FPによる知って得する!くらしとお金の話

第1回

実家じまい~知っておきたい4つのこと
相続登記、家財の整理・処分、境界確定、
解体の概要と進め方

コープ共済について

2026年5月

「誰も住まなくなった」「維持管理が負担になってきた」。そのような事情から、実家じまいを考える方は少なくありません。ただ、売ると決めても、何から手をつければよいのかわからず、一歩を踏み出せないこともあるようです。

本コラムでは、実家じまいにあたってあらかじめ知っておきたい「相続登記」「家財の整理・処分」「境界確定」「解体」の4つを取り上げ、それぞれがどのような内容で、どの段階で必要になるのかを整理します。

相続登記~「誰が引き継ぐのか」を決めたら早めに動く

実家じまいでは、まず、その家を「誰が引き継ぐのか」を決める必要があります。話し合いの結果、ひとりで相続することもあれば、いったん複数人で共有したうえで売却し、代金を分けるケースも見られます。

方針が決まったら、相続登記の準備に取り掛かるようにしましょう。亡くなった人の名義のままでは、その後の売却手続きに支障が出ます。もっとも、必要書類が揃うなどで登記申請の見通しが立っていれば、売り出しを始めることはあります。ただし、契約までには登記を終えるように段取ります。

なお、司法書士に依頼する場合は、早めに見積もりを取り、必要書類や完了までのおおよその期間を確認しておくと安心です。

家財の整理・処分~残すものを確かめ、家の中を片付ける

家財の整理・処分は、まず、残すものと処分するものを分けることから始めます。現金や貴金属などの貴重品、写真などの思い出の品、重要書類といった必要なものは、売り出しの前に持ち帰っておきます。売り出しが始まると、内見などで人が家に出入りするようになるためです。

こうした確認は、できるだけ人任せにせず、自ら進めたいものです。兄弟姉妹がいる場合は、「何を残し、それをどのように分けるか」「処分するものはどれか」を話し合いながら進めると、後で行き違いが起こりにくくなります。

その後に取り掛かりたいのが、家の中に残った家財、いわゆる残置物の処分です。「自分たちでできる」と思っても、荷物の量が多いほど時間がかかります。大型の家具や家電があると、思うように進まないことも少なくありません。自力で片付けるのが難しいようなら、早めに専門業者の利用を検討しましょう。

処分を専門業者に依頼する場合は、相見積もりを取ることをおすすめします。同じ条件でも金額に差が出ますし、説明が丁寧か、安心して任せられそうかも確認しておきたい点です。

売主側で建物を解体する場合は、その前に残置物の処分を終えておかなければなりません。解体せずに引き渡す場合でも、引き渡しまでに家の中を整理し、残置物をなくしておくのが基本です。

境界確定~時間がかかりやすく売主だけでは進められない

土地や戸建ての売却では、境界確定を求められることが少なくありません。土地家屋調査士に依頼し、隣地所有者に立ち会ってもらいながら進めるため、売主の事情だけでは進めにくい作業です。

たとえば、隣地所有者との立ち会いの日程がなかなか決まらないこともあれば、境界の位置やブロック塀の所有をめぐって認識の違いが出ることもあります。話がこじれれば、そのぶん調整は長引きます。完了までの目安は3ヵ月程度ですが、状況によってはさらに時間がかかります。

境界確定は、売却代金の決済までに余裕をもって終えられるよう、早めに段取りを整えておく必要があります。近隣とのトラブルがあるなど、不安材料があるときは、境界確定を終えてから売り出すほうが安心なこともあるでしょう。過去の測量図や立ち会い資料、境界付近や塀が写った古い写真などがあれば、境界確定を進めるうえで役立ちます。

解体~費用だけでなく、想定外の追加負担にも備える

建物が古く、解体の可能性があるなら、あらかじめ見積もりを取っておきます。売主と買主のどちらが解体を行うにしても、その費用は売却価格の判断材料になるからです。

解体費用は、建物の大きさや立地、庭木、塀の有無などによって変わりますが、依頼する業者によっても差が出ます。併せて、業者を選ぶときは、近隣への説明や現場での対応まで確認しておきたいところです。相見積もりを取ると、費用に加えて説明の丁寧さも比べやすくなります。

また、売主側で解体を行う場合は、売却代金の決済までに解体を終えたうえで、建物滅失登記まで済ませるのが一般的です。建物滅失登記とは、建物がなくなったことを登記記録に反映させる手続きにあたります。

解体は見積もりどおりに終わるとは限らず、思わぬ負担が生じることもあります。地中からコンクリート片などの建築廃材(ガラ)が見つかり、想定外の費用がかかることもあります。予備費を見込み、日程にも余裕を持たせておきたいものです。

まとめ

実家じまいで必要になる手続きは、物件によっても異なります。必要な作業を洗い出すためにも、早い段階から不動産会社に相談すると、無理や無駄のない見通しを立てやすくなるでしょう。

あわせて意識したいのが、それぞれにかかる費用が発生するタイミングです。不動産の売却でお金が入るのは、契約時(手付金)と、決済時(残代金)の2回です。一方で、登記や片付け、境界確定、解体などの費用は、契約前から決済前後にかけて順次かかってきます。いつどの程度の費用が必要になるかを前もって見通しておくことも、実家じまいを円滑に進めるうえで大切です。

久谷 真理子(くたに・まりこ)
(株)フリーダムリンク専務取締役
1級ファイナンシャル・プランニング技能士、日本FP協会CFP®認定者、公認不動産コンサルティングマスター
都市銀行において融資業務に従事。FPとして独立後、相続・不動産に関する相談業務および、実行支援業務を行っている。
NPO法人日本FP協会評議員。

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