知っておきたい!健康と医療 今月のテーマ『外反母趾』

外反母趾とは、靴などの履物により、締め付けられることで足の親指が変形してしまう状態を指します。特に女性に多くみられ、ハイヒールを長時間履いている場合になりやすいと言われています。症状が進むと歩行や起立のたびに痛みを感じるようになり、日常生活に支障をきたします。外反母趾は靴の選び方などで十分に予防ができます。今回は現代病とも言われている外反母趾についてお話しましょう。

外反母趾になる原因

女性の場合、男性に比べて関節が柔らかいこと、足の親指が人差し指より長い人が日本人に多いこと、ヒールのある先が細い靴で足指を圧迫していることが大きな原因と言われています。外反母趾は女性に多いとされていましたが、最近では子供や男性にもみられるようになりました。その原因として、足の親指が長いこともそうですが、両親が外反母趾であるなどの体質遺伝や、足の横アーチを形成している中足関節の靭帯が緩んでしまうことも原因です。緩みが起こる要因として、見た目重視で自分の足に合った靴を履かないこと、交通の発達により歩く機会が減ったことが大きいと言われています。

外反母趾の症状

外反母趾の症状は、大きく4つに分けられます。

第一段階(可逆期)
親指が反っているが、靴を脱いだり、マッサージなどをしたりすると元の位置に戻る状態。外反母趾の一歩手前の状態です。
第二段階(拘縮期)
靴を脱いだり、マッサージをしたりしても親指が元の位置に戻らない状態。筋肉や靭帯が縮んで拘縮が起きています。
第三段階(進行期)
親指の付け根の関節が内側に曲がっているため、歩こうとするだけで親指が反ってしまう状態。体重が親指にかかるため、自然に進行します。
第四段階(終末期)
親指が人差し指の下にもぐりこみ、親指の付け根の関節が脱臼している状態。このような状態では歩くのが困難になります。

外反母趾の予防

1. 足指関節のストレッチ

足指を自分の手でしっかりつかみ、足指の付け根の関節をしっかり曲げてぐるぐる回します。曲げる動作を10~30回(その痛みの存在などにより回数を調節しましょう)、ぐるぐる回す動作も外回し・内回しをそれぞれ10~20回ずつ行います。この運動は足指関節の可動域を広げ、靱帯や関節の柔軟性を高めます。

2.グーパー運動

足指をしっかり握りまた開く(じゃんけんのグーパー)動作を繰り返し行います。この時は、一つ一つの動作をゆっくりと、10~30回を3セットほど行いましょう。この運動により、萎縮した足指の筋肉や伸縮性を失って伸びきった靱帯を引き締め、足本来の機能(踏ん張る、踏みしめる、指先でしっかり蹴るなど)と構造(縦アーチ、横アーチなど)を回復させる効果が期待できます。

3. 正しい歩き方を意識する

かかと・小指の付け根・親指の3点が同時に着地する(足の裏全体を地面につける)ように歩き、指が上がるような歩き方をしないように意識しましょう。

4. 正しい靴選び

靴選びのポイント

  1. 1かかとに合わせて履き、指先に5ミリ~1センチ位余裕がある
  2. 2靴を履いて指が自由に動かせる
  3. 3履いて歩いた時に足の甲の部分と足先がぴったりして、爪が足先に当たらない
  4. 4靴は足がむくんでいる午後(夕方頃)に選ぶようにする

また、女性の方は、ファッションの面からもヒールのある靴を履きたいと思いますので、以下の条件を踏まえてヒール靴を選びましょう。

  1. 1つま先がスクエア型になっているもの
  2. 2ヒールが太めで足首がしっかりと安定するもの
  3. 3ヒールの高さは5センチ程にする
  4. 4結婚式などで履く場合は、式場でヒール靴に履きかえるなどして、履いている時間を短くする

外反母趾の治療

外反母趾の症状で受診する診療科目は、整形外科(足の外科)です。
治療として、保存療法と手術療法があります。

1. 保存療法

指の炎症をおさえる湿布の貼用、足の横のアーチを支える足底板(中敷のようなもの)の作成や、反った親指を挟むような矯正装具(テーピング)も処方してもらえます。

2. 手術療法

様々な対策をしていても症状が改善しない場合は、最終的な治療法として、手術療法があります。手術の方法は、外反母趾の状態により異なってきます。一般的に多い治療法としては、軟部組織矯正手術・中足骨骨切り手術・基節骨骨切り手術・関節固定手術・関節形成手術などです。
手術時間は術式によっても違いますが、1~2時間ぐらいです。外反母趾の手術後は、術後は足部から足関節までを約2週間固定し、その間は体重をかけないようにします。2週以降は固定を外して足底板を装着し、体重を少しずつかけ始めます。その間は、外反母趾が再発する危険があるので、歩行時に体重をかけて歩かないようにしなくてはなりません。術後2ヶ月ほどで、体重をかけて歩行もできるようになります。ただし、術後も靴に中敷を敷くなどの対策は必要です。

おわりに

外反母趾は、女性だけではなく男性や子供にもみられるようになってきました。親指が反っていないか、日ごろから自分の足の状態をよく観察しましょう。外反母趾予防対策を行っても症状が強まるようでしたら、我慢しないで早目に整形外科(足の外科)を受診しましょう。

参考文献
巻き爪・陥入爪・外反母趾を治す本(マキノ出版)
標準整形外科学(医学書院)
監修
順天堂大学医学部附属順天堂医院小児外科 古賀 寛之

●情報提供:T-PEC保健医療情報センター

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