FPによる知って得する!くらしとお金の話

第2回

起業という働き方② 好きを仕事にする5つのステップ

コープ共済について

2023年10月

「好きなことを仕事にできたらいいな」そんな想いが芽生えたら、小さく始めていきましょう。

植物を育てるようにコツコツ取り組めば、無理なく起業することができます。

今回は、あなたの「好き」を仕事にする『5つのステップ』をご紹介します。

STEP1 起業のタネを見つける

まずは「起業のタネ」を見つけることから始めます。起業のタネはあなたの中にある「やりたいこと」「できること」、そして他の人から「求められること」が重なり合う部分にあります。

まずはあなた自身を振り返って、「①やりたいこと」と「②できること」を考えてみましょう。

①やりたいこと(意志)
  • それをしていると楽しいと感じること
  • 社会で実現したいこと
  • こんな自分でありたいという欲求
②できること(能力)
  • 褒められたことや得意なことなど
  • 興味を持って学んだこと、取得した資格
  • 仕事や経験で得た知識やスキル

例えば、「もともと料理は好きだったなあ。子どもたちに料理の楽しさや作る喜びを味わってもらいたいなあ。子ども料理教室なんてどうだろう。」という感じで構いません。

「①やりたいこと」と「②できること」が重なり合う「起業のタネ」が見つかったら、今度は外に目を向けて「③求められていること(ニーズ)」を考えてみましょう。

どんなに得意でどんなに想いがあっても、人に必要とされなければ仕事にはなりません。「起業のタネ」から「芽」が出るためには、それが人の役に立ち、人を幸せにすることである必要があります。

STEP2 内部環境と外部環境を分析する

芽が出る「起業のタネ」が見つかったら、タネを取り巻く内部環境と外部環境を分析します。

内部環境とは自分自身の経験や能力、保有している物に関する情報で、外部環境とは市場(見込み顧客)、競争、法律や経済情勢などの情報です。

例えば、「子ども料理教室」というアイデアが芽生えたら、まずお客さんとなる子どもがいるか考えます。周囲が住宅地で小学生くらいまでの子どもがいれば、それは「機会」と捉えることができます。そして、自分に子育て経験があることや、ママ友がいること、自宅のキッチンやリビングを教室として使えることなどは「強み」となり、「子ども料理教室」を開催する環境が整っていると考えることができます。

このように外部にある「機会」に対して、内部の「強み」を発揮していくことで起業が成功しやすくなります。仮に自宅に教室を開くスペースがないことが「弱み」となった場合には、公共施設を借りるなど工夫をすることで克服することも可能です。

STEP3 ターゲットを設定する

事業環境の分析ができたら、誰に向けて事業を行うのか対象となる顧客「ターゲット」を設定します。

「子ども料理教室」とひとことで言っても、幼児向けなのか小学生向けなのかでは、教える内容も広報の方法も違ってきます。顧客のニーズを満たすためにもターゲットは絞ることが大切です。

「みんなに来て欲しい!」と、つい対象を広げてしまいがちですが、それが失敗の元と言っても過言ではありません。かくいう私もファイナンシャルプランナーとして生協で活動を始めた頃、『賢く選ぼう医療保険』と題した誰が来ても良いセミナーを企画したことがありました。2万世帯にチラシが配られたにも関わらず、参加者は1名でした。それからは「誰が来ても良いセミナーには、誰も来ない!」と肝に銘じて、ターゲットを絞るよう心掛けています。

STEP4 コンセプトを明確にする

次は、ターゲットに「どのような価値を提供するのか」という事業の幹になる考え方(コンセプト)を明確にします。コンセプトを明確にすることで事業に一貫性が生まれ、商品やサービスの魅力が人に伝わりやすくもなります。

例えば、次の2つを比べてみてください。

A)2歳からの子ども料理教室
B)ママのイライラが笑顔に変わる!2歳からの子ども料理教室

どちらに魅力を感じるでしょうか?

Aは幼児向けの料理教室ということは分かりますが、それ以上のことは伝わってきません。

一方、Bからはどんなイメージが伝わってくるでしょうか?

実は、Bは子ども達に料理を教えることを目的にした教室ではありません。お子さんが包丁を持って料理をする様子を、口出し手出しせず保護者の方が見守るという料理教室です。これによって、親の見守る力、子どもを信じる力を高め、親子関係を良くすることで子どもの健全な成長を促す料理教室です。

『2歳からの子ども料理教室』を主宰する村上三保子さんは、元々は子育てコーチングを広めたいと考えていたそうです。たまたま友人の子ども料理教室を手伝った経験から、ツールとして料理を活用しているそう。お母さんの子育てをラクにすることが子ども料理教室の真の目的なのです。

2010年に開講して以来、集客に苦労することもなく今も教室は盛況で、2020年には本も出版されました。

STEP5 マーケティングミックスを構築する

コンセプトが明確になったら、その価値を具現化し顧客に届けるための方法を検討します。このことをマーケティングミックスといい、Product(商品やサービス)、Price(価格)、Place(場所)、Promotion(販売促進)をそれぞれ決めていきます。

次に挙げるのは、コンセプトが異なる2つの子ども料理教室です。それぞれについて、マーケティングミックスを考えてみましょう。

B)ママのイライラが笑顔に変わる!2歳からの子ども料理教室

C)お留守番が食育時間に変わる!子ども料理の家庭教師

  B)子ども料理教室 C)子ども料理の家庭教師
商品サービス【Product】 2歳でも作れるメニューとレシピ
包丁等の安全な使い方の指導
試食の後は子育てのお話会
子の年齢に応じたメニュー、家族分を作る
メニューに応じた買い物の同行
保護者帰宅までの保育付
場所【Place】 自宅のキッチン、リビング 顧客先のキッチン、リビング
価格【Price】 1回:5,000円(兄弟割引あり) 1回3時間:8,000円(兄弟加算あり)
出張費別途、材料費は実費
販売促進【Promotion】 未就学児が集って楽しそうに料理をする姿や、親が見守る様子の写真で訴求 家庭の台所で子どもが調理する姿や、子どもが誇らしい笑顔の家族団らんの写真で訴求

このようにコンセプトが違えば提供するサービスや価格設定、販売促進の訴求点など価値を実現する方法が異なります。この作業によって顧客に喜ばれる価値を創造することができます。この価値創造こそが起業の醍醐味でもあり、これまでになかったニッチなサービスが生まれることで社会がますます豊かになっていくものと思います。さあ、あなたの価値ある商品・サービスもこのステップを使って育てていきましょう。

但し、いくら立派な計画を立てても上手くいくとは限りません。むしろ、行動して初めて気づくことも多いのではないでしょうか。大切なことは、その経験を活かして、修正していくことです。

アイデアは良かったけれど「人が集まらなかった」「大赤字になった」というような困難にも直面します。

そんな時は再度、環境分析に戻り、顧客の真のニーズに耳を傾けたり、コンセプトを練り直したり、そしてマーケティングミックスの見直しを繰り返すうちに解決の糸口が見つかるものです。

トライアンドエラーはつきものですが、「失敗ではなく、学びがあるだけ!」そう思って行動し続けましょう。

今成功している人たちは皆、行動し続けた人たちですから。

小谷 晴美(こたに・はるみ)
しなやかライフ研究所 代表
ファイナンシャルプランナー(CFP®認定者)
熊本県出身。大阪教育大学教育学部卒。前職では中小企業診断士として商業・サービス業の経営指導に携わる。
夫の独立開業を機に、2006年FP資格を取得する。「漠然とした不安を、自分で考え判断できる安心に変える!」をモットーに、相談、講演、執筆等を通じて、金融知識の普及に注力する。
個人事業主の妻として夫をサポートした経験と子育てをしながら少しずつ仕事の幅を広げてきた経験から、特に女性のしなやかな働き方の支援に強みを発揮している。
著書に『女性ひとり起業スタートBOOK』(コスミック出版)がある。

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