FPによる知って得する!くらしとお金の話

第1回

シングルマザーを応援!ひとり親家庭が知っておきたい暮らしのお金①
ひとり親家庭の経済的支援について知ろう~各種手当、助成、割引制度など~

コープ共済について

2023年11月

こんにちは。NPO法人Wco.FPの会(以下FPの会)の青山雅恵です。私は日頃コープ共済連の組合員LPAとして、生活クラブの組合員の皆さんに向けた「ライフプラン講座」の講師や個人相談等を行っています。

ライフプラン講座や個人相談を通して、多くの組合員さんからご相談を受ける機会がありますが、家族の在り方が多様化する中、近年シングルマザーや離婚を考えているママたちからのご相談が増えてきているのを感じます。

令和3年度「全国ひとり親世帯等調査」(厚生労働省)によると、母子家庭は全国で約120万世帯あります。約86%が仕事に就いていますが、うち正社員は約49%、パート・アルバイトが約39%です。正社員として働く人の割合は増えているものの、父子家庭(正社員約70%、パート・アルバイト約5%)に比べると、依然として非正規の割合が高くなっています。

就労収入が少ない家庭にとって、公的な手当や助成等は家計の大きな助けとなりますが、多くは自分で申請手続きを取らなければ受け取ることができないことに注意が必要です。

そこでここからは、ひとり親家庭が受けることのできる主な手当や助成金、各種割引制度などの経済的支援についてご紹介します。

1.ひとり親家庭が受けることのできる主な手当

ひとり親家庭が受けられる主な手当には、まず児童扶養手当があります。これとあわせて児童手当(東京都在住であれば加えて児童育成手当)を受けることができます。

(1)児童扶養手当

児童扶養手当は、ひとり親家庭等で、年齢や要件を満たす児童を養育する人に支給されます。

対象となるのは、18歳の誕生日後の最初の3月31日まで(一般的に高校卒業まで)の児童、または心身などに一定の障害がある場合は20歳未満の児童で、父母の離婚や死別、父または母に重度障害を有するなどの状態にあること等が要件となっています。

手当金額は、子どもの人数や親の所得によって決まります。年6回、奇数月に支給されます。

<参考:児童扶養手当(令和5年度、月額)>

満額を受け取る場合を「全部支給」、減額される場合を「一部支給」といいます。

対象児童 全部支給 一部支給
1人目 44,140円 44,130円~10,410円(※)
2人目の加算額 10,420円加算 10,410円~5,210円(※)加算
3人目以降の加算額(1人につき) 6,250円加算 6,240円~3,130円(※)加算
  • 複数の児童を養育している場合は、1人目の支給額に児童の人数分の加算額を足していきます。

<対象児童が4人いる家庭で、全部支給を受ける場合>

➡支給額:44,140円+10,420円+6,250円+6,250円=67,060円

児童扶養手当には所得制限があります。所得が所得制限以上ある場合、手当金額は10円刻みで減額され、一部支給となります。所得が一部支給の所得制限以上になると、手当はゼロとなります。ちなみに母子2人世帯(扶養する児童数が1人)の場合、全部支給の所得制限は収入ベースで160万円、一部支給の所得制限は収入ベースで365万円です。

(2)児童手当

児童手当は、0歳から15歳の誕生日後の最初の3月31日まで(中学校卒業まで)の児童を養育する人に対して支給されます。ひとり親家庭に限った手当ではありませんが、児童扶養手当に並び、家計の大きな支えになります。

支給金額は子どもの年齢と養育者の所得により決まります。原則年3回(2月、6月、10月)、前月までの4ヵ月分がまとめて支給されます。

<参考:児童手当(月額)>

3歳未満 一律15,000円
3歳以上小学校修了前 10,000円(第3子以降は15,000円)
中学生 一律10,000円
所得制限以上所得上限未満 一律 5,000円(特例給付)※

児童手当にも所得制限があり、所得が所得制限限度額以上の場合は、子ども1人あたり一律5,000円が特例給付として支給されます。所得が所得上限限度額以上となった場合は、児童手当はゼロとなります。ちなみに所得制限は、特例給付となる所得制限額が母子2人世帯(扶養する児童が1人)の場合収入ベースで875.6万円、児童手当がゼロとなる所得上限限度額が収入ベースで1,124万円です。

(3)児童育成手当(東京都独自の制度)

児童育成手当は、18歳の誕生日後の最初の3月31日までの間の児童を養育する人に支給されます。支給要件等は児童扶養手当と同じです。手当の金額は、児童1人あたり月額13,500円です。

児童育成手当は東京都独自の制度です。所得制限がありますが、児童扶養手当より限度額は高くなっています。

2.ひとり親家庭が受けられる医療費助成

医療費助成はひとり親家庭にとってたいへん心強い制度です。親子で助成対象となるのがポイントです。

・ひとり親家庭等医療費助成制度

ひとり親家庭の父母等と児童に対し、医療機関や薬局等で健康保険適用の診療・投薬等を受けた時の医療費・薬剤費の自己負担分を助成する制度です。対象となる児童は、児童扶養手当の場合と同じです。児童だけでなく、その親等(母または父、両親がいない児童の養育者)も対象となっています。

公的医療保険に加入していることが条件です。所得制限を超えている場合や生活保護を受けている場合等は対象外となります。

3.その他、ひとり親家庭が受けられる支援や助成等

(1)住宅に関する手当・費用助成

自治体によっては、住宅に関する手当や助成制度を設けているところがあります。家賃補助や保証料、引っ越し費用や立ち退きの転居費用等の助成を受けられる場合があります。

(2)割引・減免・補助制度

その他、児童扶養手当を受給している世帯は、JR通勤定期乗車券の割引(3割引)や水道料金の基本料金免除、粗大ごみ収集手数料の免除等、様々な割引・免除が受けられる場合があります。就学援助が受けられるところもあります。

ご紹介した割引・減免・補助制度は、自治体によって大きく内容が異なります。どのような支援があるのか、是非お住まいの自治体の窓口でご確認ください。

青山 雅恵(あおやま・まさえ)
NPO法人Wco.FPの会 理事長
加入している生活クラブ生協で「託児付き」に惹かれてライフプラン講座に参加し、ライフプランニング活動を知る。地域で組合員活動を行うかたわらファイナンシャル・プランナーの資格を取得して2012年に組合員LPAとなり、生活クラブFPの会に入会。2018年生活クラブFPの会理事長。2019年3月より現職。
NPO法人Wco.FPの会(前身は生活クラブFPの会)は、生活クラブ生協でライフプランニング活動を行う組合員LPAが2002年に設立。メンバー全員がファイナンシャル・プランナー(AFP、CFP)の資格取得者で、組合員LPAとして、主に生活クラブ生協の組合員の皆さんを対象に「ライフプラン講座」の講師を担当するとともに、個人相談等を行っている。2019年3月に東京都の認証を受けてNPO法人格を取得後も、変わらず活動を続けている。

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