FPによる知って得する!くらしとお金の話

第1回

成年後見制度にかかるお金の話①~任意後見制度にかかる費用~

コープ共済について

2022年2月

これは、成年後見制度を利用した際にかかる費用に特化した連載です。

初回は任意後見制度に関する費用、2回目は法定後見制度に関する費用、そして3回目は法定後見制度の費用を抑える方法について説明する予定です。

後見制度は、公的介護保険と同じ2000年に誕生しました。誕生から21年たった現在、その利用は進んでいないと言われています。本来、認知症の方や知的障がいの方を守り、支援するはずの制度の利用がどうして進んでいないのか、お金の面からとらえてみたいと思います。判断能力が不十分なご家族やご友人のため、また、将来のご自身のためにご活用ください。

任意後見制度にかかる費用

将来の後見人を自分が元気なうちに自分で決めておくのが任意後見制度です。

その流れは以下の通りです。

ステップ1
誰に、何を、いくらで頼むか決める
ステップ2
後見人になってくれる人(以下 頼まれる人)と公証役場へ行き、任意後見契約書を作成する
ステップ3
判断力が低下(認知症等)したら家庭裁判所(以下 家裁)に持ち込む
ステップ4
家裁が任意後見監督人を選任したら、任意後見人は頼まれた仕事を行う
ステップ5
依頼した方が亡くなったら任意後見が終了する

それでは以下、ステップごとにかかる費用を説明しましょう。

ステップ1『誰に、何を、いくらで頼むか決める』

ステップ4で払う費用をここで決めます。

決めるべき費用は、仕事をしてくれる人への報酬です。

家族に頼む場合は0円の場合もありますが、一般的には月1~5万円の範囲で決める方が多く見られます。後見を行うNPO法人では月2~6万円くらい、弁護士等に依頼すると月5~10万円くらいになることもあります。いずれにせよ、法律で決まっているわけではありませんから、支払う金額を自分と相手で自由に決めることになります。

金額を固定+歩合とする場合もあります。例えば、月額固定2万円として、見守りついでに会いに行ったら一回1万円、保険金の請求をしたら5万円、不動産を処分したら50万円、遺産分割協議をしたら30万円などの歩合というパターンです。

ステップ2『後見人になってくれる人と公証役場へ行き、任意後見契約書を作成する』

まず、公証人に払う費用が掛かります。

後見人になる人が1名なら、頼む人1名+頼まれる人1名=合計2名分となります。公証人に支払う金額は1名につき1万1千円です。2名の場合は、2万2千円を公証人に払います。また、正本作成費が1枚につき250円加算されます。

次に、任意後見契約は法務局に登記されるのですが、その費用は4,540円です。

さらに、頼む人と頼まれる人の住民票300円(市町村によって違う)、頼む人の戸籍750円、頼む人と頼まれる人の印鑑証明300円(市区町村によって違う)が必要です。つまりここでは合計で28,490円+正本作成料(枚数×250円が掛かります。多くの場合は40,000円前後になるようです。

ステップ3『判断力が低下(認知症等)したら契約書を家裁に持ち込む』

任意後見人では、必ず任意後見監督人が必要です。その監督人を家裁に選んでもらうための申立てです。

まず、医師による診断書代がかかります。

頼んだ人が認知症になって自分のことができなくなった(から任意後見を始める必要がある)と、家裁に説明するためです。診断書代は5千円前後が一般的ですが、病院や医師により、3千円から1万円くらいの幅があります。

申立手数料800円(印紙代)と家裁から送られてくる書類の切手代として3,465円(家庭裁判所によって違う)納めます。さらに添付書類の戸籍謄本等1,900円程度と、家裁から鑑定が必要と言われた場合は5~10万円(病院や医師によって変わる)の鑑定料も必要です。ここでは合計で11,165円程度(医師による診断書代を5千円とした場合)と必要に応じて鑑定料がかかります。

ステップ4『家裁が任意後見監督人を選任したら、任意後見人は頼まれた仕事を行う』

任意後見人を監督する監督人がついたら仕事が始まります。ここで、任意後見人への費用はステップ1で決めており、その金額は任意後見契約書に書いてあるので安心ですが、家裁が決めた任意後見監督人の報酬は家裁が決めるのでいくらかかるか分かりません。

一般的には監督報酬は月1~3万円程度、つまり年間12~36万円ですが、頼んだ人の財産が多ければ月5万円、年間60万円になったり、遺産分割や不動産売却などのイベントがあれば、さらに数十万円から数百万円の報酬が上乗せになることもあります。家族が月1万円で任意後見人の仕事をしているのに、その報告を受けるだけの監督人が多くもらっていると苦情が出ることもあります。

ステップ5『依頼した方が亡くなったら任意後見が終了する』

頼んだ人、つまり任意後見の主役が亡くなったら任意後見は終了します。ご本人の遺産を相続人がいれば相続人に、遺言があれば遺言執行者に渡します。

【まとめ】任意後見制度にかかる費用の一例

頼む人+頼まれる人1人(合計2人の場合)

下記の金額はあくまでも目安です。実際の費用はケースにより異なります。

ステップ1 0円
ステップ2 28,490円+正本作成料(枚数×250円)
ステップ3 11,165円程度※+鑑定料(必要に応じて)

医師による診断書代を5千円とした場合

ステップ4 任意後見人への報酬(ステップ1で決めた報酬)+任意後見監督人への報酬(年間12万円~36万円)+イベントに応じて上乗せ
ステップ5 0円

ステップ1からステップ3までの初期費用はそんなに大きい金額ではありませんし、一回で済む費用です。

ただ、ステップ4の費用は任意後見が終了するまで毎年かかる費用です。実際にはいくらかかるか分かりません。けれども仮にその期間が10年だとすると120万円~360万円、場合によってはそれ以上になる可能性があります。この報酬は頼んだ人のお金で支払います。

実際の事例としては『80代のお母さんと50代の娘さんが任意後見契約を結びました。お母さんの認知症が重くなったので任意後見監督人の申立てをしました。家庭裁判所から「お母さんの財産が少なく、任意後見監督人を引き受けてくれる弁護士や司法書士がいません」と返事があり任意後見を始めらませんでした。』というお話もありました。

今回は任意後見制度にかかる費用についてご説明しました。次回は法定後見制度にかかる費用についてご紹介します。

記載の費用などは2022年1月時点のものです。

佐藤 龍子(さとう・りゅうこ)
FPオフィスR(アール)代表
1981年みやぎ生協に入協。みやぎ生協LPA事務局として勤務。2009年からFPオフィスRの代表として独立、2013年にNPO法人PREMOの理事長に就任。現在は、成年後見制度に関する相談を中心に、個人のFP相談業務を行っている。
保有資格:CFP® 1級FP技能士 行政書士 後見人相談士®

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