FPによる知って得する!くらしとお金の話

第1回

あなたのココロは癖だらけ!~誰もが陥る行動経済学を大研究①~

コープ共済について

2021年11月

コロナ禍の時代、少子・高齢社会の進展、社会保障の増加、異常気象や天災、国の安全保障問題など、将来が見通しづらく、不安になる材料が増している現在だからこそ、老若男女、お金や健康の管理を意識している人は非常に多くなっています。その反面、気が付けばついつい買い過ぎ・食べ過ぎ・契約し過ぎなど、後悔の念や損をした悔しさなどを味わった人は、意外と多いのも事実ではないでしょうか。

では、しっかり管理していると思っている自分が、なぜそのような行動をしてしまったのでしょうか。実はその行動こそが、「人は必ずしも合理的に行動しない」ということに着目した、新しい経済学の行動経済学なのです。これから3回の「誰もが陥る行動経済学を大研究」連載を通して、自分のココロの癖や弱い部分を知り、消費や貯蓄や投資などで、お金の使い方を間違わず、しっかり選択できる人になれれば幸いです。

第1回目は、経済学と行動経済学の違い、ノーベル賞を受賞した注目の学問であり、代表的理論を日常生活に具体的に当てはめ、なるほど、この動きが行動経済学かを実感。最後はだまされやすさを測り、自分の合理的でない項目を分析し、少しでも行動経済学を意識した生活スタイルを心掛け、賢い消費者に変貌しましょう。

行動経済学とは

行動経済学を優しく説明していきますと、経済学と心理学を合わせた学問です。これまでの経済学は、人は経済的合理性に基づいて行動し、自己利益を追求する性質を持つという定義のもとに成り立っていました。個人主義者としての「経済人(ホモ・エコノミクス)」という人間像をつくり、自分の利益を最優先し、その利益を確実に得るために合理的な行動を取る、と定義されてきました。

それに反し、実は人は必ずしも合理的に行動しているわけではないのです。ついつい考えず衝動的にあまり利用しないモノを買ったり、食べ放題で元を取ろうと食べ過ぎて調子を悪くしたり、利用しないスポーツジムに会費を払い続けたり、金銭的な利益は一切ないボランティア活動を進んでしたり、このような人間の不合理さを、心理学も合わせて解き明かしてくれるのが行動経済学です。

簡単に言うと、合理的に行動する人間=合理的経済人の研究が経済学、感情や癖に従って非合理的に行動する人間=非合理的経済人の研究が行動経済学、といったイメージになります。

ノーベル経済学賞受賞

2002年に心理学者のダニエル・カーネマン氏が、行動経済学のプロスペクト理論でノーベル経済学賞を受賞し非常に注目されました。その後、2013年には行動ファイナンスで功績のあったロバート・シラー氏が受賞(彼は不動産バブルを予測したことが大変有名で、投資家の心理が一方向に傾くと、不動産バブルが起きることを研究した人です)。そして2017年にやはり行動経済学のナッジの理論を解明して、受賞したのがリチャード・セイラー氏です。

※プロスペクト理論とは

プロスペクト理論とは、不確実性の下における意思決定のモデルの1つです。プロスペクトという言葉は「予想・期待」という意味で、自分の選択の結果に得る利益や損失、確率が既知の状況において、人がどのような意思決定を行うかをモデル化したものです。人は「利益を得る場面では確実に手に入れることを優先し、損失が出そうな場面では最大限に回避することを優先する」行動心理を表しています。実は身近なところにこの行動が溢れています。

具体例

  • 今月がポイントサービスの利用期限・・使わなくては損なので損失回避のため〇〇を購入
  • 〇〇人中〇人は購入金額を無料キャンペーン・・当たって得するのではと〇〇を購入
  • 期間限定キャンペーンを開催・・期間中に〇〇サービスの利用や購入をして得を取ろう

※ナッジ理論とは

ナッジの直訳は「ひじで軽くつつく・後押しをする」といった意味があり、ナッジ理論は、ちょっとしたきっかけを与えて人々の行動や振る舞いを誘導・促すことで、「人のココロや動きを操る魔法」とも言われています。禁止したり強制したりするのではなく、望ましい選択をするように自然と誘導されている行動で、実は身近なところにこの表示が溢れています。

具体例

  • 飲食店の本日のおすすめメニューやカロリー表示・・商品に期待でき、体にも良いので注文
  • レジなど並ぶ場合、社会的距離を保つための足あとマーク・・位置がわかり、並びやすい
  • 本日はポイント〇倍付くキャンペーン・・特別得な日と思い、ついつい訪問し〇〇を購入

具体例だけでも行動経済学を身近に感じませんか。冷静になって考えると、「今まで得と思って行っている行動は、実は損を招いているかも」です。

だまされやすさを測る心理傾向チェック

消費者庁が作成している「だまされやすさを測る心理傾向チェック」でココロの弱さを診断してください。A~Cコースそれぞれ5問で合計15問、行動経済学にもつながる質問になります。心理傾向チェックの合計点が高い人ほど、安易に購入・契約する割合が高く、各コース14点以上は下記の注意になります。

  • Aコース・・・勧誘者の信じすぎに要注意
  • Bコース・・・売り口上の信じすぎに要注意
  • Cコース・・・自分の欲しい衝動に要注意

どうでしたか?自分の心の弱さを知っておくことが、後悔や損をしない人生の第一歩につながりますが、裏を返せば、業者側は、今後ますます行動経済学を使って、消費者のココロの癖や弱い部分を攻めてくることが想像できます。経済活動を行う上で、より一層行動経済学を意識することで、損することを減らし、得することにつながり、間違った判断や相手の思う壺にはまることを防げることでしょう。

私事ですが、原稿依頼日から締切日まで余裕があったのに、結果的には焦りも加わり、ギリギリ提出になりました。人は目の前の楽しみを優先して、仕事は先延ばしにしてしまう、行動経済学では、「現在バイアス」という事象です。私も完全な非合理的経済人です!

次回もお楽しみにしてください。

須原 光生(すはら・みつお)
金融・投資 教育コンサルタント&FP&個人投資家。
元 日本証券業協会 証券教育広報センター関西支部長。ライフプラン・資産運用・相続、贈与・教育費等々の講演会・研修会の講師として活躍中。講師の経験に基づく「身近で、描ける」講演は説得力を増し、オンラインでも「笑いを忘れず、元気が出て、前向きになる!」マジカル話術と大好評。 笑顔満載!お金・身体・心もハッピーライフを提唱。ならどっとFM “先生`s cafe”に出演中。NPO法人日本FP協会 近畿副ブロック長。一般社団法人終活カウンセラー協会会員

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