FPによる知って得する!くらしとお金の話

第3回

これからの時代に合う“助け合い”の経済を考えてみよう

コープ共済について

こんにちは、家計コンサルタントの八ツ井慶子です。
時代が大きく変化している今、家計の常識も今後大きく変わるはずです。今回(全3回中、3回目)はどのような流れを経て、どのような新しい社会経済が考えられるのか、もう少し具体的にみなさんとご一緒にみていきたいと思います。あくまで一つの「考察」ではありますが、何かひとつでも参考になるところがあれば幸いです。

まず、大前提におさえておきたいのは、“いまの「経済」”の影響力です。これはものすごい影響力を持っていて、「経済」があって、私たちの「社会」「暮らし」「文化」が形成される構造になっています。

例えば、景気が良いときに文化が栄えたり、働きがいや、やりたいことよりも給与額を優先したり。企業においても売上アップ優先で偽装や粉飾決算があったりというのは、枚挙にいとまがありません。「経済最優先」が掲げられるくらい、「政治」にも大きく影響しています。目先でいえば、「新型コロナウィルス(以下、567)対策か、経済対策か」と議論されたり。冷静に考えて、お金よりも命の方が大事なはずですが、経済が回らないと、生活苦に陥り、別の角度から命が脅かされます。いわば、“いまの「経済」”は“命がけの「経済」”で、それはまさに、「経済」をベースに、いまの私たちの「暮らし」が成り立っていることの証左だと思います。経済学では、このことを経済の「下部構造」と表現することもあります。

影響力の強い“いまの「経済」”ですが、これを支えているのは、お金の流れ、つまり、銀行を中心とする「金融」システムです。蛇足ですが、「金融」という言葉は、「資金融通」の中2文字を取ったのが語源で、まさに“お金の流れ”を意味しています。
そして、いま金融の世界で何が起こっているかというと、第1回目のコラムでもお話しましたように、長期的な超低金利です。これは日本のみならず、世界的に進行しており、「経済成長」に黄色信号が灯っているわけです。ここでいう「経済成長」とは、GDP(国内総生産)の増減率を指し、「経済的な成長(技術や文明が進歩し、私たちの生活が豊かに便利になること)」とは明確に異なることを付け加えておきたいと思います。

長期間に及ぶ超低金利は、金利で“商売”をしている銀行や生命保険業界に大打撃を与えています。2012年末から政府と日本銀行が一丸となってアベノミクスを進めてきましたが、それでも物価はもちろん、金利も上昇していません。これは、GDPを増やし続けることの限界が差し迫っており、現代を生きる私たちに「脱・経済成長」が問われているのではないかと思うのです。

このまま金利が上昇しないとすれば、いまの形態での金融業界はもたないでしょう。567の影響で、すでに経済状況は悪化していますから、ここで2008年のリーマンショックのようなことが起これば、その規模や影響、ショックの内容は、これまでのクラッシュとは異なり、はるかに大きなインパクトを“いまの「経済」”に与えると思います。

ですが、ピンチはチャンスです。
思い出していただきたいのですが、“いまの「経済」”は「格差」を生み出します。残念ながら、富の再分配は機能していません。日本でも経営者層の報酬は大きく増えている一方で、「貯金の減少」を理由に生活保護の受給を開始する世帯は増え続けています。
私自身、ベーシックインカム(BI)(*注)に強い関心があって、調べて勉強しているのですが、興味深いことに、その実証実験は世界中の数多くの国(地域)で行われています。少し例を挙げるだけでも、フィンランド、ナミビア、インド、ブラジル、カナダ、アメリカ、オランダ、ケニア、ウガンダ、ドイツなどです。裏を返せば、世界中の多くの国や地域で、貧困・格差が存在している事実もうかがえます。それでも、なぜ貧困・格差が根絶されないかといえば、“いまの「経済」”の絶大なる影響力に起因するのではないかと思うのです。

だとすれば、「経済」の再構築が必要です。それには、“いまの「経済」”がいったんリセットされなければなりません。そう考えることができれば、これから訪れるかもしれない経済ショックも、再構築できるチャンスととらえることができ、決して“悪い”現象でもないと考えられます。
むしろ、問題はショックの後です。私たちがどういった「経済」を選択するかにかかっていると思います。

人間の心理には、現状を維持したい、変化を好まない(変化を恐れる)感情があるのだそうです。しかし、思い切った新しい「経済」の再構築は、地球環境のため、人々の豊かな感情を戻すためには、必須なのではないかと思えてなりません。

いったんの大混乱後、おそらく自然発生的に(特に日本では)、助け合いの動きが、民間ベースで出てくると思います。キーワードは、シェア、循環です。

モノやカネはすでに余っています。あとは、分配の問題です。
“いまの「経済」”では、富は集中してしまいます。合法的に、です。こうした状態を終わらせ、本当に必要なところに、必要なモノが届くような循環する経済を構築することが求められます。
このとき、いまよりも見直されると思うのが、非営利組織の「協同組織」の活動です。

“いまの「経済」”では、たくさん作って、たくさん売って、人より多く売って、より多く儲けて、それが毎年同じ規模ではなく、大きくなり続けることを良しとする経済です。これでは資源がいくらあっても足りなくなるのは必至だし、ムダも生まれます。競争する社会となり、人々の心もすさんでいきます。それでも働かないと生きていけませんから、生きるため、お金を得るために、身を粉にしてでも働きます。これでは、地球環境は汚され、精神疾患に悩まされる人が増えるのも、ある意味当然でしょう。経済が「下部構造」なわけです。

そうではなく、私たちの「暮らし」「文化」があって、それに合ったお金の動きとなる「経済」の構築を想像してみてください。必要以上にモノは作りません。自然のサイクルに合わせたモノづくり。競争ではなく、共創、共生。誰かの支出は、誰かの収入となって、お金も循環させていきます。お金の貯蓄手段としての機能は薄れ、交換手段として機能していく、そんな社会経済の構築ができれば、世の中変わります。

そんなことできるのか、と思われる方も多いでしょう。
ですが、“いまの「経済」”を作ったのは、人間です。であれば、人間だからこそ、変えられるのではないでしょうか。明治維新は、それまで約700年続いた武家政治を終わらせました。いまの資本主義経済の歴史を、中央銀行を軸にみれば350年ほどです(世界初の中央銀行設立は17世紀後半)。
早晩訪れるであろう何らかのショックの後、私たちが「このままの経済はよくないよね」といかに思えるか、いままでの経済を踏襲しないことを宣言できるリーダー(政治家等)をいかに選べるか、そこが非常に大事だと思うのですが、いかがでしょうか。多くの人がこういった発想を持てれば、オセロゲームのように大逆転の可能性はゼロではないと思うのです。

少なくとも、“いまの「経済」”のあり方によって引き起こされているさまざまな弊害を、「致し方ない」で済ますことなく、きちんと直視し、「どうしたら改善できるか」といった視点に立って、意識して、考えることは重要ではないかと思います。

第2回目のコラムでもお話しましたように、超長寿社会に日本の社会保障制度はまったくマッチしていません。いずれにしても、私たちの「暮らし」は大きく変わる“際(きわ)”に立たされています。個人的には、いまの縦割りの保障制度から漏れてしまう人をなくすには、社会保障制度は、(社会)保険ではなく、すべて税で対応するのがいいのではないかと考えています。その際、何らかの条件を付けての給付ではなく、無条件給付、つまりBIの議論が活発になっていってほしいと考えています。できるだけAI(人口知能)に働いてもらって、人は、人らしい、人間らしい活動に集中し、その中で「暮らし」「文化」が形成され、モノ・カネが循環する経済です。

少し突飛に聞こえるかもしれませんが、それくらいにいまの日本、そして世界は大きな変革期に踏み入れているのだと思います。
どうか、“いまの「経済」”に対して、一度あらためて考えていただけたらとてもうれしいです。そして、心のシートベルトをしっかりしめて、何があっても笑顔で乗り切っていただきたいなと、心から祈っております。

  • *注:ベーシックインカム(BI)とは、個人単位で無条件に、現金を定期的に給付する制度のこと。貧困・格差解消の手段の一つとして考えられる政策。その実証実験は世界各地で数多く行われながらも、いまだ上記条件を満たすBIが実現している国はない。
八ツ井 慶子(やつい・けいこ)
(1973年 埼玉県生まれ)
2001年より「家計の見直し相談センター」でFP活動を始め、2013年7月独立し、「生活マネー相談室」を立ち上げる。個人相談を中心に、講演、執筆活動を行う。著書に、『サラリーマン家庭は“増税破産”する!』(角川oneテーマ21)、『レシート〇☓チェックでズボラなあなたのお金が貯まり出す』(プレジデント社)など。新聞、雑誌の取材多数。NHK『NHKスペシャル』、『日曜討論』、TBS『あさチャン!サタデー』などにマネーの専門家としても出演。モットーは「しあわせ家計」づくりのお手伝い。個々の価値観を大事にしたプランニングを心掛けている。

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