血圧の管理は生活習慣病すべての予防につながる出発点です。ここでは、血圧に関する疑問に分かりやすくお答えします。
(日本コーリン「血圧計屋さんがつくった健康手帳」より抜粋)
「上の血圧」は心臓が収縮したとき、「下の血圧」は心臓が拡張したときの数値です。
2つの血圧の数値
「上の血圧は○○」「下の血圧は○○」という言葉をよく耳にします。
上の血圧というのは、最高血圧のことで正確には収縮期血圧といいます。
これは心臓が収縮し、送り出された血液によって動脈壁が最も膨らんだときの圧力をいいます。
下の血圧というのは、最低血圧のことで、正確には拡張期血圧といいます。
これは心臓が拡張し、動脈壁が元に戻ったときの圧力をいいます。
どちらの値が高くても血管を傷めます。
年齢や遺伝などの因子も含め、総合的に判断します。
血圧の診断は2つの数値で
血圧が「正常なのか高血圧なのか」という診断は、最高血圧・最低血圧の両方の数値を合わせて判断します。
WHO(世界保健機構)の定義を紹介しますので、参考にしてください。(下図参照)
高血圧の基準
上の血圧が140mmHg以上、または下の血圧が90mmHg以上が高血圧です。
正常血圧というのは、上の血圧が130mmHgかつ、下の血圧が85mmHg未満をいいます。
高血圧と正常血圧の間を正常高値といって危険信号の領域です。
数値を目安に総合的判断を
正常血圧、正常高値、高血圧という分け方は、単に数値だけを基準にしたもので、これだけでは一概に将来の危険度は判断できません。
年齢、コレステロール値、喫煙をはじめ、脳や心臓などの合併症の有無も含めて総合的に判断する必要があります。
高血圧を放っておくと、脳・心臓・腎臓に影響を及ぼします。
高血圧が引き起こす障害
高血圧には、程度の軽いものから重いものまでいろいろありますが、危険なのは高血圧がずっと続くことです。
高血圧を放っておくとどうなるのでしょうか。
体に起こるさまざまな障害をみてみましょう。
- (1)脳への影響
高血圧が長い年月続くと、脳の動脈が硬くなり、脳出血や脳梗塞を引き起こします。 - (2)心臓への影響
血圧の流れの圧力が高じてくると、心臓は血圧をどんどん送り出すために肥大化し、心不全の原因となります。
また、狭心症や心筋梗塞も引き起こします。 - (3)腎臓への影響
高血圧が進むと、腎臓に流れる血流に障害が起き、腎不全、尿毒症などへと陥ってしまいます。 - (4)その他
末梢動脈が閉塞を起こしてしまうと、歩いた時に足の痛みが生じます。
ひと言でいえば、血圧に悪いことをしないということです。
高血圧予防のポイント
高血圧を呼び起こす原因は、日常生活のなかに潜んでいます。
もう一度、生活習慣を見直してみてください。
- (1)塩分の摂り過ぎに注意
カロリーを控え、食塩は1日6~8g程度に抑えます。 - (2)適度な運動を
1日30分を毎日、あるいは1日1時間を1日おきに行います。 - (3)アルコール・喫煙は控えめに
禁煙を心がけ、アルコールも1日にビール大ビン1本、水割りならシングルで3杯、日本酒なら1合程度に。 - (4)太りすぎを解消
肥満になると、糖尿病が発生しやすくなるうえ、血圧も上昇しやすくなります。
食事の量と運動のバランスがとれた生活を心がけましょう。 - (5)ストレスに負けない
ストレスは、血圧を上昇させる原因となります。
自分にあったストレス解消法を見つけ、マイペースを取り戻す努力をしましょう。 - (6)規則正しい生活
過労、寝不足、不摂生などは要注意。
脳や心臓に動脈硬化症を合併している場合は、血圧が不安定になります。
血圧は常に変動しています。定期的に測定しましょう。
ちょっとしたことで変動する血圧
血圧値は、かなりデリケートで、1日の中でも起きて活動し始めれば血圧は上がり、夜になると下がります。
さらに、気温や運動、姿勢や睡眠などによっても上下します。
上がり方もいろいろで、血圧の高い人ほど変動が激しいため、たった1回の血圧測定では、本来の自分の血圧値はわかりません。
ちょっとした動作でも、血圧はこんなに上下します
単位:mmHg(東京都老人医療センター調べ)
- 洋式トイレで排便をする…10~30あがる
- 階段を昇り降りする…20~50あがる
- タバコを吸う…21~60あがる
- 会議で発表する…26~126あがる
- 食事をする…0~20さがる
- ゴロ寝をする…4~62さがる
リラックスした状態で1日の一定時刻に測定しましょう。
血圧測定時に注意すること
血圧を測る時に注意することを以下にまとめてあります。
- (1)一定時間に一定の姿勢で測る。
- (2)測るのは食事の前にする。
- (3)できれば1日1~2回測定し、その平均値をとるようにする。
- (4)5~10分くらい前から、心身を落ち着いた状態にする。
- (5)タバコやアルコール(酒類)を飲んだ直後は避ける。
上記の注意を守り、毎日血圧を測り記録していきます。
記録をしていて、異変を感じたら必ずかかりつけ医師に相談しましょう。
家庭血圧はあくまで担当医の診断の参考に活かしてください。
勝手に判断して薬を減らしたり、中断することは禁物です。