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第2回

住まいの終活に備えて ②空き家を引き継いだ場合の対応方法

コープ共済について

2025年1月

空き家の増加は大きな社会問題ですが、実際に空き家を引き継いだ人や、親は健在でも将来実家が空き家になりそうという人にとっては、個人的にも深刻な問題です。
今回は、実際に空き家を引き継いだときの対応方法について解説します。

1.空き家の3つの対応方法

空き家を引き継いだときの対応方法は、大きく分けて3つあります。

  • 保有する
  • 活用する
  • 処分する

それぞれの対応方法について詳しく解説します。

2.保有する

空き家を「保有する」というのは、空き家をそのまま持ち続けることです。多くの人は、空き家を相続してもすぐに活用したり処分したりせず、しばらくは持ち続けています。
この場合のポイントとして、3つの注意点があります。

  1. 1しっかりと維持管理を行う(ほったらかしにしない)
    空き家を管理せずに放置しておくと、いずれ「ゴミ屋敷」「お化け屋敷」のようになってしまいます。これらの空き家は衛生、美観、防犯、防災など、さまざまな面で近隣にも迷惑をかけます。
    さらに市町村から「特定空家」「管理不全空家」に指定されると、さまざまなペナルティを受けます。空き家を「保有すること=管理すること」という意識が必要です。
  2. 2維持管理のコストを下げる
    空き家には、さまざまなコストがかかりますが、工夫によってコストを削減することも可能です。
    たとえば、住んでいるときは50アンペアだった電気の契約を、空き家では電気をほとんど使わなくなるため10アンペアに契約を切り替えると、年間の電気料金が約1.5万円も安くなります。水道も解約して、実家の管理に行くときだけ一時使用の申請をすれば、水道代が安くなるケースもあります。
    このように空き家にかかるコストを見直して、下げる工夫をすることも大切です。
  3. 3気持ちの整理をする
    空き家の「保有」は最終形ではありません。活用や売却など、次のステップのための準備期間、気持ちの整理をすることが重要です。

3.活用する

「活用」とは、ひとことで言うと、空き家を貸して賃貸収入を得ることです。

3-1.「活用」のメリット

「活用」には次のようなメリットがあります。

  1. 1キャッシュフローの確保
    空き家を貸すことにより、賃貸収入が得られます。これらは、生活にゆとりをもたせ、子どもの教育費に充てたり、老後の「自分年金」として備えるなど、経済的に役立ちます。
  2. 2経済的負担の軽減
    空き家を所有していると維持管理費がかかります。これらは、空き家の所有者が、自分の給料や貯蓄の中から支払わなければなりません。しかし、貸すことにより、空き家がお金を稼いでくれるため、所有者の負担を大きく軽減できます。
  3. 3不動産の所有継続
    実家は、親にとっても夢のマイホームであったと同時に、引き継いだ人にとっても幼少期から過ごしてきた愛着のある住まいです。そのため、住まないといっても手放すことに対しては抵抗を感じる人も少なくありません。とはいえ、持ち続けることで経済的・精神的な負担も増えます。貸すことによって、これらの負担の軽減と所有継続という2つの希望を叶えることができます。
  4. 4適切な管理
    建物は人が住まなくなると傷みも急速に進みますが、「貸す」ことによって借りる人が建物の管理もしてくれるため、建物の老朽化を遅らせることができます。

3-2.「活用」のデメリット・リスク

  1. 1空室リスク
    お金をかけてリフォームや建替えをしても、入居者が決まらなければ投下した資金が回収できません。
  2. 2金利上昇リスク
    ローンを利用してリフォームや建替えをした場合、ローン金利が上昇すると毎月の返済額が増加し、収支を圧迫する可能性があります。
  3. 3修繕リスク
    空き家はもともと古い建物が多いため、傷みや故障も発生しやすいです。大きな修繕費や突然の修理代などが負担になることもあります。
  4. 4流動性リスク
    貸している不動産は、売却しようとしてもなかなか売れなったり、価格が大幅に下がったりすることがあります。将来売却する予定がある場合は、貸さないという選択も必要です。

その他にも「家賃下落リスク」「滞納リスク」「入居者同士のトラブル」などがあります。十分な市場調査を行い、リスクとリターンを見極めたうえで、「貸す」という選択をすることが大切です。

3-3.空き家活用の手法

空き家の活用には次のような手法があります。

  1. 1建替えずに貸す:貸家、シェアハウス、レンタルスペース など
  2. 2建替えて貸す:アパート・マンション、貸店舗、貸しビル など
  3. 3更地にして貸す:駐車場(月極、コインパーキング)、貸コンテナ、貸地 など

まずは、空き家の場所(立地)、広さ、利便性、環境などから、どの活用方法が適しているかを判断することが重要です。
市場調査については、不動産会社、建築会社などに相談すると良いでしょう。

4.処分する

空き家を保有も活用もせず、手放したい場合、売却、贈与などの方法があります。
この内、売却については、スムーズに行うためのポイントがいくつかあります。

  1. 1不動産の問題点を解決しておく

不動産を売却したくても、次のような問題があるとなかなか売れません。また売却できたとしても安く買いたたかれることがあります。

  • 隣との境界が決まっていない、境界で揉めている
  • 敷地が道路に2メートル以上接していない
  • 名義が亡くなった人のままになっている
  • 道路が狭い
  • 違反建築
  • 旧耐震基準の建物

このような問題がある場合には、早期に解決して不動産を売れる状態にしておく必要があります。

  1. 2価格を把握しておく

あらかじめ、売却価格の目安を知っておくことも大切です。目安が分かれば、相続後に空き家の売却をするかどうかの判断がしやすくなります。価格を調べるためには、不動産会社に知合いがいれば聞いてみるのも一つの方法です。また、不動産サイト、国土交通省が運営する「不動産情報ライブラリ」などで調べる方法もあります。

  1. 3不動産会社と媒介契約の種類を選ぶ

空き家を不動産会社に依頼をして売却する場合、不動産会社と媒介契約を締結します。媒介契約には3つの種類があります。

■媒介契約の種類と特徴

  一般媒介契約 専任媒介契約 専属専任媒介契約
複数の業者への依頼 できる できない できない
自己発見取引 できる できる できない
契約期間 自由 3カ月を上限(3カ月を超えた契約は3カ月に)
依頼者への報告義務 なし 2週間に1回以上 1週間に1回以上
指定流通機構への物件情報の登録義務 なし あり あり

表の通り、一般媒介契約は複数の不動産会社に売却を依頼することができますが、専任媒介契約と専属選任媒介契約は1社のみに依頼をします。
なお、「自己発見取引」とは売主が直接買主を見つけることです。この場合、専任媒介契約では不動産会社を通さずに直接売買することができますが、専属選任媒介契約では必ず不動産会社を通さなければいけません。
一般的には、1社のみに依頼したほうが、依頼された不動産会社も確実に報酬を得られるため、一生懸命に販売活動をしてくれます。
大手不動産会社に依頼するか地元の不動産会社に依頼するかは地域性にもよるため、不動産会社の担当者とよく話し合って選択をしてください。

次回(最終回)は、空き家問題に対する、国や自治体の対策や民間のサービスを紹介します。

橋本 秋人(はしもと・あきと)
FPオフィスノーサイド代表
ファイナンシャル・プランナー(CFP®認定者、1級FP技能士)、終活アドバイザー、金融経済教育推進機構(J-FLEC)認定アドバイザー
NPO法人ら・し・さ(終活アドバイザー協会)副理事長、日本FP協会評議員、東京電子専門学校非常勤理事
東京都出身。大手住宅メーカーで30年以上、顧客の相続対策支援、不動産活用、分譲地開発などに携わる。独立後は、終活、相続、住宅、不動産投資を中心にセミナー、コンサルティング、相談、執筆などを行っている。
執筆「知って安心!不動産の相続2024年版(講談社・共著)」など

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