2025年6月
「貯蓄をしたいのに、どの支出を見直したらいいのかわからない」という思いや、ご夫婦なら「お金の話をすると相手の機嫌が悪くなる」、「お金の使いかたが理解できない」などの経験をしたことはありませんか?
その解決策の入り口となるのが『幸せ温度計』ワークです。
夫婦でお金の話をするとケンカになるのはなぜ?
「お金のことを話し合いしたいのに、うまく話し合えない」というご夫婦は少なくありません。いろんな理由があると思いますが、延べ7,000件超の相談を受けてきた経験から想像すると、共通しているのは自己防衛、つまり「守り」の気持ちのように思います。
例えば……
- 収入や貯蓄を伝えると、少ないと思われるんじゃないか。
➡そう思われるくらいなら、必要最低限のことだけ伝えておくようにしよう。 - 収入や貯蓄を伝えると、気が大きくなって財布のひもが緩むんじゃないか。
➡無駄遣いされるくらいなら、今すぐお金に困ってないから黙っておこう。 - いくらお金を使っているか、知られたくない。
➡使い道を知られて口出しされるくらいなら、最初から言わないほうがマシだ。
などなど……
もしもパートナーが上記のような気持ちを感じていたとすると、真正面から切り込めば、たとえ正論だったとしても防衛本能が働いて、一層かたくなになってしまいます。
そこで、お互いがフラットな立場で向き合える、『幸せ温度計』ワークに挑戦してみませんか?
『幸せ温度計』ワークをやってみよう
『幸せ温度計』ワークをやってみてほしいのは、こんな人です。
- ついついお金を使ってしまって、何から見直しをしたらいいのかわからない人
- お金のことを話すとケンカになってしまうご夫婦
- 険悪な雰囲気になりたくないから、夫婦でお金の話は避けている人
こんな経験をされていらっしゃる方に向けて考案したのが、お金に対する価値観や優先順位を見える化した『幸せ温度計』ワークです。
やり方は簡単! 家にある道具でできるんです。
【準備物】
- 付箋(1人分で約15枚。夫婦なら約30枚)
- 筆記用具
- A4サイズの用紙(1人1枚。夫婦なら2枚)

【やり方】
- 1付箋1枚につき、家計の支出1項目を書き出す
<項目の例>
食費(家計に応じて食費と外食費などに分けてもOK)、日用品、家族のレジャー費、おこづかい(洋服代、美容費、趣味などに分けてもOK)、水道光熱費、通信費、交通費、住居費、教育費、健康医療費、保険料、ペット、交際費、旅行代、自動車費用など
※項目は、家計に応じて適宜調整してください。 - 2紙に「大事にしたい支出」順に、上から下に付箋を並べたら完成
『幸せ温度計』ワークで大事なことは、「大事にしたい支出」順に付箋を並べること。
並べ替えに迷い始めると、「住居費は高いから上のほうに並べよう」と金額の多い少ないで並べ替えを始めたり、「食事は生きていくうえで必要だから、食費は上の方に並べよう」と、必要かどうかで並び替えたりする人がいらっしゃいます。
でも、『幸せ温度計』ワークは文字通り、「自分が幸せを感じることができること」を改めて考えるワークです。
順番に迷ったときこそ、「この支出は減らしたくない!」とか「この支出があるから私は頑張れる!」というように、あなたが幸せを感じることができる支出に向き合ってみてくださいね。
そして、夫婦でワークをするときのコツは、それぞれが並べ替えた後に「せ~の!」で見せ合うこと。
お互いに見える状態で並べ替えるよりも、それぞれに並べ替えた後で見せ合う方がゲーム感が増して楽しめます。ご夫婦で取り組んでみてくださいね。
「違う」ことがわかるからこそ、「あきらめられる」
『幸せ温度計』を頭で考えると、単純なワークのように思うでしょう。でも、実際に手を動かすと、「こっちが上かな?いや、そこまで高くないかも…」と自分の過去を振り返りながら考えたり、一旦並べた順位でも「やっぱりこっちかな…」と何度も並べ替えたりして、意外と時間をかけて皆さん真剣に並べ替えます。
『幸せ温度計』ワークをすると、自分の優先順位が付箋で「見える化」できますし、ご夫婦なら、相手の優先順位も「見える化」できるから、それが「違う」という気づきにもつながるのです。

普段は意識しないお金を使う思いや優先順位を見える化するからこそ、「実はこんなふうに考えてたんだ」という気づきや、「だから話が合わないんだ」ということが冷静に受け止められるようになります。
ワークの結果を見ながら「普段仕事が忙しいからこそ、家族で出かけるときには少々高くても満足いくレジャーをしたい」や、「家族が健康で仲良くいるためには少々高くても体に良い食材を買いたいから食費は高くても減らしたくない」など、それぞれの支出にかける想いを伝え合ってみてくださいね。
なお、異なる優先順位を無理やり自分と同じにしようとすると、どちらにもストレスが発生します。それならば「優先順位が違うから仕方ない。それ以外のところから向きあおう」と、いい意味で「あきらめ」て、前向きに気持ちを切り替えたほうがストレスは減りますよ。
家計改善に活かすには?
家計改善をする際は、優先順位が下の項目から見直します。夫婦で下の方に並んでいる項目が大きく異なる場合は、中心あたりにある項目の見直し策から話し合ってみましょう。
このやり方なら、見える化した後での見直しですから、家計改善のメリハリもつきますし、ご夫婦なら二人共通の目的ができます。家計を見直して浮いたお金は、優先順位が上位となった項目を充実させるための支出や貯蓄になりますよ。
最後に。3回シリーズを最後まで読んでくださり、ありがとうございました。 お金の使いかたを考えることは、人生と向き合うことにつながります。あなたの未来が、安心して楽しくお金が使う毎日であることを心から願っています。

- 前野 彩(まえの・あや)
- (CFP®)認定者、1級ファイナンシャルプランニング技能士、MBTI認定ユーザー。
https://www.fp-will.jp/
中学校・高校の養護教諭(保健室)から、自らの住宅ローンの失敗や加入保険会社の破綻を経て、2001年FPに転身。2008年にFPオフィスwillとして独立、2014年に株式会社Crasを設立。
保険や投資信託などの金融商品を一切扱わない独立系女性FPとして、個人相談を中心に活動。関西(大阪)を拠点とした対面相談はもちろんのこと、オンライン相談にも対応し、累計相談件数は7,000件を超える。学校や社会で習っていないお金のことを、「楽しく」「わかりやすく」「行動したくなる」気持ちと共に伝える講演はリピート率が高く、テレビやラジオ等のメディア出演も多数。近著は「教育費の不安にこたえる本」「本気で家計を変えたいあなたへ<第6版>~書き込む“お金のワークブック”~」(日経BP社)など、20冊を超える。
