知っておきたい!健康と医療 今月のテーマ『日焼け止めの正しい使い方』

ひと昔前には、「夏、真っ黒に日焼けした子どもは、冬、かぜをひかない」などといわれたものですが、紫外線による日焼けが、シミ、シワなどの肌の老化の原因になるばかりでなく、長年紫外線を浴び続けることによって皮膚がんや白内障を引き起こすリスクがあることや、紫外線が皮膚の免疫反応を抑えてしまうことがわかり、いまや、「できるだけ浴びないようにすること」が世界的な常識となっています。

地上まで達するのはUV-AとUV-B

紫外線(UV:ultraviolet)は、波長の長いほうからUV-A、UV-B、UV-Cの3種類に分けられています。波長が短いほど健康などへの影響が強くなります。
UV-Cは、人体にとって影響が強く、とても危険です。しかし、大気(オゾン層、空気分子、雲など)で吸収されて地表には到達しません。
UV-Bは、ほとんどは大気で吸収され、ほんの一部が地表へ到達します。日焼けを起こす力ではUV-Aの600~1,000倍といわれ、肌の表皮に入って、肌が赤く炎症を起こしたり水ぶくれを起こしたりなどのいわゆる「日焼け(サンバーン)」の原因となったり、細胞の核内にあるDNAに傷をつけ、シミやシワ、皮膚がんの原因になります。
地上に達する紫外線のほとんどはUV-Aです。UV-Aは、UV-Bほど有害ではありませんが、皮膚のさらに深い真皮の部分まで入り、長期間のダメージの蓄積によるシミやシワ、たるみなどの光老化や皮膚がんの原因になります。

まずは、できるだけ紫外線を浴びないようにすること

日焼けをしてからのケアでは、その痛みを和らげることはできても、皮膚の老化などの長期的な予防効果はほとんど得られません。まずは、できるだけ紫外線を浴びない対策を第一に心がけましょう。
外出やスポーツなどの戸外での活動はできるだけ紫外線の強い時間帯を避ける、移動のときなども日陰を選んで歩く、日傘をさす、帽子をかぶる、サングラスをかけるなど直射日光を避ける、できれば長袖の衣服を着用することを心がけましょう。衣類は、色はより濃いほうが、生地はより厚いほうが紫外線の透過率は低くなります。UV加工がされているものは色や厚さに関係なく紫外線をカットしてくれます。

日焼け止めを効果的に使いましょう!

顔や首、手などの衣類で覆うことのできない部分には日焼け止めを塗るのが効果的です。

SPFとPA

日焼け止めには、UV-AとUV-Bの2つの紫外線を防ぐ効果のあるものが一般的ですが、防ぐ効果の程度の目安として、SPFやPAの表示があります。
SPF(sun protection factor)は、UV-Bを防ぐ効果を2~50までの数値で表しています。通常、なにもつけない状態で夏に20分間紫外線に当たると翌日赤みがでる人が、たとえばSPF30の日焼け止めを塗った場合、20(分)×30(SPF)=600(分)から、600分間紫外線に当たって初めて翌日赤みがでるという意味です。
PA(protection of UVA)は、UV-Aを防ぐことを目的に、その効果の目安を記号(+)の数で表します。PA+は「UV-A防止効果がある」、PA++は「UV-A防止効果がかなりある」、PA+++は「UV-A防止効果が非常にある」です。

目的に合った選び方

日焼け止めの肌への影響は、SPFやPAの値が上がるほど強い刺激となりますから、目的に合わせて、賢く日焼け止めを選びましょう。

SPF PA 用途の例
~20 散歩、買い物などの日常生活
10~30 ++ 屋外での軽いスポーツ、レジャーなど
30~50 ++~+++ 炎天下でのレジャー、リゾート地でのマリンスポーツなど
50~ +++ 非常に紫外線の強い場所や紫外線に過敏な人など

(参考資料:日本化粧品工業連合会)

日焼け止めには、「紫外線散乱剤」と「紫外線吸収剤」がある

日焼け止めには、紫外線を肌の表面で反射して日焼けを防ぐ「紫外線散乱剤」(UV-AからUV-Bまで広く遮断)と、紫外線を肌の表面で吸収することで化学変化を起こし紫外線を防止する「紫外線吸収剤」(UV-Bをよく吸収するが、UV-Aを効果的に吸収する成分は限られている)の2種類のタイプがあります。強い遮断力が欲しいときは吸収剤が入っているほうがより効果がありますが、吸収剤の化学変化に肌が負けてまれにかぶれを起こすことがあります。吸収剤でかゆみや赤みを生じたら、ノンケミカルや吸収剤未使用と表示されている散乱剤だけのものにしてみましょう。

2~3時間置きにこまめに塗り直しましょう!

PAとSPFの値は、日焼け止めを1cm2当たり2mgずつ皮膚に塗ったときの効果の度合いを示しています。実際にこの量を塗ると肌が白っぽくなることもあるため、たいていの人はこの量より薄く塗っているというのが現状ですが、塗る量が少なければ期待どおりの効果は得られません。また、水や汗で流れたり、衣服が顔に触れたりして取れてしまうこともあります。日焼け止めのSPFやPAの数値を過信したり、一度、塗ったからと安心していると、思わぬ日焼けをしてしまいます。効果を持続させるためには、2~3時間置きにまめに塗り直すことが大切です。
特に、額、鼻、頬は日焼けしやすい部位ですから、丁寧に重ね塗りしましょう。また、耳の後ろ、首筋、肩、手の甲などの塗り忘れしやすい部位もしっかりと。唇にはUVカット効果のあるリップクリームを使うとよいでしょう。
日焼け止めを塗ったままにしておくと、かえってシミや小ジワなどの肌荒れの原因になります。寝る前にはクレンジングなどできちんと洗い落とすことが重要です。特にウォータープルーフなどの水対応の日焼け止めには、落ちにくいものは専用のクレンジングを使ってしっかり洗い落として手入れしましょう。

参考資料
『紫外線 環境保健マニュアル2008』(環境省)
『上手に選ぼう 日焼け止め化粧品』(東京都福祉保健局健康安全部食品医薬品情報係)
文責
社会保険研究所©

●ティーペック株式会社 発行

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