FPによる知って得する!くらしとお金の話

第2回

あなたのココロは癖だらけ!~誰もが陥る行動経済学を大研究②~

コープ共済について

2022年1月

昔から“近江商人の心得”は、「売り手良し」・「買い手良し」・「世間良し」の三つの「良し」である、「三方(さんぽう)良し」が有名で、売り手と買い手がともに満足し、また社会貢献もできるのがよい商売であり、言い換えれば、誰もが満足する商いをすべしという教えで、みんなが得をし、誰も損をしないということが商売の基本と言い継がれています。

昨今、買い手である消費者は、第1回目のコラムでも表したように、将来が見通しづらく、不安になる材料が増しているからこそ、なるべくお金を節約して、慎重な消費行動を心得ようとしています。一方、売り手である業者側はそのことを踏まえ、少しでもお金を使わせるため、頻繁に行動経済学と心理学をマーケティングに活用しています。

それとなく、ココロの癖や弱い部分を刺激され、消費意欲を促進し、ついついお金を使い、結果的には、作戦に無意識に乗ってしまい、後悔や損をした人も多いのではないでしょうか。まさに業者側の「思う壺化」が加速しています。“近江商人の心得”は何処へ行ったのでしょうか?

今回は、業者側の行動経済学と心理学で用いられている、消費行動に関わるいろいろな効果の一例を紹介していきます。ひとつひとつの効果をゆっくり解読いただき、日頃の自分自身の行動を冷静に振り返ってください。

アンカリング効果

アンカリング効果とは「最初に接した数値や条件が基準となってその後の判断に影響を与える」効果です。アンカーとは「錨(いかり)」のことで、船が錨を下ろしたように身動きの取りにくい状態になることを表しています。

  • 「特別価格1万円」の値札を付けるより「通常価格3万円→特別価格1万円」。
  • 「半額」よりも「半額で1,000円お得!」
  • 「今なら9,800円!」よりも「定価2万9,800円の商品が、今なら9,800円!」

など、元の価格から大きく割引の表記をすることで、値引き後の価格は大変安く感じ、購買力を高める効果があります。

バンドワゴン効果

バンドワゴン効果とは「大人気と言われると、商品が良く見えてしまい、流行に遅れたくないと、自分も購入してしまう」効果です。

  • ラーメン店やスイーツ店などの行列
  • 「10秒に1つ売れている!」の表記

など、きっとおいしいと感じて並んだり、よく効くものだと思ってついつい購入する行為です。

スノッブ効果

スノッブ効果とは「珍しいもの、周りが持っていない希少性が高いものほど欲しくなる」効果で、バンドワゴン効果とは逆の効果です。

  • 「数量限定」、「季節限定」、「会員限定」、「一日〇食限定」

など、数や地域、対象などに制限を付けるほど、購買意欲も高くなります。

ヴェブレン効果

ヴェブレン効果とは顕示的消費とも言われ、希少性が高いものの中でも特に、高級な物・サービスやブランド品など「値段の高いものほど購買意欲が増す」効果です。

  • 「世界に〇個しかない高級品」
  • 「他には味わえない至極のサービス」

など、他人にできない高級品を手に入れたり、体験したり、優越感と満足感を得たい心理が働いています。

フレーミング効果

フレーミング効果とは、「物事を表現する枠組み(フレーム)を変えることで、与える印象が変わり、購入意欲が高まる」効果のことです。

  • 商品1万円では手が出ないが、1カ月1杯のコーヒーを我慢すればと言われ購入
  • 4万円の商品は買いにくいが、月約3,300円の分割払いで購入

など、枠組みを変えると受ける印象は異なり、購入しやすくなります。

おとり効果

おとり効果とは、「2つの選択肢で迷っている消費者に対して、どちらかより差がある、3つ目の選択肢(おとり)を出すことで、消費者が特定の選択をしやすくなる」効果です。

  • 400円の弁当と600円の弁当では、400円の弁当がよく売れるが、400円の弁当より、600円の弁当を売りたい場合は、900円の弁当を追加売りすると、中間の600円の弁当がより売れる。

「松・竹・梅」効果ともいい、“心地の良い”真ん中を好む性質を突く作戦です。

端数価格効果

端数価格効果とは、「商品価格の末尾を(8)にすると、消費者にお得感を与え、購買意欲を刺激する」効果のことです。

  • 「イチ、キュッ、パ(198円、1,980円、19,800円 )」

など、スーパーやTVショッピングなどお馴染み価格で、お釣りが出るとお得感を感じさせます。

ウィンザー効果

ウィンザー効果は「本人が情報発信するよりも第三者の口コミやレビューの方が信頼性は高く感じてしまう」効果で、ネットショッピングで買う商品の決め手になるのは、実は「口コミやレビューで多くの人が“いいね”と言っているから」が多いのはこの効果です。

  • ランキング、口コミ1位、といった情報

など、ネットショッピングのサイトもそれを知っていて、積極的に情報を掲載しています。

テンションリダクション効果

テンションリダクション効果は「大きな買い物や意思決定の後は警戒心が緩んでしまう」効果です。

  • マイホーム購入時、高価な電気製品や家具を同時購入
  • 新車購入時、フル装備を付けて高額ローン

高い買い物をしたあと、「オプションの製品・サービスがある」などと勧められたら、普段では買い難い値段でも、マヒ状態で購入しています。

アンダードッグ効果(負け犬効果)

アンダードッグ効果とは、「多くの人は、困っている人に手を差しのべたり、ついつい応援したくなる気持ちがあり、その性質を利用した」効果です。

  • 就活やビジネスマンが頑張っているCM
  • お母さんが子どもを思い浮かべて営業しているCM

など、この効果を取り入れ、商品やサービスの購入や契約に繋げたいための映像です。

どうでしょうか?我々消費者は、このような効果※を理解し、時には逆手に取って、今後の自らの消費行動に対して、「始めて良し」・「続けて良し」・「見直して良し」・「止めて良し」の「四方(よんぽう)良し」の精神を植え付け、少しでも損や後悔を和らげ、楽しい消費ライフを心掛けましょう。

今回ご紹介した効果以外にも、行動経済学や心理学では様々な効果や理論が存在しますので、興味のある方は知識を深めてください。

私事ですが、今回の原稿は、珍しく締切日の数日前に提出することができました。冷静に行動経済学や心理学を意識して、逆行動をした結果でしょうか?
むろん非合理的経済人の私は三日坊主の恐れありです!

次回は、貯蓄や投資行動を検証しますので、お楽しみにしてください。

須原 光生(すはら・みつお)
金融・投資 教育コンサルタント&FP&個人投資家。
元 日本証券業協会 証券教育広報センター関西支部長。ライフプラン・資産運用・相続、贈与・教育費等々の講演会・研修会の講師として活躍中。講師の経験に基づく「身近で、描ける」講演は説得力を増し、オンラインでも「笑いを忘れず、元気が出て、前向きになる!」マジカル話術と大好評。 笑顔満載!お金・身体・心もハッピーライフを提唱。ならどっとFM “先生`s cafe”に出演中。NPO法人日本FP協会 近畿副ブロック長。一般社団法人終活カウンセラー協会会員

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