知っておきたい!健康と医療 今月のテーマ『AED』

心臓が止まって倒れた人を救うAEDが急速に普及しています。駅やデパート、企業や学校など、多くの人が集まる場所で見かけるようになったAEDですが、果たしてどんな時に、どのように使うのでしょうか。今回はAEDについて目的と使用方法についてお話しましょう。

AEDとは

AEDとは医療に従事されていない方でもその場で救命活動ができる医療機器です。Automated・External・Defibrillatorの頭文字をとったもので日本語に訳すと【自動体外式除細動器】と言います。心臓がけいれんし、血液を流すポンプ機能を失った状態=「心室細動」となった心臓に対して電気ショックを与えることで、正常なリズムに戻します。

AEDの仕組み

高性能な心電図が内蔵されていて、AEDを装着するだけで心臓の動きを自動で解析します。その結果、電気ショックによる「除細動」を与える必要があるかどうかを自動で診断するため、ほとんどのAEDは音声ガイドに従うだけで誰でも簡単に操作ができます。電気ショックが必要ない場合にはボタンを押しても電気が流れませんので、操作を誤って電気が流れるようなことはありません。それでは、どのような時に電気ショックが必要なのか、「心室細動」「除細動」について詳しく説明しましょう。

電気ショックが必要な時~「心室細動」と「除細動」~

AEDによる電気ショックが必要な時は次のような時です。

  • 意識がない=呼びかけに応じない
  • 正常な呼吸(普段通りの呼吸)をしていない

例えば、心臓や呼吸がとまってしまう病気やけがとしては、

  • 心筋梗塞や脳卒中
  • プールや海などで溺れる窒息
  • 怪我などによる大量出血
  • 胸に強い衝撃を受けたことによる心臓しんとう などがあります。

元気だった人が突然倒れ、呼びかけにも反応なく、普段通りの呼吸をしていない場合に「心室細動」を起こしている可能性があります。心臓は全身に血液を送り出すポンプの役割をしているのですが、心臓は自ら発する電気刺激により心臓全体の筋肉がタイミングを合わせて動いています。「心室細動」を起こすと、心臓の筋肉の動きがバラバラになって小刻みにけいれんし、全身に血液を送りだせなくなってしまうのです。この時、心臓にAEDによって電気ショックを与えると心臓の筋肉のバラバラになった動きを鎮めることができます。これを「除細動」と言います。電気ショックを与えることで心臓の動きを正常に戻すのです。

それではAEDの使用手順について説明しましょう

倒れている人を見かけたらまず、

1. 意識、呼吸があるか確認を。なければ近くにいる人に「119番!AED!」
肩を軽く叩いて「大丈夫ですか」と呼びかけましょう。反応がなく、正常な呼吸(普段通りの息)がなければ119番通報し、救急車を呼ぶ必要があります。自分ひとりで対応しようとすると、正しい知識を持っていても焦ってパニックになってしまいます。近くの人に大声で知らせ、119番通報、そしてAEDを準備してもらいましょう。AEDが届くまでは心臓マッサージを行ってください。
2. AEDの装着
電源を入れ音声ガイドに従って操作をしてください。顔の横に置き、衣服を脱がしてパッドを右の鎖骨の下と左脇腹部分に貼ります。この時、貼り薬や貴金属は外しましょう。また、心臓ペースメーカーの膨らみがあれば2.5cm以上離して貼ります。
3. AEDが自動で心電図測定
AEDが自動で心拍数や心電図の変化を解析・判断し、必要な場合のみ電流を流します。心電図の解析中は、倒れている人には触れないようにしてください。また、心臓マッサージは正しく解析できない恐れがあるため中断しましょう。音声指示などに従い、通電ボタンを押します。その際、感電防止のために倒れている人には触れないでください。
4. 電極パッドは救急隊が到着するまで、はがさないでください。
しばらくたってAEDが「電気ショックが必要です」と変わる場合もありますので、電極パッドははがさないでください。
5. 救急隊到着までは心臓マッサージを
救急隊が到着するまでは心臓マッサージを行うとよいでしょう。掌の付け根を倒れている人の胸の中央(乳頭と乳頭を結ぶ線の真ん中)に置き、肘が曲がらないよう真上から胸が4~5cm沈む程度で圧迫します。1分間におおよそ100回のテンポで絶え間なく続けます。

AEDのQ&A

QAEDによる除細動は誰でも行ってよいのでしょうか。

A以前はAEDの使用は医師、看護師、救急救命士に限られていましたが、平成16年に一般の方の使用は医師法違反にならないとされました。正しい指導やガイドライン(指針)が示され、現在の普及にいたっています。AED使用を含めた救命講習などもありますので、受講してみるのもよいでしょう。

Q子供にもAEDは使ってよいのでしょうか。

A子供用の電極パッドが備わっていればそれを使いましょう。なければ大人のパッドで代用をしましょう。子供用パッドはAEDからの電気ショックの力を減らす機能があります。大人用パッドを子供に使用することについては2007年時点では法律上8歳未満の子供に対しての有効性、安全性が確認されていません。しかし、2005年の救急蘇生法の指針においては代用すべきであると明記されています。

Q電気ショックは何回行うのでしょうか。

A1回目の電気ショックによる成功率は十分に高いと言われています。一方、連続して行うと心臓マッサージの中断時間が長くなります。1回目で除細動に失敗した場合は2分間程度心臓マッサージを行った上で再度試みましょう。

QAEDの講習は受けられますか。

A一般の人(非医療従事者)でもAEDが使えるようになるための講習が実施されるようになりました。講習内容はAEDを含む心肺蘇生法を中心に 出血時の対処法(止血法)、けがや病気で自力では動けない方を運ぶ方法(搬送法)、骨が折れていると予測された際の骨折固定法などの基礎的な実技を行います。この講習は地域の消防署などで行っていますので、詳しくは地域の消防署や各自治体に問い合わせをしてみてください。

Q妊娠している女性に使用してもよいでしょうか。

A妊娠している女性に対してもAEDは使え、胎児に影響はないと言われています。心配停止に陥っている場合、母親と共に胎児の命にも血液が届かなくなりますので、素早い応急処置が必要です。

QAEDについて注意点を教えてください。

A倒れている人の体が濡れている時は、水分をタオルや布でふき取ってから電極パッドを貼り付けましょう。電気が水を伝わってしまい、AEDの効果が十分に発揮できません。また、倒れている人の胸毛が多いと、電極パッドが肌に密着しにくくAEDの効果が発揮できません。電気ショックを与えることによってやけどを負ってしまうこともあります。このような場合、予備の電極パッドがあれば、最初は脱毛目的でパッドを装着させ、すばやく胸毛ごと剥がして新しい電極パッドを付け替えましょう。また、AEDによっては胸毛を剃るための剃刀がセットされている場合があります。

QAEDを使用して、万が一亡くなられた場合、責任を問われることはないですか。

A2004年7月1日の厚生労働省通知により、救命の現場に居合わせた市民が救命のために行った場合、医師法上、民事上、刑事上、責任は問われないとされています。

素早い行動が命を救います

「心室細動」によって血液が全身に送られなくなると短時間で死にいたってしまいます。心室細動による救命率は倒れて1分後にAEDを使用すると90%、1分遅れるごとに10%ずつ減るとのデータがあります。119番通報から救急隊が現場到着するまで場所にもよりますが、5~6分要すると言われていますので、いかに素早いAEDの使用が必要になるかが数字上でもわかります。突然の心停止におそわれた方を救命するために必要な行為を『救命の連鎖』と言います。どれか1つ欠けるだけでも救命が難しくなってしまいますので、勇気をもって救命のための行動を取りましょう。

救命の連鎖

(1)早い通報
落ち着いて、はっきりと、119番への通報をする
(2)早い応急手当
救急車到着前に心肺蘇生法とAED
(3)早い救急処置
救急隊の処置とAED
(4)早い医療処置
医療機関における治療

おわりに

いざ!もしも!の時に今回のお話が、愛する家族や友人、見知らぬ隣の方の大切な命を救う手立てになればと思います。これを機会に普段からAEDがどこに設置されているか場所の確認をしておかれるとよいでしょう。

参考文献
改訂3版 救急蘇生法の指針(市民用・解説用)(へるす出版)
CPR+AEDコースマニュアル(医学書院)
監修
救急救命東京研修所 教授 名倉 節

●情報提供:T-PEC保健医療情報センター 発行

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