知っておきたい!健康と医療 今月のテーマ『C型肝炎』

C型肝炎ウイルスに感染して起こるC型肝炎は、慢性化しやすく、放置しておくと肝硬変や肝がんに進行するおそれがあります。今回は21世紀の国民病とも言われているC型肝炎についてお話しましょう。

C型肝炎とは

C型肝炎はC型肝炎ウイルスの感染によって起こる肝臓の病気です。肝臓は「沈黙の臓器」と呼ばれ、肝炎になっても自覚症状が出ないことが多いため、感染を知らずに経過すると肝硬変から肝がんへと病気が進んでしまっていることもあります。病気が進むと治療が難しくなるため、早めに検査して、感染していないか確認しましょう。

感染経路

C型肝炎の約半数が手術時の輸血や非加熱血液製剤などを介した輸血後肝炎で、残り半数が散発性肝炎と呼ばれる輸血以外の感染経路による肝炎です。散発性肝炎のほとんどが昔に受けた予防接種や針治療などが原因の血液感染と考えられています。
現在では輸血時の検査が確立し、また使い捨ての注射器が普及したことから、医療行為で感染することはまずないでしょう。問題になるのは、ピアスや入れ墨、覚せい剤などの回し打ち、あるいは不衛生な状態での鍼治療などです。また、性交渉による感染や母から子への感染(母子感染)はごくまれとされています。常識的な社会生活を心がけていれば、日常生活の場でC型肝炎ウイルスに感染することはほとんどないと考えられています。強いて言えば、歯ブラシやカミソリの共有は止めたほうがよいでしょう。

症状と経過

C型肝炎の場合、他の肝炎と比べても自覚症状はほとんどないと言われます。C型肝炎ウイルスに感染すると、約3割の人はウイルスが自然に排除されて治癒しますが、7割は徐々に病気が進行します。治療しないで放置すると10~30年でその3~4割が肝硬変、さらに肝がんに移行すると言われています。長期間の炎症で肝臓の細胞が壊れ、それを埋める形で線維成分が増加して、肝臓がかたくなった状態が肝硬変です。さらに進行すると、肝がんに移行します。日本人の肝がんの約8割がC型肝炎に起因していると言われます。また、多量の飲酒をする人や肥満がある人、高齢者などは通常より進行が早いとされています。

検査

1. まずは血液検査でC型肝炎ウイルスに感染しているかを調べます。

(1) HCV抗体検査(抗体の有無を調べる)

  • 陰性:感染していない
  • 陽性
    • 抗体量が多い:感染の可能性が高い
    • 抗体量が中程度~少ない:過去に感染したが、現在は治癒している可能性がある

(2) HCV-RNA定性検査(ウイルスの有無を調べる)

  • 陰性:過去に感染したことがある
  • 陽性:C型肝炎ウイルスが存在する(キャリア)状態

2. HCV-RNA定性検査が陽性だった場合は、肝臓の働きや状態を詳しく調べます。

(1) 血液検査・ウイルスの量(HCV-RNA定量検査)

  • 種類(遺伝子型1a、1b、2a、2b)
  • 肝機能検査 GOT(AST)GPT(ALT)
  • 血小板(病気が進行すると低くなります)

(2) 画像検査

エコー、CT、MRI、必要に応じて、腹腔鏡検査や肝生検なども行います。

C型肝炎の治療

HCV-RNA定性検査が陽性で、GOTとGPTに異常があれば、C型肝炎と診断されて治療することになります。これまではHCV-RNAが陽性でも肝機能の異常がみられない場合、経過をみるのが一般的でした。しかし、最近では肝機能が正常でも患者さんの年齢などを考慮して、治療を開始することもありますので、専門医へ相談しましょう。

1. インターフェロンを中心とした治療

体内からウイルスを排除することを目標に行われます。日本人にもっとも多い1b・高ウイルス型は治りにくいとされますが、この10数年で治療法は大変進歩してきました(ペグインターフェロンとリバビリンの併用療法)。

(1) インターフェロン
ウイルスの増殖を防ぐ薬です。薬の効果が長く続かないため、週3回の注射が必要です。
(2)ペグインターフェロン
従来のインターフェロンの改良型で、血液中でゆっくり分解するように作られており、通常は週1回の注射で済みます。副作用が少ないという利点もあります。
(3) リバビリン
ウイルスを攻撃する薬です。C型肝炎に対してリバビリン単独では効果が見られませんが、インターフェロンやペグインターフェロンと併用することで効果が期待できます。毎日内服します。

2. 肝がんへの進行を防ぐ治療法

もし、副作用で治療が続けられなかったり、治療でウイルスが排除されなかったりした場合は、肝臓の炎症を抑えて肝がんへの進行を抑制する治療が行われます。また、残念ながらインターフェロンの治療を受けてウイルスが排除されなかった場合でも肝がんの発生率が下がることが分かっています。

(1) インターフェロン少量長期療法
インターフェロンを通常の1/2程度の量にして、長期間使用します。
(2) 肝庇護薬による治療
肝炎の沈静化を目的として肝機能改善する効果のある強力ミノファーゲンC(注射薬)または、ウルソデスオキシコール酸(内服薬)などを使います。
(3) 瀉血療法
C型肝炎になると、肝臓に蓄えられる鉄が増えて炎症が悪化する場合があります。その場合、採血を繰り返すことで血液中の鉄を減らします。また、肝臓に鉄が過剰に蓄積している場合、食事からの鉄分摂取も控える必要があります。

インターフェロンの副作用について

  • 初期症状1~2週間:発熱(38~39℃)、頭痛、筋肉痛、関節痛、下痢、倦怠感
  • 中期症状2~12週間:吐き気・嘔吐、食欲不振、視力障害、皮膚のかゆみ、不眠
  • 後期症状2~3ヶ月以降:脱毛

まれに、間質性肺炎、うつ症状、脳出血、脳梗塞などが起こることもあります。症状が重篤になる前に、治療中は常に副作用の出現についてチェックを行います。

インターフェロンの治療費について

健康保険が適応されますが、年間で約300万円程度、自己負担が80万円程度かかります。自己負担が高額になった場合は、高額療養費の対象となり、一定の基準額(1ヶ月あたりの自己負担額限度)を超える部分が保険から支給されます。この基準額は一般的には72,300円を超えた医療費の1%を加えた額となります(高額所得者、または定額所得者については金額の基準が異なります)。実際に給付を受けられるかどうかや申請方法などについては加入されている医療保険の保険者にお問い合わせください。

おわりに

C型肝炎は肝がんに進行しない限り、命にかかわることはほとんどありません。感染に早く気づき、適切な治療を受けることが何よりも大切と言えるでしょう。

参考文献
新版C型肝炎B型肝炎(主婦の友社)
C型肝炎診療ガイドライン(医学書院)
慢性肝炎の治療ガイド2008(文光堂)
監修
救急救命東京研修所 教授 名倉 節

●情報提供:T-PEC保健医療情報センター

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