知っておきたい!健康と医療 今月のテーマ『水虫』

国内の水虫の推計患者数は約2,500万人で、5人に一人は水虫にかかっていると言われています。また、最近は女性でも長時間靴を履いて過ごすことが多くなり、女性の水虫患者が増えています。水虫の原因である白癬(はくせん)菌(きん)(かびの一種)は温度が15℃以上、湿度が70%以上になると活動が活発になって症状を悪化させるため、ジメジメする季節は憂鬱になる方も多いのではないでしょうか。今回は水虫の治療についてお話しましょう。

水虫とは

水虫は『白癬菌』という真菌(かび)が皮膚の角質層に感染する事で起こります。白癬菌は体の様々な部位に感染しますが、特に足に感染したものが『水虫』と呼ばれ、趾間型・小水疱型・角質増殖型・爪白癬の4つのタイプがあります。

趾間型
足の指の間に起こるタイプで、皮膚が白くふやけて皮がむけ、むずがゆくなります。
小水疱型
小さな水疱が多く出来、水疱が破れて皮膚が剥ける事もあります。
角質増殖型
足の裏の皮膚が全体に厚く固くなりますが、痒み等はありません。
爪白癬
水虫を長期間放置しておくと、爪の中に白癬菌が入り込んで爪が厚くなり、もろくぽろぽろとかけたりします。

診断

水虫に似た症状を起こす皮膚の病気には様々なものがあり、外見だけから水虫かどうかを判断するのは非常に困難です。最近は病院で処方される薬から転用された比較的有効性の高い水虫の大衆薬(OCT薬)も増えていますが、自己判断で間違った治療法を行うと症状を悪化させます。水虫が疑われる場合には必ず皮膚科を受診しましょう。皮膚科では顕微鏡で白癬菌の有無を調べます。

  • OCT薬:患者さんと薬剤師がカウンターを挟んで相談の上、販売される薬。

治療

水虫と診断された場合には抗真菌剤による薬物療法を行います。

1. 外用薬

趾間型・小水疱型には外用薬を用います。外用薬は1日1回、足の裏も含めて足全体に広範囲に塗りましょう。薬の浸透性が高まる入浴後に塗ると効果的です。治療開始から2週間ほどすると、痒みなどの症状は殆どなくなります。ただ、白癬菌はまだ皮膚に残っていますので、ここで薬を止めず、最低1ヶ月は塗るようにしましょう。根気よく治療を継続することが重要です。

2. 内服薬

角質増殖型と爪白癬の場合は、外用薬が患部に浸透しにくいため、内服薬を使って治療します。内服薬には主に2種類の薬が使われ、服用方法が異なります。どちらの薬を使うかは、薬の飲み併せや服用の方法、治療費などから選択します。

テルビナフィン
3~6ヶ月間毎日服用します。健康保険が適用され、薬剤費の自己負担額(3割の場合)は4週間分で2,400円程度です。
イトコナゾール
『1週間毎日服用、3週間休薬』を1サイクルとし、3サイクルを繰り返します。この時点では完治していませんが、爪に蓄積した薬の成分が、その後も効果を発揮して多くは数ヵ月後に完治します。この方法はパルス療法と呼ばれ、健康保険が適用されます。薬剤の自己負担額(3割の場合)は1サイクル分(1週間服用分)で10,000円前後です。
内服薬はまれに肝機能障害などの副作用が起こる事があるため、定期的に血液検査を行って肝機能をチェックします。また、他の薬との併用が禁止されている薬もありますので、別の病気で内服している場合は、必ず医師にその旨を伝えるようにしましょう。

再発予防のポイント

1. 毎日足を洗いましょう
白癬菌が皮膚の表面に付着してから角質層に入り込むまでには24時間以上かかるといわれています。最低でも1日1回足を洗って付着した白癬菌を落とせば、水虫は起こりにくくなります。石鹸を使って足の指の間もよく洗いましょう。足に傷がある場合は白癬菌が容易に角質層に入りやすくなります。足をごしごしと強く洗って傷をつけないようにしましょう。
2. 足を乾燥させましょう
きれいに足を洗っても、指の間などに水分が残っていると水虫が起こりやすくなります。洗った足はきちんと拭き取って乾燥させましょう。
3. 通気性のよい靴や吸湿性のよい靴下を履きましょう
足が長時間蒸れた状態にならないよう、職場などではサンダルに履き替えたり、靴を時々脱いだりするなどの工夫をしましょう。靴には除湿効果のある中敷を敷くといいでしょう。靴下は木綿や麻など吸湿性のよいものを選びましょう。
4. 清潔な靴を履きましょう
靴は毎日交換し、履かない日は干して乾かしましょう。靴は定期的に洗う事も大切です。革靴は濡らした雑巾やティッシュペーパーなどで靴の中を拭くだけでもいいでしょう。
5. 家族で気を付けましょう
水虫の人が落とした白癬菌が家族に付かないよう、こまめに掃除をしましょう。白癬菌は皮膚などと一緒に剥がれ落ちるので、出来るだけ毎日掃除器をかけたり拭き掃除をしたりしましょう。バスマットやスリッパ、サンダルなど素足がふれるものは共有しないようにしましょう。水虫の人は菌を家の中にばらまかないよう、家の中ではスリッパを履くといいでしょう。

おわりに

水虫は治りにくい病気と思われていますが、正しい診断を受け、適切な治療を継続させれば完治は可能です。自己判断で治療を中止すると再発しやすいので、根気よく治療を続けましょう。

参考文献
標準皮膚科学第7版(医学書院)

●情報提供:T-PEC保健医療情報センター

サイドメニュー