼品の送料もかかります。利用者が多い大都市圏から遠い自治体にとっては結構な負担でしょう。広告・広報も盛んに行われています。

別表として、全国の自治体が2015年度から2019年度までの5年間で、ふるさと納税を募集するためにかけた費用、つまり経費を示しました。注目点の一つは経費率です。ふるさと納税(寄附)を受け入れた額のほぼ半分が募集のための費用に消えています。2019年度は経費率が下がっていますが、これは総務省が、返礼品の金額を寄附額の3割以内という基準を正式に設け、これを守らない自治体は、制度から除外されることが決まったからです。

しかしそれでも経費率は46.7%と高水準。それが、寄附者をはじめ、配送業者、サイト運営者、広告業者、広告出演タレント、金融機関などに「流出」しています。当然ですが、これらのお金は元税金。「公金(税金)の私的流用制度」と言うと言い過ぎでしょうか。こういう「流用」が上記の5年間だけでトータル9,400億円も出ています。このまま続ければ続けるほど、同様の流用(税の霧消)が起こり続けることになります。結局、国全体の疲弊に繋がります。この点では、誰も「トク」しません。

一方で、優れた福祉政策を展開しようとする自治体や、近年立て続けに起こる大きな災害で被災した自治体などに、返礼品を求めないで寄附をする動きが広がっています。本来の「寄附」です。ふるさと納税制度は、自分の税金を居住自治体以外に寄附できることを広く知らしめた点では、意義があったと言えます。ここは思い切って、返礼品を廃してみてはどうでしょう。抜本的な見直しはこの一点に尽きると思います。

5年間で1兆円近くが消えた!〜ふるさと納税の募集に要した費用(単位:億円)

年度 返礼品の調達費用 返礼品の送付費用 広報にかかる費用 決済等にかかる費用 事務にかかる費用など 合計 受入額に占める経費割合
2015 633 43 14 18 85 793 ※38.3%
2016 1,091 150 31 52 161 1,485 ※38.4%
2017 1,406 241 56 78 247 2,027 55.5%
2018 1,814 396 49 112 449 2,820 55.5%
2019 1,375 377 34 95 394 2,275 46.7%

※金額は、総務省HP掲載分の千万円単位を四捨五入して算出

※2015・2016年度の「受入額に占める割合」は、返礼品の調達費用のみを反映

※2015〜2019年度5年間の費用総額は約9,400億円

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野田 眞氏による知って得する!くらしとお金の話 連載

第1回
誰がトクした? ふるさと納税制度
2020年10月

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