FPによる知って得する!くらしとお金の話

第2回

親が元気なうちに介護を考えよう  ハッピー終活

コープ共済について

2019年2月

日本では高齢化が進み、亡くなる人が増えています。ご両親の体調が気になる人もいるのではないでしょうか。あまり考えたくないことですが、もしも親が病気になった、あるいは亡くなったとき、本人の意思や希望に沿った形で、治療や遺産の整理を進めたいですよね。

そこで確認しておきたいのは「介護」のことです。
もちろん、一生介護が必要にならない可能性もありますが、高齢になると、介護や医療を必要とする可能性が高くなります。
原則、介護の費用は、親自身の年金や資産の範囲内で賄いましょう。冷たいと思われるかもしれませんが、子どもが親の介護費用を負担すると、自身の老後に支障をきたすかもしれません。

介護にかかる費用は、全額が自己負担ではありません。介護保険内のサービスであれば、自己負担は1割~3割(所得によって異なります)。その自己負担額にも、1ヶ月毎に上限が設けられています。

介護保険 自己負担額の上限(月額)

医療と介護を同時に受けた場合は、それぞれの費用を合算し、一定額を超えると超過分が還付される「高額介護合算療養費制度」が利用できます。

0歳以上の高額介護合算療養費制度の年間上限額(2018年8月~2019年7月)

仮に、収入が年金だけであれば、ほとんどの世帯は「住民税非課税」「一般の世帯」「年収370~770万円」のいずれかに該当します。
よって、健康保険・介護保険が適用されるサービスであれば、医療費と介護費を合わせて、自己負担額は最大67万円/年と考えて良いでしょう(2019年現在)。

問題は、保険適用外の費用です。保険適用外の費用には、入院した際の差額ベッド代や食事代、民間の介護施設に入所する費用などがあります。有料老人ホームなど、民間の施設に入所する場合は、家賃や利用料に加えて、入居の際に一時金としてある程度のまとまったお金が必要になります。こうした費用は、施設によって大きく異なります。

そこで、「もし介護を受けるならどういった介護を受けたいか」「どれくらい資産があるか」を、親や兄弟、姉妹など、家族で共有しておくことをおすすめします。
資産の把握というと、抵抗を感じる人もいるかもしれませんが、親が病気になったり、認知症が進んだりすると、どの銀行にお金を預けてあるのか、保険には加入しているのか…など、分からなくなるかもしれません。
一案として、現金、預貯金、株式などの金融資産を、銀行名・口座番号などを記載して一覧表にまとめておくと良いでしょう。具体的な金額は記載しなくてもかまいません。

一覧表の例

コープ共済連作成 エンディングノート 預貯金・その他金融商品

保険についても、情報を共有しておきましょう。死亡したときに保険金が支払われる「生命保険」、入院したときや手術を受けたときに保険金が受け取れる「医療保険」「がん保険」などがありますが、いずれも、こちらから保険会社に請求をしなければ、保険金は受け取れません。請求漏れがないように、確認しておきましょう。

一覧表の例

コープ共済連作成 エンディングノート 生命保険・共済 損害保険・共済

こうした情報をもとに、どういった介護が可能か検討して下さい。とはいえ、元気なうちに、介護のことは考えづらいかと思います。まずは、ざっくりと親の資産や収入を知り、介護が必要になりそうな時は「地域包括支援センター」に相談して下さい。地域包括支援センターは、介護の相談やケアマネジメントなどを行う、介護保険の総合的な窓口です。介護保険の申請もここで行います。

最寄りの地域包括支援センターは
厚生労働省 介護サービス情報公表システム」で検索して下さい。

井戸 美枝
CFP®、社会保険労務士。講演や執筆、テレビ、ラジオ出演などを通じ、生活に身近な経済問題をはじめ、年金・社会保障問題を専門とする。社会保障審議会企業年金・個人年金部会委員。確定拠出年金の運用に関する専門委員会委員。経済エッセイストとして活動。「難しいことでもわかりやすく」をモットーに数々の雑誌や新聞に連載を持つ。近著に『身近な人が元気なうちに話しておきたいお金のこと介護のこと』(東洋経済新報社)『100歳までお金に苦労しない定年夫婦になる』(集英社)『届け出だけでもらえるお金』(プレジデント社)『iDeCoとつみたてNISAにダブル投資入門』共著(扶桑社)などがある。著書多数。

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