FPによる知って得する!くらしとお金の話

第1回

FP知識の活かし方① 高額療養費

コープ共済について

2025年5月

みなさんこんにちは。ファイナンシャル・プランナー(CFP®認定者)の金田浩一です。FP専門校のFPK研修センターに勤務しています。FP教育に携わって20年以上の月日が流れました。FP知識の活かし方について日頃感じていることをお伝えしようと思います。

ファイナンシャル・プランナー(AFP)の資格を取得するためには、科目でいうと6科目8分野を勉強することになります。それぞれの科目、分野ごとに細部にわたる内容までしっかり勉強します。
受講生の大半は金融機関にお勤めの方々なのですが、それ以外でもリタイア前後の年配の方々や家計の見直しに興味のある主婦の方々が特に熱心に学習され資格を取得されている印象があります。

残念なことですが、資格を取得した受講生からは得た知識を上手く使えていないという声を時々耳にします。なぜそうなるのかと考えてみると、各科目間の知識の連携が上手くいっていないように感じます。実生活で起きた出来事に対して、FPの知識を上手く活かして対応することによって、役立つということが実感できるのではないでしょうか。

実生活に関連させていくという例として、家族の誰かが入院した場合を考えてみましょう。高額の医療費がかかることが懸念されますが、それに対応する制度として、みなさんもよくご存じの最近話題となった高額療養費があります。今回は高額療養費に関連した知識のポイントを整理してみましょう。

高額療養費

高額療養費は、長期の療養や入院などによる医療費の負担増大を助成するために設けられたもので、被保険者や被扶養者が同じ月(1日から末日まで)に、同一の医療機関(医科・歯科別、入院・通院別)で同一の診療を受け、窓口での自己負担額が所定の金額を超えたときに、請求によって超えた部分が払い戻される制度です。
自己負担の上限額は、被保険者の年齢と標準報酬月額に応じて定められています。また、同一世帯で同じ月に21,000円以上窓口負担をした人が2人以上いる場合は世帯合算されます。さらに、同一世帯で直近の12ヵ月に4回以上高額療養費が支給される場合は、4回目からの自己負担額が軽減されます。

70歳未満の被保険者(被扶養者も同じ)の自己負担限度額

標準報酬月額に応じて、次の5段階に区分されます。

標準報酬月額 自己負担限度額(1ヵ月あたり) 4回目から
83万円以上 252,600円+(総医療費-842,000円)×1% 140,100円
53万円以上79万円以下 167,400円+(総医療費-558,000円)×1% 93,000円
28万円以上50万円以下 80,100円+(総医療費-267,000円)×1% 44,400円
26万円以下 57,600円 44,400円
低所得者(住民税非課税) 35,400円 24,600円

標準報酬月額28万円以上50万円以下に該当する人の高額療養費の計算例

総医療費が100万円の場合 → 窓口負担額は3割の30万円
 自己負担限度額=80,100円+(1,000,000円-267,000円)×1%=87,430円
 高額療養費=300,000円-87,430円=212,570円

ポイント1 窓口負担を自己負担限度額までにする手続き

高額療養費は本来、窓口で一旦支払った金額が自己負担限度額を超えた場合、後日請求することによって払い戻される制度です。
ですが医療機関の入院や外来に係る窓口負担額を上記の自己負担限度額までにとどめることができる方法があります。それは健康保険の「限度額適用認定証」を医療機関の窓口に提示する方法です。
手続きとしては、事前に全国健康保険協会の各支部(健保組合は各組合)へ申請書を提出して「限度額適用認定証」の交付を受け、医療機関の窓口に提示すれば、窓口負担額を自己負担限度額までにとどめることができます。
近頃では、入院すると手続きの一環として医療機関から「限度額適用認定証」の提示を求められるのが一般的です。
さらにマイナ保険証(健康保険証利用登録を行ったマイナンバーカード)を利用すれば、医療機関等の窓口で「限度額情報の表示」に同意するだけで、窓口負担額の自己負担限度額までにとどめることができます。
上記の計算例において、窓口に限度額適用認定証を提示した場合、窓口での支払額は30万円から高額療養費相当額212,570円を差し引いた87,430円にとどめることができます。

ポイント2 実際の窓口負担

高額療養費の対象となるのは健康保険扱いにおける自己負担分であり、入院時の食事代や諸雑費、差額ベッド代、先進医療の技術料などは対象となりません。
上記の計算例によると、いわゆる自己負担限度額は約9万円弱となります。ただし、入院した場合、この自己負担限度額に加えて、入院時の食事代や病衣のレンタル代、諸雑費などが必要になります。高額療養費の自己負担限度額だけで医療機関への支払いが賄えるわけではありません。

ポイント3 入院給付金請求

生命保険の医療特約や医療保険、医療共済などに加入していると入院給付金を受け取ることができます。入院給付金を受け取る権利のある人が保険会社に請求しないと給付金は支給されません。退院後請求することになりますが、請求の際には、入院の事実を証明する診断書の提出が必要になります。医療機関に診断書を作成してもらうのに時間がかかるケースがありますので、注意が必要です。

ポイント4 医療費控除は確定申告が必要

ライフプラン的には起こって欲しくないことですが、高額療養費の対象となるのは、実際のところ家族の誰かが入院した場合などです。そうすると医療機関に多額の医療費を支払うこととなり、所得税・住民税において医療費控除の対象になる可能性が高くなります。

医療費控除

納税者本人または納税者と生計を一にする親族のために医療費を支払った場合、確定申告を行うことによって一定の金額を医療費控除として、総所得金額から控除することができます。

医療費控除は所得控除ですので、医療費控除の額が全額還付されるわけではありません。
「医療費控除の額×適用税率」分が税額から差し引かれることとなります。医療費控除は年末調整で受けることができず確定申告が必要になります。確定申告は入院した年の翌年の手続きとなるので忘れないようにしましょう。

これらの手続きの知識を整理していれば、家族の誰かが入院した場合でも、落ち着いて対応できるのではないでしょうか。社会保険や生命保険、税金など分野をまたいだFPの知識を活かして少しでも実生活での不安をとりのぞきましょう。

金田 浩一(かねだ・こういち)
ファイナンシャル・プランナー(CFP®認定者、1級FP技能士)。大阪府出身。
大阪教育大学卒業後塾講師を経て、2003年にFP専門校FPK研修センター(株)に入社。大阪事業部にて、主にファイナンシャル・プランナーの養成講座および継続研修等の企画運営・講師やFPテキスト・問題集等のFP教材の編集・執筆など、20年以上FP教育に携わっている。受講生の合格をサポートすべく日々業務にあたっている。

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