知っておきたい!健康と医療 今月のテーマ『後期高齢者医療制度(長寿医療制度)』

平成20年4月より、老人保健制度に代わる新しいしくみである「後期高齢者医療制度」が始まりました。高齢者世代と現役世代が医療費を公平に担い、継続可能な医療制度を構築することをねらいとしていますが、制度そのものへの反対意見や、保険証が届かない、保険料の算定額が間違っているなどのトラブルもあり、混乱が続いています。何がどのように変更になったのか分かりにくいという声も多く聞かれますので、今回は3月までの老人保健制度と後期高齢者医療制度の違いについてお話ししましょう。

制度の運営

3月までは、本人または被扶養者として国民健康保険や被用者保険(※1)などの医療保険に加入したまま市町村の「老人保健制度」で医療を受けていましたが、4月からは加入していた医療保険からは脱退し、独立した「後期高齢者医療制度」に加入します。すべての市町村が属している都道府県の「後期高齢者医療広域連合」がその運営にあたります。財政面は、75歳以上の方の医療にかかる総費用のうち、受診された時に窓口で支払う負担分を除いた分の1割を高齢者の方からの保険料、4割を現役世代からの支援金、5割を国や自治体が負担する形で運営されます。

  • ※1政府管掌健康保険、組合管掌健康保険、船員保険、各種共済組合などの総称です。

役割分担

広域連合
保険料の決定、給付事務など後期高齢者医療を運営するために、都道府県ごとに新しく設立された特別地方公共団体です。その区域内の市町村すべてが加入しています。
市町村
保険証の引渡し、保険料の徴収、住所変更や給付申請などの受付は、お住まいの市町村が窓口となります。

被保険者(対象となる方)

  • 75歳以上の方すべて(75歳の誕生日の当日から)
  • 65歳以上75歳未満の方で一定の障がいがある方(申請し認可された日から)
  • 生活保護受給者は対象になりません。
  • 一定の障がいがある方については、個々の状況(保険料・窓口で支払う自己負担額など)によって、後期高齢者医療制度へ加入した方が、最終的な負担額が多くなる場合があります。中には、後期高齢者医療制度に加入しないと、障がいがある方対象の医療費助成を受けられない自治体もありますので注意が必要です。3月までに障がいがあり老人保健制度に加入されていた75歳未満の方は、自動的に後期高齢者医療制度に移行されていますが、手続きすれば脱退可能です。詳細は市町村の窓口でご確認ください。
  • 被用者保険に加入していた本人が、後期高齢者医療制度の対象になった場合、その扶養家族の方(例:夫が75歳になり、夫の扶養家族として被用者保険に加入していた妻)は、新たに国民健康保険などに加入しなければなりません。

保険証

保険証(後期高齢者医療被保険者証)は1人に1枚交付されます。75歳の誕生日までに、市町村よりほとんどが郵送でお手元に届けられます。もし届かない場合は、必ず市町村の窓口にお問い合わせください。また、事前のお申し込みで窓口での手渡しも可能な場合もあります。ご希望の方は市町村の窓口にお問い合わせください。保険証の大きさは、名刺サイズのものと、葉書よりやや小さめサイズのものがあり、都道府県によって異なります。

  • 3月までは、それぞれが加入されている医療保険の「保険証」とは別に「老人保健医療受給者証」があり、医療機関の窓口では2枚提示していましたが、4月以降は後期高齢者医療の保険証1枚のみとなりました。

保険料

後期高齢者医療制度の被保険者全員が保険料を負担します。全国平均で月額約6,000円と言われていますが、広域連合ごとに算出されますので、お住まいの各都道府県により保険料が異なります。保険料は、原則、年金から天引きされます。ただし、年金額が年額18万円未満や介護保険料と後期高齢者医療制度の保険料が年金受給額の2分の1を超える場合などは、口座振替等により個別に納付します。

  • 3月までは、個別に国民健康保険や被用者保険に保険料を納めていました。被用者保険の被扶養者(例:息子の会社の健康保険に扶養家族として加入していた方)は保険料の負担はありませんでした。

計算方法

  • 保険料=均等割額+所得割額
  • 均等割額:被保険者全員が負担する額
  • 所得割額:それぞれの所得に応じて負担する額(総所得金額等-基礎控除額33万円)×所得割率

減額措置

所得の低い方
世帯所得に応じて保険料の均等割額の7割・5割・2割が軽減されます。
加入前日まで、保険料の負担のなかった被用者保険の被扶養者だった方
最初の2年間は所得割がかからず、均等割額が5割軽減されます。また、これらの方は、平成20年度は特例として保険料が9月まで徴収されません。その後の半年は均等割額の1割の負担となります。

医療費の自己負担

医療機関での窓口負担

病気やけがで受診した時は、かかった費用の1割が自己負担になります。ただし、課税所得145万円以上などの現役並みの所得がある人は3割負担となります(3月までと同じです)。

  • 高額医療費など、他の給付の内容も変更ありません。

おわりに

2006年に始まった医療制度改革の大きな流れの中、その1つとして誕生したのがこの制度です。他にも医療に関するしくみが順次改定されていますが、様々な議論があり今後どのようになっていくか見守っていく必要があります。生活に密着したことですので、関心をもっていただき、不明な点についてはお住まいの市町村の高齢者医療担当課や都道府県の後期高齢者医療広域連合、厚生労働省にお問い合わせください。

参考文献
医療制度改革に関する情報(厚生労働省ホームページ)
後期高齢者医療制度のしおり(大阪府後期高齢者医療広域連合)
監修
救急救命東京研修所教授 名倉 節

●情報提供:T-PEC保健医療情報センター

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