知っておきたい!健康と医療 今月のテーマ『口内炎』

口の中に痛みを伴う発疹ができてつらい経験をされた人は少なくないと思います。口内炎は何らかの原因で、口の中の粘膜や舌に起こる炎症を総称して言います。1週間程度で自然に治るものがほとんどですが、2週間以上たっても治らないものや、症状が繰り返して起こるものは他の病気の可能性もあります。今回は口内炎についてお話しましょう。

口内炎とは

口の粘膜や舌に起こる炎症性疾患を総称して言います。舌や口の中の粘膜が赤または白くなり、水ぶくれや潰瘍ができて、痛みを伴います。場合によっては、口臭や熱を伴うこともあります。
通常、私たちが「口内炎」と呼ぶものは「アフタ」(「アフタ性口内炎」)と呼ばれるものです。他に「カタル性口内炎(虫歯や義歯の不具合で起こる)」「潰瘍性口内炎(不規則な潰瘍をつくり灰白色の苔で覆われる、痛みが強い)」「壊疽性口内炎(壊疽を起こす口内炎で全身の抵抗力が弱っている時に起きる)」「その他の特殊な口内炎(ヘルペス・手足口病・口腔カンジダなど)」など数種類に分類され、それぞれ病状にあった治療を行います。

原因

口内炎発生のメカニズムははっきりわかっていませんが、原因として以下のことが考えられています。

  • 口腔内の不衛生
  • 義歯や矯正器具の慢性的接触、温熱、ニコチンなどの様々な刺激
  • ウイルスやカビなど感染によるもの
  • 代謝、栄養の障害(ビタミンB2不足など)
  • 睡眠不足・過労・ストレスなどによる自律神経異常
  • その他(アレルギー・内分泌疾患など)

治療

  • 処方または市販のうがい薬、口腔錠、塗り薬などの薬物治療を行う。
    • 口腔軟膏や口腔錠を使用する場合は、最初に歯磨きをして口の中の水分をふき取ってから使用してください(多くても毎食後と寝る前に塗布する程度でよい)。
    • 症状が重い場合は、抗生剤、点滴、ステロイド剤を使用することもあります。
    • 海外では麻酔成分の入った口内炎の薬があるようですが、日本の薬局や医療機関では使用されていません。安易に利用するのは避け、受診をお勧めします。
  • 原因となる接触物を取り除く~義歯などによる接触を取り除くことで、症状が改善します。
  • 原因となっている病気(風邪、睡眠不足、治療中の大きな病気など)の治療を行う。
  • レーザー照射により、患部を焼却する。
    • 照射後に上記の薬を使用することで早期に痛みが和らぎ、治療効果が得られます。
    • 歯科でレーザー治療を行っているところがあります。

家庭でできる対策・予防

上記の治療の他に、次のことも心がけてみましょう。

食事

ビタミンB2は体の粘膜を健康に保つ働きがあると言われています。日ごろから肉や魚介類、牛乳、乳製品、卵、納豆などをバランスよく(一日に3~4品)摂取したいものです。これらを食べることで、必要なビタミンB2を自然に摂取できると言われています。
口内炎がある時はこれと共に体の抵抗力を上げるビタミンA(緑黄色野菜)やC(野菜や果物)を含む食品を取るといいでしょう。サプリメントを上手に取り入れてもいいですね。逆に粘膜を刺激する酸味や辛味、熱さの強いものは口内炎が治るまでは避けましょう。食物アレルギーが口内炎を起こすこともあります。様々な食品(チョコレート、ナッツ類、果物、小麦他)がアレルギーを起こしますが、採血で原因食品を調べることができます。原因の食品や成分を除去することで口内炎の発症を予防することができます。

口の中の環境

入れ歯や歯の矯正装置があっていない時に、口の中を傷つけてしまうことは原因でも述べました。定期的なメンテナンスを心がけましょう。また、入れ歯や矯正装置を使用していなくても食べ物はゆっくりよく噛み(唾液を多く出すことで口の中がきれいになります)、口の中は清潔を保つよう、心がけましょう。一般に口の中で細菌が多いのは舌の上と、頬と歯の間と言われています。隙間の洗浄が期待できるブクブクするうがいは清潔を保つのに効果的です。
歯磨きはどうでしょうか。清潔を心がけるために必要以上に力を入れてブラッシングをしていては口の中の粘膜を傷つけてしまい、本末転倒です。力を抜いて小刻みに歯ブラシを動かすことが効果的なブラッシングのポイントです。

生活全般

風邪をひいた時、疲れが溜まっている時にも口内炎を起こすことがあります。日ごろから睡眠不足やストレス状態が続かないようにして、無理をしないことも大切です。アルコールやタバコも口内炎が治るまでは控えましょう。

その他

口の中の病気は口内炎の他に、区別をして気をつけたい病気もあります。
原因不明の難病で初期症状に口内炎を起こす「ベーチェット病」、舌にできる悪性腫瘍「舌がん」、舌の粘膜の一部が白く硬くなる「白斑症」、できものや腫れがないにも関わらず舌がピリピリと痛む「舌痛症」など、疾患に応じた専門の治療が必要となります。
口内炎は通常は先に述べたとおり、1~2週間で治ります。ただ、中には治りにくいものや、再発を繰り返す場合もあります。その際は、原因は何であるか、全身的に探さなくてはなりません。
治療してもなかなか治らない口内炎は、耳鼻科を受診して医師の診察を受けるようにしましょう。

参考文献
標準耳鼻咽喉科・頭頸部外科学第3版(医学書院)
標準口腔外科学第3版(医学書院)
今日の耳鼻咽喉科頭頸部外科治療指針第2版(医学書院)
口の痛み歯の痛み(医歯薬出版株式会社)
難病情報センターHP
監修
救急救命東京研修所 教授 名倉 節

●情報提供:T-PEC保健医療情報センター

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