2023年12月
ここまで起業のやり方についてご紹介してきましたが、いかがだったでしょうか。
最終回となる今回は、「女性のライフプラン」という視点から「起業」という働き方について考えてみたいと思います。
個人事業主として活躍している女性に「起業して良かったこと」を伺うと、「働き方」については、「マイペースで働ける」「家族とふれあう時間が増えた」「定年がない」の3つを挙げる方が多いです。
(1)時間に融通が利いて、自分のペースで働ける
女性は「出産」「育児」「子育て」「介護」において、一般的に男性より大きな役割を担うことが多いです。そのため、このようなライフイベント(人生で起こりうる様々な出来事)の影響を受け、ライフスタイルの変化も大きくなります。
このような暮らしの変化に合わせた柔軟な働き方として、全てを自己決定できる「起業」という働き方は適していると言えます。
「子どもが学校に行っている内にここまで終わらせよう」「夏休みは三週間ほしい!」と、その都度、自分の都合に合わせて、仕事の予定を組むことができます。
ちなみに、わが家は夫婦ともに個人事業主ですので、4月に子どもの学校行事の年間スケジュールを見て、運動会の予備日まで手帳に×を打っておきました。お陰で小学校の参観の類いは、ほぼ全て夫婦揃って参加していました。
(2)自宅で仕事ができるので、家族とふれあう時間が多い
SNSを活用して仕事をする、自宅サロンや自宅で教室を開くなど、自宅で仕事ができるのも大きな魅力です。
通勤時間の無駄がなく、仕事の直前まで洗濯物を干したり、来客と来客の合間に食器を洗ったり「家事と仕事の両立がしやすい」という声もよくお聞きします。また、通勤ラッシュのストレスがないのも魅力ですね。
特に子育てにおいて大きな役割を担う女性には「家でできる」という魅力は大きいのではないでしょうか。
会社員からキャリアカウンセラーとして独立したAさんの例
会社員として働きながらキャリアカウンセラーの資格を取得したAさん。
ゆくゆくは独立したいという夢を持ちながら、学んだことや日々感じることをSNSで発信していました。それが、地元企業の人事担当者の目に留まり、年間契約での仕事の依頼を受け、独立を決意。独立して約1年、「独立して良かったことは?」と尋ねたところ、「見るからに、子どもが幸せそうなんですよ」と笑顔でお話されました。会社員時代の年収には程遠い状況ではありますが、お子さんとの掛け替えのない時間を持てた事に満足しているとお話されました。
(3)定年がないので、老後に対する不安が少ない
少子高齢化、人手不足の影響のためか、最近はパートやアルバイトに定年を設けない企業も増えてきましたが、「65歳まで」「70歳まで」など定年を定める企業も少なくありません。また求人内容がやりたいことかどうか、という問題もあります。
個人事業であれば、何歳になっても、これまで通り好きな事を、体調に合わせてやり方を変えるなどして、無理なく続けていくことが可能です。
このように女性のライフプランに合わせた柔軟な働き方がしやすい「起業」ですが、「いつ、どこで、どれだけ」働くのか、「将来の働き方に向けて今何を学んでおくべきか」といったキャリアプランも自分で考える必要があります。
そのような長期的な視点に立って働き方を考える上でも、描いておきたいのがライフプランです。
現在、人生のどのステージにいて、5年後、10年後の家族はどうなっているのか。
家庭で求められる役割が変化する中で、どのような働き方や生き方をしていきたいか、そのために今の自分が大切にしたいことは何か、そんな風に一度しかない人生のこれからを描いてみませんか。
例えば、こんなライフプラン表を作ってみてはいかがでしょう。
家族の年齢を書いていきながら、その年に起こりそうなイベントをその下に書いていきます。お子さんの新入学やマイホーム購入予定、生活スタイルが大きく変化しそうなイベント事や、夫の定年退職、車の買い換えなど大きなお金の動きがありそうなことを思い浮かべながら記入していきます。
その上で、どのような働き方をしていきたいのか、仕事の内容、労働時間や日数、そして目標とする収入など具体的にイメージして記載していきましょう。
そして最後に、その時々であなたが優先的に、時間や労力を使うべき「大切にしたいこと」を思いうかべてみましょう。特に優先したい3つを選んで1位は★、2位は◎、3位は〇など印をつけます。
お子さんが小学生のうちは「家族」かもしれませんが、お子さんが高校生ともなればかける時間や労力がグッと少なくなっていくと思います。「小さいときは手がかかるけど、大きくなればお金がかかるもの」とはよく言ったものです。
子育てが終わったあと、どれくらいあなたの人生は続きそうでしょうか。
空いた時間をどのように使っていきたいでしょうか?
その後の人生も豊かで充実したものとなるよう、好きなこと、楽しめることを見つけておくと良いですね。
それが人の役に立ち、感謝され、その結果、収入も得られる「起業」であれば、経済的な安心感ももたらされます。そして、家庭だけでなく、社会に居場所があることで心の安定が保たれるような気がします。
3回のコラムが「起業」を身近に感じたり、「起業」のハードルを下げたりすることで、あなたの限りない可能性を広げるキッカケになれば嬉しいです。
私自身も生協の組合員活動からスタートした「お金の知識を伝える活動」が今はこうして「仕事」になっています。そんな活動を続ける中でも、「自分にできるか?」と勇気が必要な選択を迫られる場面がありました。そんな時、夫に相談すると必ずかけてくれた言葉があります。
「人生一度きりだから、やってみたら」
「人生一度きり」ですから、「できたらいいな」と興味を持たれたら、自分の可能性を信じて、小さな一歩を踏み出してみませんか。
- 小谷 晴美(こたに・はるみ)
- しなやかライフ研究所 代表
ファイナンシャルプランナー(CFP®認定者)
熊本県出身。大阪教育大学教育学部卒。前職では中小企業診断士として商業・サービス業の経営指導に携わる。
夫の独立開業を機に、2006年FP資格を取得する。「漠然とした不安を、自分で考え判断できる安心に変える!」をモットーに、相談、講演、執筆等を通じて、金融知識の普及に注力する。
個人事業主の妻として夫をサポートした経験と子育てをしながら少しずつ仕事の幅を広げてきた経験から、特に女性のしなやかな働き方の支援に強みを発揮している。
著書に『女性ひとり起業スタートBOOK』(コスミック出版)がある。