知っておきたい!健康と医療 今月のテーマ『冬と高血圧』

血圧が高い人にとって寒い冬は少し注意が必要な季節です。寒くなると体温を逃がさないように血管が収縮するため血圧が上がりやすくなります。その他運動不足や忘年会・新年会など飲酒の機会が増えることも、血圧をあげる要因になります。
高血圧は自覚症状があまりないため放置されることも多く、心筋梗塞や脳卒中を引き起こすことのある怖い病気です。今回はそんな高血圧と寒い季節を過ごす注意点についてお話したいと思います。

はじめに

1. 定義

  • 血圧が持続して高い状態を言います。
  • 収縮期血圧(最高血圧)140mmHg以上、あるいは拡張期血圧(最低血圧)90mmHg以上が高血圧となります。

2. 原因

原因は大きく分けると2種類です。

二次性高血圧
腎臓病・内分泌の病気などで血圧を上昇させるホルモンが過剰に分泌され血圧が上がります。
本態性高血圧
検査をしても特別に原因が見つからないものを言います。

多くの方は本態性高血圧で、二次性高血圧は全高血圧患者の5%以下と推定されています。
本態性高血圧の原因は高血圧になりやすい体質の遺伝が大きく、その他食事・ストレス・肥満・喫煙などが複雑に組み合わさっています。
高齢になると動脈硬化が進行することによって血圧が上がります。

3. 症状

  • 高血圧の自覚症状は一般的にはない場合が多く、ほとんどの場合検診などで発見されます。
  • 急激な血圧上昇時には頭痛や頭重感、肩こり、めまいなどの症状が現れることもあります。

高血圧とは

寒さを感じたり冷たい水にさわったりした時など、血管は収縮し血圧は上がります。正常血圧の人はそれほど影響ありませんが、高血圧の人は血圧が大変高く上がりますので次のような状況では注意が必要です。

  • 寒い屋外に出た時や暖かい部屋からトイレなどへ移動した時
  • 熱いお風呂に入った時
  • 夜間トイレに起きた時や早朝起きた時(夜間は暖房を止めていることが多いため)

また、冬は運動不足になりがちですが、運動が不足することで、体重が増えることも血圧を上げる要因となります。その他忘年会や新年会など飲酒の機会も増えます。適量のアルコールは血行がよくなりリラックス効果もあるため、むしろ血圧を下げてくれます。しかし、大量に摂取すると血管が収縮し血圧が上ります。特に二次会などはしご酒を行うと深酒に冬の冷気も加わり大変危険です。

日常生活の注意点

1. 温度の急激な変化を避ける

  • 室内のみでなくトイレや脱衣所も暖める工夫をする。
  • 夜間トイレにおきる時は靴下や上着を着用するなどの防寒対策をする。
  • 早朝は布団から飛び起きたりせず、ゆっくり行動をする。
  • お風呂は40℃以下のぬるめのお湯にゆっくりつかる。
  • 屋外に出るときはしっかり防寒対策をする。また、寒い時の急な運動も危険なため、朝通勤時などの駆け込み乗車は避ける。

2. 食習慣を見直し、アルコールはほどほどに

  • 脂質を控え、過剰なカロリー摂取を控える。腹八分目を心がける。
  • 塩分は1日10g以下とする(理想は7g以下)。いきなり7g制限は困難なので、まずは10g制限からはじめるとよい。調理や食事方法を工夫する。
    • 酸味(柑橘類)や香り、辛味などで味にアクセントをつける。
    • しょうゆなどの調味料は直接かけず、つけて食べるようにする。
    • 新鮮な旬の材料を使用し、素材のうま味を生かす。
  • カリウムはナトリウムを排出する働きがあるので積極的に摂取する。
    • 緑黄色野菜や果物、海藻類、イモ類などに多く含まれる(腎障害のある人はカリウムが排出されにくいので注意が必要)。
  • アルコールは適量を守る。
    • 日本酒1合、ビール500ml、ワイン200ml程度が適量。女性はその半量。

3. 適度な運動

ウォーキングなどの有酸素運動が効果的。少し汗ばむ程度のペースがよい。1日20分以上(数回にわけて行ってもよい)毎日続ける。

4.その他生活習慣の改善

喫煙には血管を収縮させ血圧を上げる作用があります。たばこを吸う人はできる限り早い禁煙を心がけましょう。
睡眠時間が短いと高血圧や動脈硬化などのリスクが高くなります。6時間以上の睡眠を心がけましょう。また、睡眠時無呼吸症候群のある人は高血圧を合併しやすいと言われています。睡眠時無呼吸症候群のある人はきちんと治療をうけましょう。

おわりに

高血圧の治療の目的は、血圧を下げることそのものでなく、その先にある脳卒中や心疾患を防ぐことにあります。日常生活の改善を心がけ、高血圧の予防につとめながら寒い冬を乗り切りましょう。

参考文献
標準循環器病学(医学書院)
厚生労働省HP
監修
救急救命東京研修所 教授 名倉 節

●T-PEC保健医療情報センター 発行

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