2025年10月
高校生になると、将来の夢や目標を持つことを重視し、理想の進路へ向かって学習に取り組みます。その過程で自我に目覚め、個性を伸ばし、人格形成される大切な時期でもあります。まさしく、大人への扉を開けて広い世界に羽ばたいていくのが高校生です。
2022年4月に成年年齢の引き下げを定めた改正民法が施行され、高校三年生で18歳を迎える生徒が成年となります。大人の扉を開ける日が高校生に対して法律により定められました。
そもそも、成年と未成年は、どのような違いがあるのか知っておくことが必要です。成年は18歳以上、未成年は18歳未満と定義され、法律上、出来ることと出来ないことがあります。
成年は、契約を結ぶ際に保護者の同意は必要ありません。父母の親権に服することがなくなる年齢であり、携帯電話の契約やクレジットカードの作成、部屋の賃貸契約、そして、ローンの契約も含まれます。
未成年は、原則として保護者の同意なしに契約を結ぶことができず、保護者の同意なしに結んだ契約は、「未成年者取消権」により取り消すことができます。小遣いの範囲で買い物をするといった場合以外は、父母の同意を得ずに契約をすることができないということです。
その他、成年は、男女とも18歳で結婚が可能となり、性同一性障害の性別の変更審判を受けることができます。司法書士や公認会計士などの国家資格の取得や10年有効のパスポートの取得なども可能となります。
ただし、20歳未満は、飲酒、喫煙、競馬・競輪・オートレース・競艇などの公営競技の投票券の購入は禁止されています。
未成年者は、保護者の親権に服さなければなりません。具体的には、保護者が、財産管理、教育、監護などの権限と義務を持ちます。
成人年齢引き下げに伴う高校生はどのようなことを学ぶことが必要でしょうか。
契約が自由にできるようになるため消費者トラブルに巻き込まれやすくなります。成人になってすぐは、契約に関する知識も乏しく、内容を理解しないまま安易に契約してしまうことがあります。
そもそも「契約」とは、「買いたい人」と「売りたい人」の当事者双方の意思表示が合致することにより成立します。「誰と」「何を」「どのように」を「契約自由の原則」によって当事者間で決めることができます。
契約する時に気を付けないといけないこととは、
- 1契約の内容が目的や条件に合っているか、よく考える。
- 2相手に結びたい契約の内容をきちんと伝える。
- 3相手が結びたい契約の内容をしっかり聞いて確認する。
- 4納得できない内容の契約は結ばない。
なお、通信販売の場合は、対面で契約をしないので内容をしっかり確認することなく安易に契約してしまうことが多いので、事前に販売サイトが怪しくないか口コミなどでチェックするとともに、返品・解約の条件をしっかり確認しておくことが必要です。
契約が成立すると当事者同士に権利と義務が生じるのでお互いに大きな責任を負うことになります。
契約は契約書がなくても成立します。原則、口頭での約束でも契約は成立するのです。契約書は契約内容を明確に記録しておくものなので、言った言わないでトラブルにならないためにも契約書を作成して保管しておきましょう。
クーリングオフを知ってますか?
契約の申込みや締結をした場合であっても一定の期間内であれば、無条件で契約の申込みの撤回や解除ができる制度です。
契約がいったん成立した場合、解約するには正当な理由がない限り一方的にはできません。キャッチセールスや訪問販売などの不意打ち的な特定の取引については、消費者自身が曖昧な状態やよく理解していないで契約してトラブルになることが少なくありません。
そんな際に消費者自身が冷静に考える時間を与えるために定められた制度です。
取引の種類 | クーリングオフ期間 |
---|---|
訪問販売(キャッチセールス、アポイントメントセールスなどを含む) | 8日 |
電話勧誘販売 | 8日 |
連鎖販売取引(いわゆるマルチ取引) | 20日 |
特定継続的役務提供契約 (エステティック・美容医療・家庭教師・学習塾・パソコン教室・結婚紹介サービス) ※上記のうち、契約金額が5万円を超え、かつ契約期間が2ヶ月(エステティック・美容医療は1か月)を超える契約が対象 |
8日 |
業務提供誘引販売取引(いわゆる内職商法、モニター商法など) | 20日 |
訪問購入(訪問買い取り) ※自動車、大型家電、家具、本、有価証券、CD・DVD・ゲームソフト類等は除く |
8日 |
その他、法律や約款などでクーリングオフの定めがある代表的な取引とクーリングオフ期間は以下のとおりです。
- 生命保険契約、損害保険契約<8日間>・・・保険業法
- 宅地建物の取引<8日間>・・・宅地建物取引業法
- 投資顧問契約<10日間>・・・金融商品取引法
クーリングオフができないケースは?
- 店舗販売、通信販売、総額3000円未満の現金取引
- 消耗品として指定された商品の全部または一部を消費したとき
※ただし、受け取った書面に「使用するとクーリングオフできなくなる」という記載がなければクーリングオフ可能 - 自動車や葬儀など、政令で定められた商品・役務
困ったときは、一人で悩まずに、「消費者ホットライン」188に相談ください。 地方公共団体が設置している身近な消費生活センターや消費生活相談窓口を案内してくれます。
このように成年になる高校生に対して契約にともなうトラブルなどを回避するための知識をしっかり学んでおくことが重要です。
学校で教えてくれると安易に考えず、同じ成年でもある両親や祖父母も一緒に家庭内で話し合う機会を持ちましょう。

- いちのせかつみ(いちのせ・かつみ)
- 1959年 大阪府生まれ。大阪府東大阪市在住。
生活経済ジャーナリストとしてテレビ・ラジオのコメンテーター、執筆活動など多方面で活躍中。
家計から見た人生設計など親しみのある大阪弁での肩のこらないセミナーが好評。
お笑い系ファイナンシャル・プランナー 芸名:ゆかい亭マネー