FPによる知って得する!くらしとお金の話

第2回

シニアの離婚 夫と妻、財産をどうやって分け合う?

コープ共済について

2024年4月

1.財産分与とは

厚生労働省によると、令和3年の離婚件数は、18万4,386組で、結婚した3組に1組が離婚しているそうです。長年連れ添った夫婦が離婚する場合、離婚した後の収入面の不安を口にされる人が多いです。

公的年金では、平成19年4月に年金分割制度が始まり、離婚後の生活資金確保の一助となっています。令和3年度の年金分割件数は、34,135組で、離婚した夫婦の約18%が年金分割を行ったということになります。

今回は、シニアの離婚について、財産の分け方(財産分与)に関してご説明します。財産分与とは、婚姻期間中に夫婦が一緒に築いた財産を離婚時に分割することをいいます。たとえば、専業主婦で働いていない期間があっても、夫が婚姻期間中に得た収入は、妻と共同で築いた財産と見なされ、夫婦の共有財産となります。

婚姻期間が長ければ長いほど、財産分与の対象となる財産項目が多くなりますが、財産分与の対象となるもの(共有財産)と対象とならないもの(特有財産)があります(図1)。

図1 【共有財産と特有財産】

【共有財産】

共有財産とは、夫婦が婚姻期間中に一緒に築いた財産のことで、財産の名義に関わらず、夫婦の財産として扱います。たとえば、不動産(土地・建物など)、預貯金、株式、家財道具、自動車などが対象となります。

なお、住宅ローンや自動車ローンなどの借金(債務)については、夫婦で共同生活を送るうえで負った債務のため、共有財産として財産分与の対象となります。

【特有財産】

特有財産とは、夫婦の共有財産として扱われない財産で、離婚時の財産分与の対象からは、外されます。具体的には、夫婦の一方が結婚前に貯蓄していた預貯金や、婚姻期間中に自分の親から相続や贈与として受け取った財産などです。

なお、ギャンブルをする目的など自分のために負った借金(債務)は、共有財産ではなく特有財産になります。

このように財産は、多岐にわたるため、離婚する前にどのような財産がどれだけあるかをまとめておくことが必要です。

2.財産分与の割合と請求期限

財産分与の割合は、原則2分の1です。妻が専業主婦で収入がない場合でも、共働きで収入がある場合でも同様です。

次に、財産分与における調停や審判の申し立ての請求期限は、2年間と決められています。この2年間は、除斥(じょせき)期間といって、期間の経過のみで権利が消滅しますので、中断や延期といったことはありません。このため、2年を過ぎると、相手の同意なし(任意)には財産分与を行うことができなくなりますので、注意しましょう。

それでは、シニアの離婚の際、よく聞かれる財産分与の項目について見ていきましょう。

【マイホーム(住宅)】

シニアの離婚で財産分与時に大切なのが「マイホーム(住宅)」の扱いです。マイホームなどの不動産は、流動性が低く、財産分与が難航することがあります。

たとえば、住宅ローンがなければ、売却して現金化し、分割することができます。ですが、住宅ローンが残っている場合は、どの程度残っているか、住宅ローンがマイホームの評価額を上回るケースもあります。

いずれにせよ、不動産仲介業者(複数)などに売却見込額を査定してもらい、マイホームの評価額を把握する必要があります。

【退職金】

退職金は、賃金の後払的な性質のものなので、財産分与の対象になります。すでに退職金が支給されている場合は、支給された額を2分の1に分割します。また、近いうちに定年退職を迎え、退職金が支給されることが就業規則などで確認できれば、財産分与の対象となります。

なお、財産分与の対象は、婚姻期間中に築いた財産のため、婚姻前から同じ会社に勤務している場合は、その部分の退職金を控除します。

【年金分割】

年金分割は離婚した場合、2人の婚姻期間中の厚生年金を分割して、それぞれ自分の年金とすることができる制度です。年金分割は、厚生年金部分を分割するため、分割する厚生年金加入期間のない人(国民年金の加入期間のみ)は、年金分割をすることができません。

年金分割には、「合意分割制度」と「3号分割制度」の2種類があります。

合意分割制度は、平成19年4月1日以後に離婚等をし、2人(または当事者一方)からの請求で、厚生年金の保険料納付記録(標準報酬)を最大2分の1に分割することができます。合意できない場合は、家庭裁判所が按分割合を決定します。

次に、3号分割制度は、平成20年5月1日以後に離婚等した場合、国民年金の第3号被保険者であった人からの請求で、平成20年4月1日以後の婚姻期間中の第3号被保険者期間における相手方の厚生年金記録を2分の1に分割することができます。請求にあたっては、相手の合意は必要ありません。ただし、第3号被保険者であった人でも、平成20年3月31日までについては合意分割の対象となりますので、相手の同意が必要となります。

図2 【離婚時の年金分割のイメージ】

例:サラリーマンの妻である専業主婦であった人の場合(厚生年金)

出典元:日本年金機構リーフレット

最後に、離婚してから年金分割を受けるときに注意すべきポイントを説明します。

離婚時に双方の合意があっても離婚の翌日から2年以内に、年金事務所等で年金分割の請求手続きをしないと、年金分割を受けられません。また、離婚後2年が経過していなくても、年金分割を行う相手が亡くなった場合は、1か月以内に年金分割を行わないと申請することができなくなります。

離婚に関しては双方の話し合いで決めていくことが多いですが、話し合いがこじれてしまったり、時間がかかるようであれば、家庭裁判所の離婚調停を検討すると良いでしょう。

望月 厚子(もちづき・あつこ)
社会保険労務士。ファイナンシャル・プランナー(CFP、1級FP技能士)。
望月FP社会保険労務士事務所所長。
年金・資産運用・保障設計・住宅ローン・ライフプラン・セカンドライフ等の個人相談業務、社会保険・労働保険等の法人相談業務、新聞・雑誌等への執筆、各種セミナー講師も務める。
・さいたま家庭裁判所より、成年後見人を受任
・厚生労働省社会保障審議会年金部会・専門委員会委員を受任
・日本年金機構 地域型年金委員
・年金マスター
・両立支援コーディネーター

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