FPによる知って得する!くらしとお金の話

第3回

シングルマザーを応援!ひとり親家庭が知っておきたい暮らしのお金③
ひとり親家庭と大学進学にかかる教育費の話

コープ共済について

2024年3月

こんにちは。NPO法人Wco.FPの会の青山雅恵です。私は生活クラブ生協で組合員LPAとして活動しています。

本シリーズ最終回は、大学進学にかかる教育費の話がテーマです。大学等に進学するのはお金がかかりますが、お子さんのいちばんの応援団として進学したい気持ちをあと押ししてあげたいものですね。ここからは進学にかかる費用を確認し、必要な教育費を確保するために活用できる支援制度や奨学金について見ていきましょう。

1.大学進学等にかかる費用

(1)大学の場合

一般的には4年間で数百万円もの学費が必要になります。金額は進学先により異なり、国立大学の場合4年間で約240万円(学費に文系理系の差はなし)、私立大学の場合は、4年間で文系学部が約440万円、理系学部(理工系)では約600万円必要となります。

私立の短期大学は、2年間で約230万円必要です。1年間の学費は私立文系と同じくらいですが、2年制である分学費の負担は少なくなります。

<参考:大学にかかる費用> (2年目以降の学費は入学料が不要です)

平成16年 「国立大学等の授業料その他の費用に関する省令第16号」(文部科学省)
令和3年度「私立大学等の入学者に係る学生納付金等調査結果について」(文部科学省)を基に筆者作成

(2)専門学校の場合

専門学校(専修学校専門課程)は、職業に就くために必要な技能や知識、資格の修得を目指す高等教育機関です。医療、衛生(食品・理美容)、教育、服飾等8つの専門分野に分かれ、内容に応じて1年制から4年制の学科があります。多いのは2年制の専門学校です。

必要な学費は分野により大きく異なり、1年間の学費は私立大学の学費に匹敵します。専門学校は職業教育機関という性格上実習が多く、学科によって実習料や材料費が多くかかる場合があります。

<参考:専門学校にかかる費用>

令和5年度「学生・生徒納付金調査」(公益社団法人東京都専修学校各種学校協会)を基に筆者作成)
※端数処理により合計が一致しない場合がある

2.活用したい教育費の支援制度や奨学金

大学や専門学校の進学費用は、計画的に貯蓄をして少しずつ準備しておくことが望ましいですが、進学費用の全額を用意するのは難しい場合もあるでしょう。2020年4月から始まった「大学無償化」制度等、進学を支援する制度を知り、申込できるように準備しましょう。

(1)高等教育の修学支援新制度(大学無償化制度)

2020年4月に始まった国の「高等教育の修学支援新制度」は、学ぶ意欲があり経済的に困難な学生の進学の機会を守るためにできた制度です。支援は「授業料および入学金の減免」と、「給付型奨学金の支給」の2本立てで行われ、最大で年間約70万円の授業料免除と、約91万円の給付型奨学金がセットで受けられます。

対象となるのは、住民税非課税世帯およびそれに準ずる世帯の学生です。非課税世帯に準ずる世帯の場合、支援額は世帯収入に応じて非課税世帯の学生の3分の2、または3分の1の金額となります。

上限額の支援が受けられる世帯収入の目安は、2人家族(本人と母)の場合、年収207万円未満、3人家族(本人と母、高校生のきょうだい)の場合、年収221万円未満です。

(給与所得者世帯の場合)
【出典】「学びたい気持ちを応援します 高等教育の修学支援新制度」(文部科学省)

要件の家計基準には資産額の要件もあります。生計維持者が1人の場合、資産(預貯金・有価証券、不動産は対象外)は1,250万円未満であることが必要です。

また学業成績の要件に「高校の評定平均値が3.5以上」がありますが、評定平均値が3.5未満でも本人の意欲が確認できれば支援を受けられます。

家計基準等を満たすかどうかは、日本学生支援機構(JASSO)の「進学資金シミュレーター」で試算することができます。まずはサイトでぜひ確認してみてください。

進学資金シミュレーター | JASSO

【出典】「学びたい気持ちを応援します 高等教育の修学支援新制度」(文部科学省)

なお、給付型奨学金を利用できる進学先は、給付型奨学金の対象となるとの確認を受けた学校が対象となります。対象となる学校の一覧は文部科学省ホームページで確認できます。

(2)日本学生支援機構の奨学金制度

年収制限等により修学支援新制度が利用できない場合等は、日本学生支援機構の貸与型奨学金を検討しましょう。無利子の第一種奨学金と有利子の第二種奨学金があります。採用の基準として、学力基準と家計基準がありますが、家計基準は給付型奨学金に比べかなり緩和されています。

(3)貸付

奨学金を受け取れるのは入学以降です。入学時に必要資金が貯蓄等で用意できない場合は「国の教育ローン」や「教育支援資金」等、ローンの利用も検討しましょう。

※他に、「母子父子寡婦福祉資金貸付金制度(修学資金)」(窓口:最寄り自治体の福祉担当窓口)を利用できる場合があります。

3.早めの準備と情報収集が大切

日本学生支援機構の奨学金は、給付型、貸与型とも、高校3年生のうちに申し込み(予約採用)、進学時点までに確実に借りられる状況にしておくことができます。

予約採用は高校3年生の春に始まります。在籍する高校を通して申込を行うため、事前に学校から申込書類をもらっておく必要があります。お子さんに、忘れずに奨学金の案内資料をもらうよう伝えておきたいですね。

奨学金には成績要件がありますが、判定基準となる成績は高校1年・2年時の成績です。高校に入学したら、進路について早めに親子で話し合っておきましょう。なお成績は、学校により10段階評価を5段階評価に読み替える場合があります。読み替え方は学校により異なりますので、お子さんの平均評定がどうなるのかは自己判断せず、学校に確認することをお勧めします。

昨今では、大学や民間企業、財団等が運営する給付型奨学金も増えています。応募条件や給付額はまちまちですので、奨学金サイト等でぜひ情報収集してみてください。

青山 雅恵(あおやま・まさえ)
NPO法人Wco.FPの会 理事長
加入している生活クラブ生協で「託児付き」に惹かれてライフプラン講座に参加し、ライフプランニング活動を知る。地域で組合員活動を行うかたわらファイナンシャル・プランナーの資格を取得して2012年に組合員LPAとなり、生活クラブFPの会に入会。2018年生活クラブFPの会理事長。2019年3月より現職。
NPO法人Wco.FPの会(前身は生活クラブFPの会)は、生活クラブ生協でライフプランニング活動を行う組合員LPAが2002年に設立。メンバー全員がファイナンシャル・プランナー(AFP、CFP)の資格取得者で、組合員LPAとして、主に生活クラブ生協の組合員の皆さんを対象に「ライフプラン講座」の講師を担当するとともに、個人相談等を行っている。2019年3月に東京都の認証を受けてNPO法人格を取得後も、変わらず活動を続けている。

「知って得する!くらしとお金の話」コラム 一覧はこちら

こちらもおすすめ

サイドメニュー