2020年5月
共働きなのにお金が貯まらないのは「内緒」と「不干渉」が原因
共働き夫婦は、収入の担い手がひとりの片働き夫婦に比べ「お金が貯まりやすい」と思われています。しかし、実際には「ちゃんと貯められている共働き」は意外に少ないのが現状です。
ファイナンシャルプランナーとして20年以上、個人相談を受けてきましたが、あるとき10年前の片働き夫婦より、今の30~40代カップルのほうが貯められていないことに気がつきました。「共働きなのに貯まらない」要因は、おおむね次の3つに集約されます。
- (1)夫婦それぞれが毎月いくら貯めるといった貯蓄の目標がない
- (2)生活にかかるお金を分担した残りのお金は、それぞれ自由に使える
- (3)自分のお金の使い道を相手に干渉されたくないから、夫婦でお金の話をしない
特に(3)の「内緒」と「不干渉」の問題は根深いです。結婚生活をスタートするときお互いの貯蓄額を言わない、年収もオープンにしていないカップルが本当に増えています。
なぜ、結婚したのにお金の話をちゃんとしないのかと尋ねてみると、オープンにすると独身時代と同じようにお金を使えなくなるからと言います。「言われたくないから、言わない」のだそうです。つまり「干渉されたくないから、内緒にする」わけです。
マイホーム購入の段階ではじめてお互いの貯蓄額をオープンにし、貯まっていない事実にがく然とします。どうやら、自分は貯めていなくても「相手は貯めている」と根拠なく考えているようです。
貯蓄アップには「危機感」が必要
このままではまずいという「危機感」は貯蓄のモチベーションになります。
10年くらい前までは、女性は結婚または出産で退職するケースが多く、片働きが主流でした。妻の収入がなくなると、それまでの支出を見直さないと貯蓄ができないどころか、お金が足りなくなります。そこで危機感を持って“やりくりモード”にスイッチが入ります。
ところが今は、共働きが主流。30代で結婚する人も多いので、2人ともそこそこの収入があり、お金を使う楽しさも知っています。生活費さえ分担すれば、あとは何に使ってもいいはず、だって共働きなんだから、と言います。お互い我慢せずにお金を使っても、足りなくなることはありませんから、危機感を持つことなくいつまでも“独身モード”のまま。
そんな共働き夫婦が「このままではまずい」と感じ始めるのは、住宅購入で貯蓄の少なさに気がついたときか、子どもの誕生で将来の教育費が心配になったときです。
貯めたい、何とかしたい、でもこれまで2人で自由にやってきたのでどこから手をつけていいのかわからない、家計管理と貯め方のアドバイスが欲しいと相談に訪れるカップルが増えたのも最近の傾向です。
「貯める額」だけでも情報開示しよう
やっと危機感を持ったのだから、このチャンスは逃さず、貯まる共働きに変わりたいものです。「お互いの収入」「現在の貯蓄額」「毎月やボーナスからの積立額」の3つについての情報開示するのが理想的ですが、いきなり3つすべてを共有するのは難しいと感じるなら、まずは「毎月やボーナスからの積立額」だけでも、オープンにするといいですね。
日々仕事や子育てで忙しいでしょうから、完璧な家計管理を目指さずに、まずは「貯まる仕組み」作りだけ作りましょうとアドバイスしています。
図(1)は、よくある共働きの家計管理のケースで、この方法だと「貯まらない」傾向にあります。
この方法ですと、2人共通の生活費口座にそれぞれお金を入れて、残った分はお小遣いとして消えてしまうことになります。お互いがいくら貯めているのか、それとも貯めていないのかがわからない仕組みなので、生活費の分担金以外は、まさに「内緒と不干渉」になりがちです。
または、共通の生活費口座に「夫婦の貯蓄額」を上乗せして入金しているケースもよく見かけます。ですが、これもNG。「夫婦の貯蓄」はないものだと認識してください。税務上は、「その口座名義人のお金」とされるので、マイホーム購入時などにやっかいなことになります。「自分で稼いだお金は自分の名義の口座で貯める」と覚えておいてくださいね。
まず積み立て、次に生活費の分担、残りがお小遣い、貯めたいならこの順番で
では、「貯まる仕組みの口座管理」は、どのようなものでしょう。サンプルは、下の図(2)です。
お給料が出たら、使う前にまず積み立てで貯めます。勤務先の財形貯蓄でもいいですし、給与振込口座のある銀行で自動積立預金を利用するのでもOKです。生活費は分担制として話し合って金額を決めます。残りがそれぞれのお小遣い。この方法だと、「積立額」「生活費の分担」「お小遣いの額」がオープンになります。
共通の生活費口座があったほうがラクと思うなら、共通口座で「夫婦のお金」を貯めなければOKです。それぞれの名義で積み立てをして、共通口座で生活費を分担、残りはお小遣い、この流れが「貯まる仕組み」の重要ポイントとなります。
毎月の積立額を決める際に大事なことは、無理なく続けられる金額を見つけること。アドバイスする側の欲を言えば、ほんの少しだけ背伸びした金額でがんばって欲しい気持ちもありますが、赤字になってしまっては元も子もありませんから、まずは「無理のない積立額」で始めてください。
あとは、年1回お互いに「ちゃんと貯めている?今年は目標通り貯まった?」と確認し合うこと。この緊張感は貯蓄のモチベーションを高めてくれるはずです。
- 深田 晶恵
- (株)生活設計塾クルー取締役。ファイナンシャル・プランナー(CFP)
1967年、北海道生まれ。8年間勤めた外資系電機メーカーを退職後、1996年にFPに転身。その後、特定の金融商品、保険商品の販売を行わない独立系FP会社、生活設計塾クルーを立ち上げ、個人向けのコンサルティングを行うほか、新聞・雑誌などマスメディアや講演等でマネー情報を発信する。すぐに実行できるアドバイスをするのがモットー。
ダイヤモンドオンラインでマネーコラムを連載中。
おもな著書に『日本一わかりやすいお金の教科書』、『共働き夫婦のためのお金の教科書』(講談社)、『住宅ローンはこうして借りなさい・改訂7版』(ダイヤモンド社)、『30代でそろそろお金を貯めようと思ったら読む本』(PHP文庫)などがある。