知っておきたい!健康と医療 今月のテーマ『家族がアルツハイマー型認知症と診断されました。今後どのような症状がおこるのでしょうか。』
アルツハイマー型認知症は、認知症の中でも一番多いもので、通常、物忘れから始まります。加齢に伴い物忘れは誰しもにみられるものですが、加齢による物忘れは体験の一部を忘れてはいますが、きっかけがあると思い出すことができます。一方で、認知症の方の物忘れは体験したこと自体を覚えておくことができず、ヒントやきっかけがあっても思い出すことができないのが特徴です。
アルツハイマー型認知症では徐々にではありますが、次第に記憶力が低下し、今がいつなのか、自分がどこにいるのかが曖昧になってきます。少し前に起こった経験そのものを覚えておくことができなくなるため、何度も同じことを質問する方も少なくありません。
認知症症状のうち、記憶力の低下や時間・場所が分からなくなるなどの症状を、認知症の「中核症状」といいます。認知症の「中核症状」はほとんどの方にみられるものです。
物忘れや時間・場所を認識する力、判断力の低下にしたがって、アルツハイマー型認知症ご本人の戸惑いは増していきます。日常生活の中でこれまで当たり前にできていたことがスムーズに行えなくなったり、覚えていたはずのことがわからなくなったりすることで不安を感じるのは自然な反応でもあります。中には、感情のコントロールが難しくなり、イライラして怒りやすくなる、逆に意欲の低下が目立つ場合もあります。
アルツハイマー型認知症の初期には、記憶力・思考力・判断力の低下によって、大切なものが見当たらない場面で物を盗まれたと主張する被害妄想がみられる方も少なくはありません。
一方、このような中核症状ではない様々な「周辺症状(行動・心理症状)」が現れたりすることがあります。周辺症状はすべての方にみられるわけではなく、環境や家族の接し方によって、軽くなったり、強く現れたりすることもあります。
日常生活で生じやすい症状を以下にまとめました。ただし、このような症状があるからといって必ずしも認知症であるとは限りません。気になる症状があれば、お早めに専門医に相談されることをおすすめします。
1.中核症状
- 数分前、数時間前の出来事を忘れる
- 同じ内容の話や質問を繰り返す
- 財布や鍵の置いた場所を思い出すことができない
- 日付や曜日が分からなくなる
- スイッチの消し忘れが増える
- きちんと薬を飲むことができなくなる
- 季節に合った服装を選ぶことができなくなる
- 仕事や家事の要領が悪くなる
- 通いなれた場所で道に迷う
2.周辺症状(行動・心理症状)
- イライラする場面が多くなる
- 些細なことで腹を立てることが多くなる
- 今までの日課をしなくなる
- 誰もいないのに誰かいると主張する
- 自分のものを誰かに盗まれたと主張する
- 無目的に屋外に出て歩き回る
●東京海上日動メディカルサービス 発行