FPによる知って得する!くらしとお金の話

第1回

給与天引きされている社会保険料ってなに?なんかムダじゃない?

コープ共済について

2021年7月

社会保険料が給与から引かれていても「そういうものだから」とあまり考えずにいませんか?でも実は結構いろいろなシーンで役立つ制度なのに、知らずにいてもったいないことがあります。社会保険のナカミを知って、賢く人生設計に活かしていきましょう。

今回は各制度の概要を理解することを目的に、知っておいて欲しいお役立ち制度をいくつか紹介しましょう。

1.天引きされている4種類の社会保険の役割を言えますか?

給与からは社会保険料や税金などがあらかじめ引かれていて手取りは結構少ないですよね。その中でも社会保険は国の制度のため原則として自分の意志で払う・払わないを決めることができません。なぜかというと社会全体でお金を出し合って、困ったときにお互いに助け合えるようにしようという大切な制度だからです。

出し合うお金(保険料)は基本的には給与に応じて決まります。高収入の人は負担が多く、少ない人は負担が軽くなります。

社会保険の制度名とそれぞれおもな役割は図表1にありますが、この他にも様々なサポートがあるので知っておくといつか役に立つかもしれません。

図表1 給与から引かれているいろいろな社会保険

  制度名 おもな役割
1 健康保険 病気やケガでの医療費
2 雇用保険 失業したときの収入
3 厚生年金保険 老齢、障害、遺族の収入
4 介護保険(40歳から) 老齢期の介護費
5 労働者災害補償保険 仕事上の病気やケガの際の補償

2番・5番は正確には「労働保険」といいますが、まとめて社会保険と呼ばれることもあります。

表の中のすべての制度は従業員を守るためのサポート制度ですが、保険料が給与から引かれるのは1~4までで、その保険料も半分は会社が負担しているため、自分で払うのは半分で済みます。

また、5番の労働者災害補償保険(労災保険)の保険料は全額会社が負担しています。

2.病気やケガのときに役立つ健康保険、公的年金

社会保険の中で一番身近な「健康保険」は、保険証を持っていれば病院で本来の医療費の3割(年齢や収入により2割、1割の場合もあります。以降3割を基本に進めます)だけ払えば治療を受けられるというものです。

しかし大きな病気やケガなどで手術をしたり長期の入院をしたりすると、3割負担で済んだとしても医療費がかなり高額になることは避けられません。このため、1ヶ月間に一定額以上(給与28万円程度であれば1カ月におよそ9万円弱)の医療費負担があった場合は、その一定額を超えた部分のお金を健康保険から戻してもらえる「高額療養費」という制度があります。

またそういった場合は仕事も休まざるを得ず給与がもらえない可能性もあります。そのときは「安心して療養し、ちゃんと治して戻っておいで」ということで、連続3日以上休んだら4日目から最長1年半もの長い間にわたり、休んだ日数ごとに過去12か月の平均給与の2/3を受け取れる「傷病手当金」という制度もあります。

この制度は健康保険に加入していないフリーランスや自営業者等にはない会社員ならではのメリットです。

ところで1年半で治ればよいのですが、もしも重い症状のまま治らなかったらつらいですよね。

重い障害があり仕事をするのが非常に難しい場合には「公的年金」「障害年金」が助けになります。

これはたとえば20歳などの若い年齢でも受け取れる年金で、その障害の状態が継続している間一生受け取れます。

マスコミなどで取り上げられる公的年金の話題は主に老後の年金のため、若い時期は役に立たないと勘違いされることもありますが、実はがんや精神の病気など若い人も該当する幅広いケースがサポートされています。

ではちょっと気が重い話はこの辺にして、日常の範囲内でも使える制度を紹介しましょう。

3.キャリアアップやキャリア維持に使える雇用保険

会社でのキャリアアップ&給与アップを図りたい時は資格取得などが効果を発揮することもあります。

「雇用保険」に3年以上(初めての時は1年や2年)加入していると「教育訓練給付」という、専門学校の学費等が一部あとから戻ってくる制度が3種類(受講料の20%・10万円限度~50%・年40万円限度)あります。

一番使いやすい「一般教育訓練給付」は簿記といった定番の資格はもちろん、ITスキル、ソムリエやカラーコーディネーターなど幅広い講座が対象になっています。ハローワークのサイトで専門学校やコースなどを調べられるので、興味があれば見てみるとよいでしょう。

長い会社員人生の中では、子供の誕生や介護で「両立が難しいから退職しようかな、どうしようかな」と迷うタイミングがあるかもしれません。そんなときに「育児休業給付(原則最長1年)」「介護休業給付(最長93日)」で、仕事はお休みしつつも1日につき給与の約67%(育休181日目からは50%)を受け取れる制度があります。

退職してしまうと、再就職で元の給与と同レベルを得るのはキツイことがありますから、「しばらくお金はサポートするから退職せずに戻っておいで」という制度です。

そうは言っても退職することもあるわけで、そのときには「基本手当(俗に失業手当)」で一定期間、元の給与の45%~80%(元の給与が平均して20万円/月程度なら、基本手当は月額13.5万円程度(退職が60歳より若い人))受け取れます。

雇用保険は基本的には「退職しない」「能力アップして安定した会社員ライフを」という目的で作られているため、退職した後の基本手当以外にも、人生の中でいつか役に立つ可能性がある制度が組み込まれています。

4.お金を稼げないときなどに役立つ公的年金

年金というのは「年間◯◯万円」といった具合に、1年間に決まって受け取れる金額を定めた制度の総称です。

国が行っている制度は「公的年金(国民年金・厚生年金保険)」と言われ、会社員は厚生年金保険・国民年金両方の加入者となります。保険料は厚生年金保険がまとめているため給与明細には国民年金の名前は出ていません。

公的年金制度はざっくりいうと「お金を稼ぐのが難しくて生活に困る」ときにサポートしてくれる制度です。

たとえば先ほど紹介した「障害年金」です。

このほか高校卒業前の子どもを残して親が亡くなってしまったときには、残された遺族が生活に困る可能性がありますから、そのサポートとして遺族が「遺族年金」を受け取れます。

老齢期は体が若い頃ほど動きにくいなど、思うように働けず収入を得にくいことが想定されますので、そのサポートとして「老齢年金」があります。

5.まとめ

健康保険や雇用保険、公的年金、いずれも生活の基礎的な部分や一部をなんとかサポートするので自分でも頑張って!という位置づけです。しかしどれも国のサポートなしですべてを自前で準備するのは到底無理な金額・しくみのため、社会保険という全員で全員をサポートする制度になっています。

制度の活用にはそれぞれに要件(例:加入歴1年以上など)があります。要件や制度の内容は改正されることもありますから、長い人生の中で、こういう時はこういうサポートがあるかもしれないというヒントとして頭の片隅に入れておき、もしもの時は改めて制度や要件を確認するという流れで活用してください。

今回は概要をざっくり理解することを目的に、他の給付制度や受給に必要な要件、制度の詳細には触れていません。興味のある項目があれば各制度のサイト等を確認してみましょう。

中村 薫(なかむら・かおる)
ファイナンシャル・プランナー(CFP®)、社会保険労務士、終活カウンセラー、キャリア・コンサルタント
信用金庫勤務、生命保険営業、損害保険代理店での業務を通して、ふつうの人と業界との情報格差を実感。老後資金の心配を軽減するためには公的年金の理解も必須と社会保険労務士になり、年間約800件ほどの公的年金手続き・相談業務に携わる。
FP相談ではお一人様女性やリタイヤ前世代のライフプラン相談を得意とする。
企業での退職前研修、年金セミナー、雑誌やネットでの執筆など多数。

「知って得する!くらしとお金の話」コラム 一覧はこちら

こちらもおすすめ

サイドメニュー