FPによる知って得する!くらしとお金の話

第2回

多くのカップルが間違えている?共働き夫婦の正しい保険の入り方

コープ共済について

2020年6月

共働きの妻が「私は女性だから死亡保障は要らない」と考えるのは間違い

今回は、「共働き夫婦の生命保険の入り方」についてお話します。

私がファイナンシャルプランナーになったのは20年以上前ですが、当時は女性が出産後に仕事を続ける社会的環境が整っておらず、共働きカップルはごくわずかでした。その後、育児休業の制度が導入など、社会保険からのバックアップも進み、出産後も働き続ける女性がどんどん増えています。

専業主婦家庭の保障設計は次のようなものでした。

夫:死亡保障は多め+医療保障
専業主婦の妻:死亡保障は、ゼロか少なめ、医療保障

死亡保障の備え方(金額)が夫と妻で違うのは、その人が亡くなった時の経済的リスクが異なるからです。大黒柱の夫に万一のことがあると収入が激減するので、亡くなった時に保険金が出る保険(死亡保障の生命保険)はしっかりと入っておきたいもの。一方、専業主婦の妻は働いていないので、万一のときの経済的リスクは少ないので多額の保障は不要といえます。

では、共働き夫婦の保障設計はどういうものでしょう。二人が働くことで生活が成り立っているわけですから、夫だけでなく、妻も死亡保障を確保すべきです。

ところが、共働き夫婦から相談を受けると、いまだに「夫は男だから死亡保障はたっぷりと、私は女だから死亡保障はなくてもいい、その代わり医療保障を充実させたい」と言う妻が少なくありません。保険に入るときは「男性だから、女性だから」という根拠でプランニングするのではなく、「その人が亡くなると、どの程度経済的損失があるか」を考えましょう。

子育て中の共働き夫婦が死亡保障の保険に入るなら、保険期間が10年などの「掛け捨て型の生命保険(共済)」に入るといいでしょう。死亡保障が必要な期間は、原則として子どもが社会人になるまで。子育て期間の保障を得るためと割り切って掛け捨て保険を利用しましょう。

共働き夫婦はどちらが死亡しても、ローンがゼロになるように保険に入る

次に保険金額ですが、用意すべき死亡保障額は、子どもの人数や残された配偶者の年収などによりさまざまです。会社員のカップルの場合、万一の際は、国からの遺族年金など社会保障もあるので、死亡保障のすべてを民間保険でカバーしなくてもいいことを覚えておいてください。

子育て世代が死亡保障の保険に入る際、死亡保険金額を3000万円という目安として、個別事情で保険金額を増やしたり、減らしたりするといいでしょう。たとえば、夫婦それぞれの年収が同じくらいなら、経済的リスクはほぼ同じなので同額の死亡保障を確保します。

保険金額を決める際に考慮したいのは、住宅ローンです。住宅ローンには団体信用生命保険(団信)がセットされているので、ローンの契約者が死亡すると、ローンの残債分の保険金が支払われるので、返済はなくなります。

共働き夫婦が2人で「ペアローン」を組んだ例で考えてみましょう。夫が2000万円、妻が1000万円の住宅ローンを組んだとします。

夫が死亡すると、夫のローンはゼロになりますが、残された妻は自分のローンの1000万円の返済が続きます。夫の収入がなく、子育てをしながら、自分の分の返済があるのは、結構負担となります。

逆のケースでも同様のことが言えます。妻が亡くなって、妻のローンはゼロになっても、夫自身の2000万円分の返済は残ります。

ローン返済中に夫婦どちらかが死亡すると収入ダウンによる家計運営が心配といったカップルには「自分の生命保険に“配偶者のローン残高分”を上乗せする」ことを提案します。

夫が死亡すると団信で夫のローンはゼロになり、残された妻は夫の生命保険の死亡保険金を使って自分のローンを全額繰上げ返済すると、ローン返済はすべてなくなります。反対に妻の死亡に備えるなら、残された夫は妻の生命保険を使って自分のローンを全額返してしまえばいいのです。

収入が1人分になっても、ローン返済がないと家計運営がラクになります。先の「死亡保険金額の目安は3000万円」に配偶者のローン残高分を上乗せするといいでしょう。

共働きであっても、夫だけが住宅ローンを組むケースもあります。この場合、夫が死亡すると住宅ローンがゼロになり、妻はローン返済の負担はありません。しかし、妻が亡くなると、世帯収入は激減するのに、残された夫のローンは1円も減りません。これでは、妻死亡後の夫の負担は重くなり、気の毒ですね。

夫だけがローンを組んでいるなら、妻は夫のローン残高分、自分の生命保険を上乗せしましょう。「女だから死亡保障の保険は要らない」というのは、本当に間違いであることがわかりますね。

保険期間10年の掛け捨て保険を利用すれば、保障額を上乗せしても大きく保険料は増えないですし、10年経って更新するときには、ローン残高が減った分だけ保険金額を減額すれば保険料アップを避けることができます。

ぜひ、見直しに取り組んでみてください。

深田 晶恵
(株)生活設計塾クルー取締役。ファイナンシャル・プランナー(CFP)
1967年、北海道生まれ。8年間勤めた外資系電機メーカーを退職後、1996年にFPに転身。その後、特定の金融商品、保険商品の販売を行わない独立系FP会社、生活設計塾クルーを立ち上げ、個人向けのコンサルティングを行うほか、新聞・雑誌などマスメディアや講演等でマネー情報を発信する。すぐに実行できるアドバイスをするのがモットー。
ダイヤモンドオンラインでマネーコラムを連載中。
おもな著書に『日本一わかりやすいお金の教科書』、『共働き夫婦のためのお金の教科書』(講談社)、『住宅ローンはこうして借りなさい・改訂7版』(ダイヤモンド社)、『30代でそろそろお金を貯めようと思ったら読む本』(PHP文庫)などがある。

「知って得する!くらしとお金の話」コラム 一覧はこちら

こちらもおすすめ

サイドメニュー