知っておきたい!健康と医療 今月のテーマ『環境の変化に伴うストレス』

環境の変化に伴うストレスに対応する

厳しい経済状況におかれている昨今。長引く不況による倒産やリストラ、急激な情報化による社会環境の変化やそれに伴い複雑化する人間関係など、現代社会で働く人々は365日、日々ストレスに囲まれて生きているといっても過言ではありません。
近年、ストレスによって心に不調をきたし、心の病気にかかったり、やむを得ず休職したりする人が増えていることが社会問題となっています。不調のサインを見逃さず、上手にケアする方法を身につけておきましょう。

体の不調は心の不調かも

ストレスとは、心に受けた外的刺激によって生じた精神的緊張、つまり心の歪みのことです。心の病気と深い関係があるといわれています。
ストレスのもととなるのは、社会環境や職場環境の変化、人間関係の変化、家族の死亡などの喪失体験などさまざまです。特に近年は、高度化された次々と開発される新しい技術に追いついていくことへの焦燥感や、厳しいノルマに対する重圧感、大量のリストラによって増えた仕事量への疲弊など、社会が抱える歪みからくる現代社会特有のストレスが生じています。大なり小なり、ほとんどの人が何らかのストレスを抱えているといってもいいのではないでしょうか。
私たちの体は、外的刺激によってストレスを感じると、それに対抗しようとして、血圧、血糖、体温を上昇させます。短期間のストレスであれば、この状態は活力を生んで、仕事をはかどらせたり、よいひらめきを生むことにつながることもあります。しかし、ストレスを長期間継続して受けていると、しだいに免疫機能、内分泌機能や神経の働きに異常を生じ、体が不調を訴えるようになります。片頭痛、気管支喘息、胃潰瘍、高血圧、糖尿病などの病気はそうした機能不全の現れでもあります。
さらに体の不調は脳へと伝わります。生命維持に大切な役割を果たしている視床下部の働きを弱め、体の不調はますます深刻になり、うつ病、神経症、心身症などの心の病気につながってしまうのです。
そうならないためには、できるだけ早い段階で、体の不調から心の病気の前兆をとらえ、対策をとることが大切です。眠れない、やる気がいまひとつ起きない、イライラして周囲に当たり散らしてしまう、などの症状も前兆のひとつです。いつもと違うなと感じたときは、ストレスが限界を超えたサインかもしれません。けがや病気のときに体を安静にして回復を待つのと同じように、心身をゆったりと休め、心の健康の回復に努めましょう。

自分なりのリラックス法をみつけて、心を上手にケア

熱中できる趣味などを持っている人は比較的ストレスや困難な状況に強いといわれます。何かに熱中している時間を持つことで、頭や心のONとOFFの切り替えがうまくでき、ストレスを忘れたり、軽減することにつながるからだといわれます。
特に趣味を持っていない人や趣味の時間がなかなかとれない人でも、毎日の生活のなかでできる自分に合ったリラックス法が必ずあるはずです。それが何かをみつけて、疲れた心を上手にケアしてあげましょう。
以下に、いくつかリラックス法を紹介します。自分に合いそうなものがあったら、ぜひ、試してみてください。

ぬるめのおふろに半身浴

38~40度のぬるめのお湯に20~30分、胸から下までつかる入浴法です。体にかかる水圧が少なく、心臓や肺に大きな負担をかけることなく入浴ができます。半身浴では、重力によって下半身にたまった血液を緩やかな水圧によって心臓に戻し、リラックスしたときの血流の流れと同じ状態にしてくれます。また、体や脳の休息に働く副交感神経が活発になるため、心身はリラックスした状態になります。

アロマテラピー

植物の花、葉、果皮、樹皮、根、種子、樹脂などから抽出した精油(アロマオイル)を使って、さまざまな不調を緩和させる療法です。アロマオイルの香りの分子が鼻の奥の嗅細胞で電気信号に変えられ、神経系を伝って脳の視床下部へ伝達されます。アロマオイルは、心身のバランスをとるためにとても重要なこの視床下部に働きかけるのです。おふろに数滴たらしたり、まくら元にアロマポットを置いたりするのもよいでしょう。

ハーブティ

ハーブの香りの効果と、飲むことによる薬理効果の両方を得ることができます。ストレスや緊張を緩和してリラックス効果のあるもの、心と体に活力を与えてリフレッシュ効果のあるものなどいろいろあります。

ストレッチ

ほんの少しの時間を利用してできる疲労解消法です。体を伸ばして滞った血行を促進し、緊張している筋肉をほぐすことで、心身のリラックスが得られます。

つぼ・マッサージ

人の体には、360ヵ所ものつぼがあるといわれています。つぼを刺激することで血液の流れを促して代謝がよくなり、体の疲れを緩和してくれます。

ヒーリング・ミュージック

川のせせらぎや波の音などの自然の音は、心と体をリラックスさせてくれます。これはリラックスしたときに人の脳から出るα波という脳波が音によって引き出されるからです。体も心も疲れたときや、眠れないときなどにきいてみてはいかがでしょう。

小説や映画で心を開放

「笑う」には、副交感神経の働きを高め、血圧を下げ脈拍を落ち着かせる効果があります。また、「泣く」にも、気持ちを落ち着かせる働きがあることが最近の研究でわかってきました。ときには、小説を読んだり、映画を観たりして、泣いたり笑ったり、思いっきり心を開放してみましょう。

心の健康に大切な睡眠

睡眠には、体の疲れをとるだけではなく、脳や神経を休ませて、健康に欠かせない自律神経や内分泌系、免疫系の機能を整え、心身のバランスを安定させるという働きがあります。睡眠不足になると、体内リズムが乱れ、健康を害するうえに、心の病気の原因にもなります。睡眠時間を惜しんで多忙な毎日を過ごす現代人ですが、忙しくストレスが強い人ほど、体と脳をリフレッシュさせる睡眠が必要なのです。

仕事中、胃がきりきりと痛む経験のある人は大勢いるのではないでしょうか。私たちの体は、強い心理的な刺激に即座に反応し、「心がいままさにストレスを受けている」というサインを出してきます。体は心よりも正直です。
正直者の体とは逆に、心はなかなか厄介で難しいものです。「まだ大丈夫。まだまだできる。がんばれ、自分!」と自分で自分に無理をさせてしまう人も多いはずです。いま何に対してストレスを感じているのか、そのストレスに対してどう反応しているのか、無理はしていないかなど、時々自分の心と深く、そして素直に向き合ってみてはどうでしょう。
文責
社会保険研究所©

●ティーペック株式会社 発行

サイドメニュー